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人生観が変わるほどの魅力? 「東京」→「離島暮らし」で気づいたこと

新型コロナの影響でリモートワークが急速に広まり、「ワーケーション」や「地方移住」という選択肢がリアルになってきた、という人も多いはず。

私たちは今、「どのように生きるか?」を改めて考える=「Rethink」する岐路に立たされているのかもしれない。

新しい生活を考えるための手がかりは、移住者が増加している長崎県の離島・五島列島にあった。

東京から遠く離れた離島がなぜ人気を集めているのか? 官民の関係者4人にその魅力を聞いてみた。

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<参加者>
鈴木円香(写真中央):東京在住。3年前より五島市を訪れ、今夏3週間のワーケーションを経験。一般社団法人みつめる旅代表理事。ニュースメディア「ウートピ」編集長。山家正(写真右):6年前より東京を離れ、家族で五島市に移住している。株式会社MONTECASA取締役副社長。山家尚(写真左):東京在住。兄の正の移住をきっかけに、五島で複数の事業を展開。株式会社MONTECASA代表取締役社長。樋口貴彦:五島市役所・地域共通課職員。五島市生まれ。高校卒業後、地元を離れ、広島へ。Uターンして現職。

65年ぶりに人口減少に歯止め

──五島市は、移住地やワーケーションの場として人気が高まっていますね。

樋口:五島は人口減少がかなり進んでいるので、市全体で移住促進をはじめ、雇用の創出や交流人口の拡大誘致、などの対策を進めています。移住相談員を増やしたり、オンライン移住相談を始めたりして、いまようやく軌道にのってきています。

2018年に教会群とキリスト教関連遺産が世界遺産に登録されて知名度も上がりました。また、昨年に転入者が転出者を33人上回り、65年ぶりに社会増(*1)を達成しています。

現在進めているのが、半泊(はんどまり)地区の「廃校活用プロジェクト」です。これは、地域内外の方が交流する拠点ができればと思って始めました。民間の力をお借りするため公募を実施し、鈴木さん、山家さんの企画が採用されて現在ご一緒しています。

鈴木:五島は、移住者の「5年定着率」も82%(*2)と驚異的に高いですよね。「住みたい田舎ベストランキング2020」の「ちいさなまち部門」でも、昨年の21位から9位に上昇しています(『田舎暮らしの本』2020年2月号、宝島社)。

*1 出生数、死亡数の差ではなく、転入や転出など、人口流入と流出の差から算出した増数。
*2広報ごとう10月号

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廃校活用プロジェクトの舞台となる旧戸岐小学校半泊分校

アマゾンも1日、2日で届く。離島なのに意外と便利? 

──五島への移住や、ワーケーションをしているみなさんから見て、その魅力とは? 

鈴木:東京からだと沖縄に行くよりお金も時間もかかるし、不便なんですけど、その分、東京と全く違う価値観があるのが魅力です。

東京はすべてのサービスがお金で解決できるけど、五島では人と人との関係で解決せざるを得ない場面がある。それが私にとってはすごく魅力に思えます。

山家正(以下・正):自然が豊かで四季を感じられるのはもちろん、移住して6年経った今感じるのは、意外な便利さが魅力なのかなと。

綺麗な海や山があるいっぽう、大きい病院もスーパーもある。アマゾンも1日、2日で届くんです。

山家尚(以下・尚):僕は東京に在住しており、五島には仕事やプライベートで定期的に訪れ、長い時には1ケ月ほど滞在したりします。

五島には東京に足りないものがあるし、東京には五島に足りないものもあって、良い意味で自分自身の価値観が拡張しました。

ディベロッパー業をしているので、色んな離島を見てますが、五島は大自然もあり、総合スーパーもあり、住むにはとてもバランスが良いです。

今後は中長期で五島に滞在できる施設を開発していき、五島のファンを増やしていきたいです。

隠れキリシタンが住んでいた“聖域”・半泊

──今回のプロジェクトを進める半泊はどんな場所なんでしょうか?

鈴木:実はすごく不便な場所で、市街地からの山道は車がすれ違うのも大変なくらい。それでもプロジェクト参加者は全員、半泊がとても好きですね。

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五島市・福江島の北端に位置する半泊集落

樋口:地元の人からは、イカ釣りのいいポイントとか、家族でのちょっとした海水浴にいい場所と言われてます。こじんまりしていて、観光の方も、コアなファンしか来ないようなところです。

隠れキリシタンが迫害から逃れて来た時に、狭くて半分しか住み着くことができなかったから「半泊」と呼ばれるようになった、という説もある。そんな歴史もあって、静謐な雰囲気を今も醸し出しています。

正:綺麗なだけじゃないですよね。どこかスピリチュアルなパワーがある。貴重で、聖域のような場所。だから中途半端なことはできないです。

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──そんな半泊の廃校を活用し、「クリエイターインレジデンス」を計画されています。この切り口はなぜ生まれたんでしょうか?

鈴木:価値を創造する人は、アーティストに限らず、企業、NPO、NGOなどさまざまな人がいます。そんなあらゆる人が集う場所をつくりたいという思いから「クリエイターインレジデンス」としました。

頭で議論するだけじゃなく、ひとつの場所で、一緒に手を動かしたり、生活を共にしたりすることで、本来は繋がり得ないクリエイターが新しい価値を共創できる場所になればと思っています。

──滞在者が地域に貢献することも大切にされているんですよね。

鈴木:外から来る人が五島で何かを得て、それを地元に還元しプラスの影響を与える。そんな両者にメリットがある設計が基本だと思っています。

例えば、アーティストが滞在したら作品を市民に共有したり、事業者だったら五島で事業を起こしたりといったように、何からかの形で五島に貢献することはしていきたいです。

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どこが一番自分にフィットするのか?を考えて

── 移住や、ワーケーションを考えている方にアドバイスはありますか?

鈴木:自由にいつでもどこでも働けるという時に、「改めてどこで生きていきたいですか?」 とRethinkするべきだと思います。

どこが一番自分にフィットするのか? を考えてほしい。

正:都会の人は他者に依存している気がします。僕自身ずっと東京の価値観に染まって、他者に依存して生きてきました。五島で、価値観が全然違う人と会うと、これもいいんだという新しい価値を見つけられる。

そこから自分を見つめ直すと、自分は本当はこう生きたいんだ、という発見につながると思います。

尚:僕が会社をやめたのは、ライフスタイルをRethinkしたかったから。

サラリーマン時代は、家族と過ごす時間もまともにとれないし、地方には人も自然も文化も素敵な場所が沢山あるのに行く時間がない。今後はサラリーマンでもワーケーションなどの人事制度が整い、ある程度中長期で地方に滞在することも可能になると思います。

自分自身、五島に来て、人生の「本質」を見つめ直すことができました。いつもと違う場所で自分とは異なる価値観の人と接することはとても重要なことだと思います。

単純な観光ではなくて、まさに五島はRethinkする場であり、価値観の拡張にはもってこいの場所です。その点、都市部近郊のワーケーションで得られるものとは大きく異なると思います。

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五島をはじめ、魅力的な選択肢はたくさんある。その上で、なぜ今、ここにいるのだろう? 今回お話を伺った皆さんのように、自分の居場所をRethinkしてみてはどうだろうか。 

(写真:廣瀬健司。ハフポスト日本版より転載

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