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「裸でも生きる」 25歳起業家の号泣戦記 山口絵理子

あなたは、一生懸命生きていますか?

この本を読めば、多くの人が「何度も」泣きそうになるはずです。
それは、自分が挫折を経験してきたシチュエーションで、悉く自分と同じように挫折を経験する山口さんの姿に、共感して泣けてしまうからです。

彼女はずば抜けて能力の高い人かというと、そうではありません。しかし、いじめ、部活、仕事など、普通の人なら、環境や人のせいにして終わらせることを、気の遠くなるような地味な努力を継続して、全て乗り越えていってしまうのです。彼女の姿を見て、自分を不甲斐なく思わないのであれば、相当に人生で成功されている方でしょう。

そして、彼女の人生のターニングポイント。バングラディシュ。
日本の最低限度をはるかに下回るの生活水準でも、仲良く幸せそうに見える人々。この国の人たちは、日本のように経済的な成長は望んでいないのではないだろうか。貧困国の支援を学んできた彼女はそう思うようになります。

支援という形ではなく、ビジネスを通して、現地の人々に希望の光を灯そう。理想に燃えて、マザーハウスを立ち上げます。事業が順調に廻りだし、日本でも注目を浴びるようになります。

しかし、現地の生活が続くに連れて、賄賂や裏切り、理不尽が蔓延る貧困国の現実に打ちのめされます。貧困という怪物に飲み込まれた彼女は、この国で自分にできることはない、と自分の無力さに絶望します。

どんな困難も乗り越えてきた山口さんが、ついに心折れた瞬間だからこそ、あまりの理不尽さに、深い悲しみと、どうしようもないやり切れなさを味わいました。

このような絶望した人間を蘇らせてくれるものは、一つしかありません。「希望」です。バングラディシュに訪れた当時、心に抱いた初心を思い出し、これまでもそうしてきたように、環境や人のせいにせず、行動を始めます。

「この地で希望の光を灯す」

V・E・フランクル 著の「夜と霧」よろしく、理不尽の蔓延る状況で、人間が人間らしく生きるには、心に希望の光を灯す、ことが不可欠。そうでなければ、理不尽に打ちのめされ、生きるエネルギーを失ってしまいます。

圧倒的に理不尽なバングラディシュで、やりたいことをやり抜く、山口氏の半生を通して、人間の生きる原動力である、心に希望の光を灯す、エネルギーについて、深く学ぶことができました。

「君はなんでそんなに幸せな環境にいるのにやりたいことをやらないんだ?」文中に出てくる言葉です。

バングラディシュに比べたら、はるかに豊かで理不尽の少ない日本。この国に生まれた幸甚に感謝をし、心に希望の光を灯す、凄みを教えてくれる、パワフルな本でした。

裸でも生きる ~25歳女性起業家の号泣戦記~ (講談社+α文庫) 山口 絵理子 https://www.amazon.co.jp/dp/4062816164/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_rSt2EbSFGEC1K @amazonJPより


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