手段を目的化しない。
節税目的の保険加入は危険信号。
12月の給与は年末調整が反映され、普段よりも手取り額が多く、年末年始に財布の紐が緩む方も多いと思われる。以前は私もその中のひとりだったが、高校を出た直後と比べれば、金融リテラシーが格段に向上した今となっては、契約する保険に無駄がなくなったため縁のない話である。
税額控除が利用できるような民間保険は、労働組合のしがらみで強制加入の全労災のセット共済だけで、他は一切契約していない。むしろ単身者で今以上に生命保険を積み増しても、命を狙われる可能性が上がるだけである。
巷ではインフルエンザ保険が話題となっているが、この手の保険は病気を患った時に保険金が受け取れる性質上、将来の自分が病気になることに賭けて、保険料を支払っているようで、筋の良いリスク管理とは思えない。
今の例えならば、保険料にお金を払う位なら、その原資をインフルエンザにならないための予防に回した方が費用対効果は高そうである。
生命保険料控除は、2012年以降に契約している新制度の場合、一般生命、介護医療、個人年金で各4万円、合計12万円の控除枠が存在するが、それぞれの控除枠をフル活用するためには、それぞれの保険料を年間8万円以上支払わなければならない。
この支払保険料と控除額の関係は単純計算で半額ではなく、支払いが2万円までは全額控除対象。2万円を超えて4万円までは半額が控除対象。4万円を超えて8万円までは1/4が控除対象と逓減していく。
つまり、各項目で年間2万円までであれば、支払った保険料の金額が丸々、課税所得から差し引かれるが、それ以上は1/2、1/4と旨みがなくなっていく。だから絶対に損はしたくない私は、組合で強制加入の全労災以外を契約せず、年間2万円以内を死守している。
営業マンの謳い文句で「節税になります」があるが、個人の加入状況によって、既に支払保険料が各項目で8万円を超えている場合、節税メリットはないのだが、営業マンでそれを教えてくれた人を私は知らない。
節税目的で内容もよく分からない、もしくは大して意味のない保険に加入するのは、くら寿司でビッくらポンに挑戦したいからと、空のお皿を取る程度に愚行である。
しかし、内容が複雑な保険商品になると、分からずにやってしまっている方が散見されて、情弱はカモにされるのだと、他人のフリを見て我がフリを見直すよう心掛けている。
保険の意義。
保険はヒトに対する生命保険と、モノ・コトに対する損害保険に大別される。
日本はヒトに関しては公的な保険制度が充実しているため、養育中でもなければ民間で契約する必要性はあまりないが、モノやコトに対する損害は、公的保険では補填できないため、民間で別途契約する必要があり、それが火災保険や自動車保険である。
年末調整で税金が安くなるのは、生命保険料控除の名称から分かるように前者で、あまり個人で契約する意義がない。逆に住宅を借りる際や、自動車を運転する際に必須な、後者の損害保険は節税にはならない、ちぐはぐな税制となっている。
シンプルに考えて、税制が有利だからと言って、それが保険を契約する決定打にはならないだろう。大切なのは保険の契約内容そのものが、価格に見合うだけの価値があるか否かであり、節税メリットはあくまでも副産物的なおまけ要素だ。主従関係を履き違えると、お金をドブに捨てていることを正当化しているだけである。
iDeCoをやらない理由。
私が老後資金対策のいち手段である、iDeCoに加入するつもりがないのも、先述の保険と同様に、いくら税制面で有利でも、それを理由にして加入するインセンティブにはなり得ないからである。
60歳以降にならないと引き出せないデメリットが、税制面のメリット全てを帳消しにしているだけでなく、口座管理手数料が毎月171円、加入者資格喪失届を提出して積み立てを停止しても66円は発生する。
2024年からのNISA拡充で焦って、積み立てを減額や停止しても、ランニングコストは60歳になるまで発生し続ける。
元本割れリスクを嫌って、利率が限りなくゼロな預金型のファンドを選択しようものなら、満期時に間違いなく手数料負けしている水準である。手数料以上に税金が安くなるのかも知れないが、インフレで積み立て時と満期到来時では貨幣価値が大幅に下落しているリスクもある。
目先の節税に喜んで積み立てた結果、満期時に雀の涙では洒落にならない。それなら若くて体力のある時期に、宵越しの銭など持たずに生きれば良かったと、最期に後悔しかねない。
自分が60歳になるのは、30年以上先の話である。30年以上前にバブルで熱狂していた人達の殆どが、昨今の失われた30年となる日本社会を想像できなかったように、今から30年以上先の未来がどうなっているかは誰にも分からない。
分かると豪語するのは十中八九詐欺師か未来人だろう。間に受けてはいけない。だからこそ、自分の資産は、ペーパーアセットに限らず自分で運用すると決め込み、iDeCoで資金拘束させるようなマネはしない。老後資金対策の手段のひとつに過ぎず、iDeCoそのものに目的はないのだから。
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