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生涯現役など絵空事。

一向に賃上げされない国。

 先日、月に数回の頻度で利用する某ディスカウントストアに、外見では後期高齢者位に見える店員が加わった。業務量の割に単価が安いためか、日本人のスタッフが表に出ている印象はなく、外国人労働者に頼りきっている感の否めない環境に、突如老人が加わったのだから、日本もとうとうここまで来たかと内心思っている。

 理由を直接聞いた訳ではないため、真相は定かではないが、老後破産を避けるためにお小遣い稼ぎでやっているのだろうなと思える程度に要領が悪い。ジャーナル切れの際に場所が分からず、会計を待っている私が場所を教える始末で、それから使用頻度が減少したのは言うまでもない。

 一昔前で言うところの、3K職場の要件にもある、キツイ、汚い、危険な職種は、成り手不足が叫ばれて久しい。時代は4Kなので帰れない、給料が安いも加えたいところだが、それはともかく、雇用主にとって都合の良い、安くてこき使える成り手が居ないだけで、賃金の単価を上げれば労働者は集まると考えるのが一般的である。

 しかし、年金受給者がお小遣い稼ぎで働こうものなら、雇用主が時給を上げなくても、国が最低限のインカムを供給しているのだから、生活に困窮することはない。そうして、大した金融リテラシーを持ち合わせておらず、現役時代に散々浪費して老後に備えなかった人ほど、非正規の労働者として都合よく死ぬまで働き続ける。

 これによって割を食うのは、訳あって正規雇用という名の既得権益にあり付けず、非正規雇用で食い繋いでいる若年層である。どんなに単価の安い仕事でも、年金受給者がお小遣い稼ぎで就いてしまえば、時給単価は最低賃金を下回らない限り、上がることはない。

 年金が貰える訳もない若者が、そんなお小遣い稼ぎ稼ぎ同然の時給単価で生計を立てるとなると、国民年金の満額であるひと月あたり6.5万円分だけ余計に働くか、生活を切り詰めなければならない。

 安い仕事に就いてしまう人が居ると、賃金はいつまで経っても上がらないのだから、生涯現役に踊らされて、年金で十分暮らせる人が労働力を市場に供給するのは、賃上げにとって悪だと言える。

×働き続けたい→○お金が欲しい

 そもそも、老体にムチ打って働きたいのだろうか。労働意欲の調査を行うと、半数以上が可能な限り働き続けたいと答えているが、別の調査で日本の会社員のエンゲージメントは低いのだから、一般的な会社員が好きで仕事をしているようには思えないから、本心から働き続けたいと思っている方は少数派だろう。

 本音としては贅沢をするためのお金が欲しいから、そのために仕方なく、可能な限り働き続けたいと答えているのだろう。そんな消極的理由にも関わらず、社会とのつながりを保ちたいからなどと、イス取りゲームのイスにしがみ付き続ける残念な人を何人も見てきた。

 私は建前が大嫌いなので、社会とのつながりを保ちたいのなら、年金があるのだからボランティアでどうぞと切り捨て、後任のためを思いなどと、微塵にも思っていない建前を並べて、イスから引き剥がしたくなってしまう嫌いがある。

 逆に、素直にお金を稼げるだけ稼ぎたいからと、クビにされるまで働くと言える人の方が潔いし、好感が持てると思わないだろうか。いくら性格の悪い私であっても、本音で語る方の意見を無視はできない。

資本主義社会に踊らされていないか。

 たくさん稼いでたくさん消費する。資本主義社会の根幹であり、人間の飽くなき欲求でもある。パーキンソンの第二法則にも、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」とあるから間違いない。

 しかし、本当に自身が望んで金銭消費をしているのだろうか。マーケティングに踊らされて、対して欲しくもないものに浪費していないだろうか。

 私は大抵のことはそれっぽく熟せてしまう器用貧乏さから、お金を払って他人に何かをやって貰うことが少なく、金銭消費が極端に少ない。散髪はバリカンでセルフカット。保険や投資信託は自分で調べて、業者のサヤが取れる余地の殆どない、低コストなものを個人で必要最低限だけ契約。ガス契約の際に未設置だった火災報知器のリースをガス会社に勧められたが、固定費を増やしたくなかったので、ネットで揃えて自力で設置した。生活家電も一通り自力でセッティングできるし、電気工事士の有資格者だからエアコンの設置も合法だ。

 その道のプロに任せた方がコスパは高い。それでも何でも自力でやってみることで、生活するのにお金は必要で、あるに越したことはないが、無いなら無いなりに工夫することで乗り切れる感覚を身につけることに繋がる。

 このマインドが身に付くと、お金がないから働くか、工夫して費用を削減するかで、後者を選ぶようになる。労働の対価として賃金を得ると、税金や社会保険料が取られてしまうが、自身の時間と労力を費やしてコストカットに成功した場合、税金は徴収されない。

 仮に半日潰れても、経験値が溜まる。その半日で働いたら…と金銭的に考えてしまいがちだ。短期的にはお金を払って外注化する方が効率が良いかも知れない。しかし、目まぐるしく変化する現代においては、現在の時給単価が維持できるとは限らず、一度自力でやってみる経験をして、自分でもやって出来なくはないと確信した上で、自力でやるか、外注するかを選ぶのと、未経験で後者しか選べないのとでは、置かれている状況が全く異なる。

 こうして質素倹約に、金銭消費を最低限に留めた結果、平均的な年収でも、20代のうちに老後資金問題が解決する規模の金融資産を築くに至り、生活費用よりも、金融資産所得の方が大きく、理論上は働かなくても生きていける状態となった。

 生活のために働く必要がなくなった時、私は惰性でルーチンワークを行う鉄道員を続ける意義が見出せなくなったため、来春に早期退職をすべく計画を進めている。

 生涯現役の言葉に惑わされ、文字通り死ぬまで働き続ける人生にならないためにも、経済的に独立を目指す第一歩として、何でも自分ひとりでやってみることから始めてみては如何だろうか。


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