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最近の金融経済動向(2024年3月)


日経平均株価、4万円超える

 3/4、日経平均株価が史上初の4万円台を終値付けた。私はこの日の朝、友人と米国株違い、35年間史上最高値更新がなかった=バブル期に高値掴みした人の含み損がようやく解消されて、やれやれ売りが重なると上値が重い展開になりそうだ。無責任な自称経済アナリストが期待している新高値ブレイクに向かうには材料が乏しいと直感的に推察したが、月末時点ではそんな感じの展開が続いている。

 とはいえ、日経平均先物の73%は海外投資家が売買していて、日本の個人投資家の割合は1割強とデータが示していることや、数年前までは考えられなかった円安具合となっており、ドル建ての日経平均株価は見え方が異なること。

 そもそも失われた30年で、日経平均の構成銘柄も入れ替わっており、値嵩株偏重な指標であるからも、上記の安直な推察は単なるまぐれ当たりの可能性も大いにある。

 結局のところ、未来の株価予想など、極端に記せば上がるか下がるかの二択でしかない訳で、どちらかを言っておけば50%の確率で当たるのだから、今後の展開を予想するだけ野暮であり、上がるだろう、下がるだろうと言った先入観は持たず、どちらに転んでも爆死しない運用を心掛けるだけではある。

家計の税・社保負担率最大 若年層に偏り

 しばしば50%に近い国民負担率が話題となるが、こちらは労使折半している社会保険料などの、企業負担分を個人の所得として見立てた場合の負担率で、家計の可処分所得(給与所得−税・社保)としては、28%の負担率の方が実態に即していると思われる。

 とはいえ、いずれにせよ重税を負担しているのが現役世代であり、国民のおよそ1/3を占める年金生活者は、公的年金控除の恩恵により、世代別で最も多く資産を保有しているにも関わらず、最も少ない負担率となっているのもまた事実である。

 現役世代の犠牲を伴う形で、現在のシルバーデモクラシーが成り立っている訳だが、世代交代が進まず政策の意思決定から若者の意見が疎外され、日本の未来を担う若者を蔑ろにし続けた結果、お金の若者離れによる非婚化と、出生数80万人割れの少子化に至っている。

 労働力を提供し、重い税負担までしている現役世代が減り続ける一方で、年金や健康保険の恩恵を受ける高齢者は2042年まで増え続けるが、今以上に現役世代から搾り取ることは難しくなり、最近になって社会保障の効率化や、高齢者の医療費1割負担の見直しに着手する体たらく。

 現役世代にお金がないのは、大卒が当たり前の高学歴社会となったことで、本来なら大学に行く必要のない、偏差値50未満の学生がFランク大学みたいな私立大学のお高い学費を支払うために、奨学金という名の教育ローンを組み、利用者は平均288万円の借金を背負って社会人となる。 

 しかし、大卒となったところで労働集約型産業に従事すると初任給が安く、20万円に満たないことはザラにある。重税により手取り14万円でお前が終わってんだよwwと煽られながら、奨学金を返済し、家賃や生活費を支払ったら、遊ぶお金は殆ど残らない。無論、貯蓄などする余裕もなく、若者の半数が貯蓄ゼロなんてデータも一部で出ている。

 ようやく賃上げで物価高に対処できるかと思いきや、ブラケットクリープ現象で税負担が増えて手取りはむしろマイナス。家計の税・社保負担率最大となっているのが現状だろう。

 私も含めて、真面目に働いても報われず、やってらんねぇと思った、行動力のある人から海外に出て行ったり、税制をハックしては租税を回避する。報われないのは、真面目に働いてはノーガードで重い税・社保を負担して、生活苦となっている非正規雇用者だろう。なまじ低所得者に区分されない程度の所得があるが故に7万円は給付されず、4万円減税の恩恵は限定的で救われない。

 労働力を提供し、重い税負担までしている現役世代が報われないシルバー民主主義社会が持続不能なのは、火を見るよりも明らかなのだから、マイナンバー制度を駆使したデジタル化で効率化を図り、行政コストを削減するのは急務で、健康保険証の廃止如きで騒いでいる場合ではない。

日銀、マイナス金利解除。

 言わずもがな、19日の金融政策会合で植田総裁が、「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた」としたうえで、利上げに踏み切った。

 とはいえ、当面の間は金融緩和傾向が継続するとの考えを示しており、短期プライムレートに左右される、住宅ローンの変動金利には影響が出ないとの考えが濃厚だ。

 しかし、個人的には「賃金と物価の好循環」に関しては懐疑的で、これから先、資金力の乏しい中小企業から順に淘汰される展開になるのではないかと踏んでいる。

 というのも、賃金と物価が共に上昇している主な要因は、需要が強くなって生じるディマンドプル型のインフレに寄るものではないと考えるからだ。

 物価上昇はコロナ禍で世界各国が金融緩和した副作用で金余りとなったことや、きな臭い時代に変わったことで、サプライチェーンに影響が出ている点で供給が不足しており、原油高と相まってコストプッシュ型のインフレが生じている。

 賃金に関してはインフレ対処の側面もあるものの、少子高齢化で企業は現場を担う若手の採用に苦戦しており、若者の取り合いが激化していることで、賃上げしないと成り手が集まらない日本特有の事情が大きいと見ている。

 つまり、原材料費が高騰したため、仕方なく価格転嫁している状態では、企業の利益は変わらず、値上げしたお金は外貨に消えていく。しかし、賃上げしないと現場に若者が来ず、機会損失が膨らむ一方。

 その証拠にバス会社の減便や、建設や物流会社の納期遅れ、飲食や宿泊、タクシー業界などで設備は余しているのに、人手が足りずフル稼働できない状態が目立つ。

 賃上げしないと人手が集まらないが、賃上げするだけの資本力のない中小企業は、若手の採用が困難となり、稼働できない機会損失により人手不足倒産していく。そう考えると、日銀のマイナス金利解除は、表面上やってます感を出すだけで、実態としては緩和継続で大して変わらないのではないかと思う。


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