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お金が貯まる行動原理。

デジタルにない、偶然の出会い。

 先日、書店に立ち寄った際に下記の本が目に留まった。

 それは私はモノを適切な場所に配置する「整頓」が昔から苦手で、整頓する必要がないほど、モノを厳選する「整理」を極めて、少ないモノで生活することで、何もない「きれいな部屋」を維持する戦略を実行しながら生活しており、保有資産は20代単身者の上位0.8%に位置する典型的な「お金が貯まる人」だからに他ならない。

 FPの見解と、私の実態がどれくらい一致していて、どれほど乖離しているのか。当事者として内容が気になるのは当然とも言える。読んだ感想としては大体合っていた。

 とは言え、この手のマネー本は何百冊規模で読破しており、今更読んだところで目新しい情報に出会える確率は体感で1割以下のため、見出しや太字部分だけに目を通して、気になった部分だけ熟読する、いわゆる流し読みスタイルで堂々と立ち読みして、結果として冷やかすのが常であるが、欲しいのは本の中にある情報であって、媒体でしかない本そのものを身銭を切ってまで欲しい訳ではないのだから仕方がない。

 どうしても独占して所有したいほどの本であれば私は惜しみなくお金を払う。真のお金持ちはお金を持っているからと、安易に身銭を切ることはせず、市場価格よりも安く、若しくは身銭を切らずに欲しいと思ったものを手に入れる方法がないか考える習慣が染み付いているのである。

 本書でもニーズとウォンツの区別の話が出てくるし、私が好きな「バビロンの大富豪」の7つの教えのひとつ「自分の欲求と必要経費を混同しない」は特に気に入っている。

 ここでのニーズは「情報」で、ウォンツは「紙媒体の本」。立ち読みでニーズが満たされたのだから、わざわざ読み返すかも定かではない本に対してお金を払うのは得策ではないと判断して、結果として今回も冷やかした。

 しかし、書店は並べられている本の中から選ぶという、検索ありきの電子書籍が不得意とする一覧性があり、偶然の出会いを求めているが故に、デジタルが発達した現代でも、未だにアナログ媒体を活用する嫌いは、会社四季報然り、随所に散りばめられている。

お金持ちが片付け上手な理由。

 一般にお金の使いみちは「消費」「浪費」「投資」の3つに分けるのが定番だが、この方法は個人的にはあまり好きではない。「三択」にすることで、「両極端な2つ+逃げ道1つ」の構図に陥りやすく、いつまでも根本が解決しないからである。

 例えば、アメやガム、ペットボトル飲料や珈琲、お菓子、スイーツ、お酒、タバコなど、買って当たり前な準日用品に対して、大衆は「消費」とカテゴライズしがちであるが、私からすれば「浪費」に他ならない。

 生きるのに必要な消費などシンプルで、玄米と味噌、それに水道。これさえあれば日本人は生きていける。それ以外のものは基本的にウォンツが混ざった浪費と捉えているから、私はキシリトールガムや珈琲、お酒を嗜むことはあっても、これらが浪費だと自覚している。

 だから浪費はすべて無駄だと言うつもりはない。心の豊かさを保つのに浪費は必要だ。しかし、浪費を浪費と自覚せず、消費と正当化していれば、いつまで経ってもお金は貯まらないのは少し考えれば分かるはずである。

 三択にするから本質を見失う。ニーズとウォンツで区別するなら、どう考えても準日用品は後者の欲しいもの「ウォンツ」であり、必要なものではない筈だ。なるべくしてお金持ちとなった器の大きい人たちは、「必要経費」の基準がシビアなのである。だから私は両極端な二択でふるいに掛けるよう心掛けている。

 これは、片付けの「必要」「不要」「保留」も同様で、実際問題、逃げの「保留」にばかり仕分ける人は、根本が解決しないまま時間だけが過ぎていく、貧乏な人にありがちなパターンに陥っている。

 保留にして、半年、1年と時間を置いてから、結局は不要として処分するのなら、最初に必要か不要かの二択で仕分けしていれば、1個のモノに対して二度も決断せずに済んでいる。

 人間が1日に決断できる回数は決まっているのだから、決断を先送りすると複利によって、問題は雪だるま式に大きくなり、年末の大掃除のような大事になるのである。

 日頃から時間にして5分足らずの小さな決断を行い、先送りしなければ年末の大掃除など不要で、周囲が大掃除で半日若しくは1日潰している時に、自由な時間を過ごせるのである。ゴミ収集の業者としても、年末に各家庭でどっさり出されるより、日頃からチマチマ出して貰う方が有り難いことだろう。

 二者択一、即断即決の習慣の積み重ねによって、お金持ちは部屋がきれいというお決まりの構図となるのである。

トリニティスタディの盲点。

 二択の持論で盛大に脱線してしまったが、本書で触れられていて目新しい情報だと感じたものは、昨今のFIREムーブメントで持て囃されている4%ルールの聖典とも言えるトリニティスタディも万能ではないという点である。

 そもそもトリニティスタディが研究された成り立ちとして、正式名称の「退職金の節約:持続的な取り崩し率の選択」からも分かるように、社会保障が日本ほど手厚くないアメリカ社会では、公的年金だけでは生活が成り立たず、退職金を運用して老後資金に充てる慣習から、合理的な取り崩し率を研究するに至っている。

 つまり、退職してから最期を迎えるまでの間に、退職金を枯渇させないための運用手法を確立するための研究であり、そのため実験した最長期間が30年となっているのである。

 要するに30年以上先は想定されていないということに加え、税金が考慮されていない点。為替変動リスクが伴い、日本ではそっくりそのまま利用できない点。投資信託の運用コストが上がるに連れて、成功率が下がる点から、正直、日本で米国株式と米国債券半々のポートフォリオで4%ずつ取り崩せば大丈夫と盲信するのは些か危うさを感じる。

「トリニティスタディ」に熱心に研究しているアメリカン・カレッジ・オブ・ファイナンシャル・サービシズのウェイド・ファウ教授はこう話しています。
「株式と債券が半分ずつのポートフォリオで、インフレ調整付き、引き出し率4%のモデルの場合、手数料を支払わないと成功率96%ですが、手数料を1%支払うと、成功率は84%に下がります。手数料が2%になった場合には、成功率は65%に落ちます。」

父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え|ジェイエル・コリンズ

 とことんコストを追求する投資信託と謳うeMAXIS Slim米国株式であっても、運用コストが0.0968%と、全く支払わないことは不可能で、隠れコストを加味すれば0.2%程度となる。

 MAXIS米国株式(2558)などのETFで貸株を利用して運用コストを相殺するなど工夫の余地はあるが、それも金融リテラシーがなければ思い浮かばないし、20.315%のキャピタル課税はもっと重い。

 為替に関しても今後、日本が衰退して円安傾向が続くことを前提とするなら、外貨建て資産に賭けるのが合理的な選択となるが、取り崩す時に円安とは限らない。大切なのは、金融リテラシーを身につけて、時代の変化に応じて臨機応変に対応することである。

 尤も日本の場合、公的保証や年金制度が徐々に悪くなる未来が目に見えているとは言え、生活保護もあり、基本的人権が脅かされる事態が現状ではないに等しい。

 そのため、年金生活にシフトする30年前から逆算し、35歳までに蓄財して早期リタイアに踏み切るのはひとつの目安となるだろう。30年後に96%の確率で元本が残っていれば、公的年金の受給まで逃げ切れるからである。

 老後資金を備えず、中年期に自由を謳歌した結果、仮に大病を患って老後破産するような事があれば、生活保護で医療費無料コースにシフトすれば良いだけの話なので、現状の社会保障制度が維持される前提であれば、35歳でトリニティスタディを活用するのは悪くない選択だと言える。

 しかし、私のようにそれよりも早期にリタイアしたい方は、イザという時に生活コストをドラスティックに削れる覚悟や、金融資産以外でインカムを得る手段を確保するなど、多方面でリテラシーを高めることで、研究にはない30年超の取り崩しを身を挺して実行することになることを自覚すべきだろう。


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