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最近の金融経済動向(2023年5月)

日経平均株価、バブル高値更新。

 何と言っても日本株の海外マネー流入により、日経平均株価がバブル期に付けた最高値を、5/19に更新したことだろう。その後も5/26、5/29とバブル崩壊後の高値を上回る展開と、株取引をやっていない人には、日本株の底堅さが感じられる展開となっている。

 しかし蓋を開けてみると、東証プライム上場企業の3/4は下落しているとも言われており、TOPIXの月初来パフォーマンスは3%台前半のプラスと、6%台後半で推移している日経平均と比べると弱く、日本株に投資している人全体がウハウハな訳でもないのが実情である。

 それもそのはずで、日経平均株価の指標は値嵩株に大きく影響を受ける、歪な計算方法が取られているため、指標の体をなさない構造上の欠陥を抱えているため、日本株の指標として大して意味をなさない。

 ファーストリテイリング、ソフトバンクG、東京エレクトロン、ダイキン工業、ファナックの、たった5銘柄で指標の30%を占めており、これらの株価が動くだけで、日経平均株価が大きく動いてしまう。

 7大商社全部の株価をひっくるめても、ユニクロ率いるファーストリテイリング1社の株価が動いたほうが、日経平均の影響が大きいと思えば、実態経済の指標として適さないのが伝わるだろう。 

アメリカ債務上限問題はひと段落。

 アメリカの債務上限問題が取り上げられてから半月ばかり経過したところで、上院と下院とで合意に至った。5/16のnoteにも、「また茶番劇が始まったと捉えるか、今度こそ破綻すると捉えるか」と記した。

 基本的には前者のスタンスで、エンタメ半分でニュースに目を通しながらも、万が一、米国債券のデフォルトが起きた際に、保有資産にどう影響するのか。ポートフォリオは現状維持で良いのか。を自問自答する機会と捉える距離感程度が個人的にはちょうど良い。

 米国債券のデフォルトは、国際金融の基軸通貨であるドルの根幹が揺らぐことになりかねないため、一時的にマーケットが急落することは想像に難くないが、人類が自給自足の脱文明化社会に転換しない限り、経済そのものが成り立たなくなる事態は想定しづらい。

 経済が機能し続ける前提であれば、出資者の権利を小口化した株式は、会社や業種にも依るが、例えば食品メーカーのような、人類の根源的な欲求に応えている会社が、国債のデフォルトによって打撃を受けることはあっても、本業で利益が出ている以上、資金繰りさえ上手くこなせば、倒産まで追い込まれる事態は稀だと考える。

 そもそも、資金調達の借用証書である債券と、出資者の権利を小口化した株式とでは、返済義務の有無から同じお金を出す行為でも、単なる金貸しなのか、会社を保有するのかと性質は異なる。

 貸したお金が踏み倒されて返って来ないのは最悪だ。しかし、端から返済を期待するのではなく、会社のオーナーとして業績や剰余金の配当によって、中長期的に資金を回収することが前提の株式であれば、目先の損得ではなく、保有する会社が将来繁盛するか否かが、本質的な売却基準となる。

 そのため、短期的な美人投票による株価の変動はノイズに等しく、良い会社の出資者であれば、短期的には例え荒波でも、10年、20年超の長期的なスパンで考えれば報われる可能性が高い。

 それはバフェットさんの名言である「そこそこな会社を素晴らしい価格で買うのではなく、素晴らしい会社をそこそこの価格で買う」に通じる投資哲学でもある。

現役世代に負担させる異次元少子化対策。

 金融経済というよりは、政治経済だが、今後の日本社会を測る指標として、人口動態は極めて重要であるため、この手の内容は何度でも記す。

 それは日本社会の中で、経済政策によって翻弄される可能性が最も高い、当事者世代である影響も少なからずあるだろう。

 核家族化や高等教育費の高騰、先行きが決して明るいとは思えず、スタグフレーションに陥っている日本経済や、現状の養育への負担感を踏まえると、子育ては「できることなら避けて通りたい」と思うのが、一介の20代としての雑感である。

 肌感覚として、多角的に物事を考えた上で判断する同世代であれば、意見は大きく変わらないだろう。その影響が1月〜3月の出生数にも表れており、2022年に80万人割れをしたかと思えば、2023年は単純計算で70万人台前半になる見込みとなっている。

 そんな若年層の肌感覚など、シルバーデモクラシー化した、現在の政界が拾えるはずもなく、その結果が「反転のラストチャンス」と謳いながら財源論に終始し、現役世代間の再分配によって、子育てを支援する「異次元」な対策を打ち出そうとしている。

 税理士さんの試算が話題となったように、所得330万円以上のパワーカップルほど、バカをみる増税とばら撒き具合から、「余計なことはするな。自分で稼いだ金くらい、好きに使わせろ。」と思っているに違いない。

 因みに「年収」と「所得」は全くの別物で、年収400万円の東京都在住の若年単身者をモデルに試算した場合、所得はおよそ173万円となった。所得330万円は逆算すると、年収換算で650万円となる。

 高所得男性ほど既婚の割合が高くなる傾向にあることから、子持ちの可能性も高く、受け取れる児童手当よりも、搾り取られる社会保険料の方が多く、誰のための改革なのか方向性が分からない。

 政治家や官僚は押し並べて高学歴だが、学校教育では、何かを覚えて、それを正確に再現する能力が「頭が良い」として評価される。

 それらは問題の根本を解決する能力とは別物で、実態としては枝葉の問題を過去の引き出しから対処しているに過ぎず、本気で日本社会を良くしたいのであれば、兵庫県明石市のように、絞れる知恵があるのではないかと思う今日この頃である。


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