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身を投げる前に、常識を投げる。

人生詰み減らし。

 私が尊敬している岡本太郎さんが、亡くなる3年ほど前に執筆された本の中で、下記の持論を展開している。

”人生は積み重ねだと誰でもやっているようだ。ぼくは逆に、積み減らすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の累積にこだわると、いつの間にか累積物に埋もれて身動きができなくなる。”

自分の中に毒を持て|岡本太郎

 積み重ねてしまうと、過去の自分が築き上げた地位・権力・財産などに固執してしまい、それらの延長線上にある「守り」の選択しか出来なくなってしまっている現代人の多くを表しているように思えてしまう。

 世間に目を向けても、全く以てその通りで、養育中の子供が自立するまでの間に、サラリーマンをどれだけ辞めたくても辞められず、身動きが取れなくなっている、取るに足らない中年が世の中に蔓延っている。

 思い切った選択が出来ないと、新しい「何か」も生まれなくなり、結果として、日本経済は衰退の一途を辿っている。多くの人はありきたりな、取るに足らない人生となり、最期に後悔するのだろう。

 シン・エヴァンゲリオン劇場版の制作に密着取材した、NHKのドキュメンタリーの内容で、庵野秀明監督もルーチンの連続や、普通のものからは、新しく面白いものが生まれる可能性は低い。と言ったニュアンスの発言を何度もしている。

 スタジオカラーの事務所には、太陽の塔の模型が置いてあったり、使徒のデザインも4つの顔を彷彿とさせる。多かれ少なかれ、太郎さんの影響を受けているのだろう。

 常識と言う名の重荷で身動きが取れなくなって、自決を目論んでいる方は、その凝り固まっている常識を投げ捨てて※しまえば良い。

 ※関西弁だと「投げる」は「捨てる」を意味するため、関西人目線だと投げ捨てるは頭痛が痛いに通ずる違和感があるかも知れない。知らんけど。

追い込まれるなら、会社員も積み減らす。

 幸い日本は失業しても住所さえ死守すれば、生活保護を受給できるため、餓死することはない。だからこそ、自分に合わないものは潔く捨てられる最低限の環境は整っていると言える。

 ここまで極端でなくても、労働を美徳とする常識に縛られ、こんな自分を雇ってくれるのはこの会社しかないと、無理をしてしがみついた結果、心身を病んでいるのなら、精神科や心療内科を受診して精神疾患の診断書を貰って病気休職したほうが良い。

 どうせ自決するつもりなら、将来の査定や出世なんて大して重要ではないだろう。それに社会保障の知識があって、行政や健保組合から傷病手当金や失業保険などの給付を漏れなく受け取れるなら、1年働けなくなった位で、経済的に窮地に追い込まれるようなことはない。

 それなのに、普通の人が普通に働いただけで、自決を意識する程度に追い込まれるのが当たり前な風潮や、ブラック企業が社会で蔓延っている。東大生が国家公務員に成りたがらない時代なのだから、安定の代名詞として世間で持て囃される公務員だって怪しいものだ。

 これらの方がどう考えても異常なのに、大衆は労働を美徳して、真っ当な大人からは働いて然るべきと、価値観を押し付けられる。常識を押し付けた結果、当事者が苦しんだり、心身が壊れても、責任を取ってくれる訳でもない。

 仮に公務員を辞めようとすれば、苦しみは当事者にしか分からないのにも関わらず、勿体ない、馬鹿げていると批難されることが大半だろう。挙句の果てに、働ける癖に働かない奴を見つけると、非常識だと村八分にして、臭いものに蓋をするかの如く、社会的に抹殺して枠組みから外しているのだから、常識なんて戯れ言で、所詮は他人から押し付けられた価値観や物差しでしかなく、いい加減なものなのである。

 自分の軸がないと、そのいい加減な常識に惑わされて本質を見失うが、クセの強い人間ほど、社会人を量産するのが目的である義務教育の9年間で矯正されて、真っ当な大人に軸を折られてしまう矛盾を抱えている。

 その結果が先進国の中でもトップの自殺率として現れている側面があるのではないかと推察してしまう。

根底にあるのは恐らく嫉妬心。

 日本人の多くは自分にない「何か」を持っている人を妬みがちである。私も嫉妬深いから、今でも気をつけないと妬みそうになる。しかし、「妬む」は他人を引き摺り降ろす負の感情であるのに対して「羨む」は自分を同じ状況まで引き上げる正の感情である。

 お金持ちを素直に羨み、資産形成の方法を教えて貰ったほうがウィンウィンな筈なのに、現実は利子所得や、税率1億円の壁を妬んで金持ち優遇税制をやめろと貧乏人が声高に要求した結果、低所得者優遇の配当控除の住民税部分である、資産形成に有利な分離課税が塞がれる形で増税となり、自分たち貧乏人の首を締める形となった。一方のお金持ちは配当控除など使うような所得レンジではないから、ノーダメージである。後々マイナンバーと紐付けさせる形で、資産所得を個人の税率と紐付けさせる前段の分離課税廃止であれば評価はひっくり返るが、それを実行したら日本マネーの大半が海外のタックスヘイブンなどに逃れる可能性が高く、現実的ではない。

 自分の人生を他人と比較して、自分にはない「何か」を持っている人を妬み、引き摺り降ろすのは今日限りで終わりにしよう。妬んだところで、恐らく誰も幸せにはならないだろうし、素直に羨む方が成功者から色々と学ぶことが出来る。学ぶの語源は真似るから来ている。

 真似をするような人を羨まずに妬み、引き摺り降ろした結果が30年以上もの間、経済が停滞し続けて没落している、世界で唯一の先(後)進国と化し、若者には生き辛い上に過酷なシルバー民主主義が仇となって、少子化が加速しているのが現状である。

 イーロン・マスクさんの日本が近い将来消滅する旨の呟きが物議を醸したのも、的を得ていたからではなかろうか。

 我々20代がもがき苦しみながら、必死に種を存続したところで、数世代後には途絶えている未来が濃厚だと考えれば、わざわざ妻子持ちで身動きが取れなくなるような行き方を真似する必要なんてない。

 だからこそ、積み上げてきた社会的地位、信用、キャリアの全てを捨ててでも、経済的に独立を果たして、自由を謳歌するFIREがブームとなっているのではないだろうか。私も次に春を迎える頃には、これまでの常識という名の呪縛から開放されていることだろう。

 誰かの常識で身動きが取れなくなっている若者が、少しでも挑戦する後押しとなれば、一介の20代としてこれほど嬉しいことはない。


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