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最近の金融経済動向(2023年4月)

東証、PBR1倍割れ改善要請。

 上旬の段階で別記事で思うところを記しているが、要点を振り返ると、PBRとは株価純資産倍率のことで、バランスシート上にある、資産から借金で調達している負債を差し引いた、純資産を1株あたりの金額に換算した価格(BPS)に対して、株価が何倍を付けているかを示したものである。

 例えば私が資本金5万円、100株を発行して設立した無借金の株式会社であれば、資産5万円、借金ゼロのため、単純に発行株数の100で割った500円が、一株あたりの純資産価格(BPS)となる。

 500円分の資産価値がある会社の株が、市場でも500円で売買されていれば、PBRは1倍。1,000円で売買されていれば2倍、1,500円なら3倍といった形だ。

 要するに、分子である株価が上昇すれば、PBRは上がり、反対に分母である一株あたりの純資産(BPS)が増えると、PBRは下がる。

 GAFAを取り上げると、グーグル(Alphabet Inc. A)なら5.3倍、アマゾンなら7.4倍、フェイスブック(Meta platforms, Inc.)なら4.96倍、アップルなら53.2倍(いずれも4/29時点)と言った具合である。

 何かとグローバルスタンダードになりがちな、米国社会の尺度としては、PBR1倍割れは、会社の帳簿上の価格よりも低い価値でしか、株式市場で取引されていない状態のため、事業を継続するよりも、事業を畳んで清算したお金を株主に分配した方が良いとされている。

 冒頭に紹介している記事では、社会インフラを担う鉄道会社を引き合いに、PBR1倍割れだからと解散すべきか問われると、困る人が出てくる点を挙げさせていただいた。

 しかし、西武鉄道が物言う株主であるサーベラスから、経営効率の悪い、郊外路線の廃線を提案されて、物議を醸したのは記憶に新しい。

 PBR1倍割れとは、その会社の株式が、現実世界の価値よりも安値で買えてしまう状態を意味する。それは外資系企業や投資会社に、安い国ニッポンを代表する企業の株の過半数を取得されて、経営方針を牛耳られてしまう可能性が高まることを意味する。

 PBR1倍割れ是正は、国防の観点からも重要なのだろう。

物価はどこまで上がるのか?

 3月の消費者物価指数(CPI)が公表され、主婦(夫)であれば、言うまでもなく物価上昇を肌で感じているだろう。

 数字で改めて振り返ると、2月から3月にかけて、ハンバーガーが24.6%の上昇。さけ(生鮮魚類)が29.7%の上昇。鶏卵が29.4%の上昇。食用油が24.3%の上昇、洗濯用洗剤が17.6%の上昇と、年間ではなく月間でこの数字も中々にエグい。

 シン・日銀総裁に就任した植田さんが、価格転嫁に対して「そろそろピークを迎える」との分析を示したため、このあたりで値上げ合戦は一服しそうな印象はある。と言うよりも沈静化してくれないと流石に困る。

 とはいえ、個人的にはまた、かつてのデフレ経済に戻る可能性は低いと踏んでおり、インフレ体制のある資産がポートフォリオの中心である、運用方針に変わりはない。

 それは、我々一般消費者が、値上げを受け入れない、同調圧力にも似た何かが、コロナ禍からのウクライナ情勢によって、仕方がないものだと、値上げを受け入れるフェーズに移行したからに他ならない。

 これまで各社が堂々と値上げすることを躊躇い、結果として価格据え置きで量を減らす「ステルス値上げ」、横文字だと「シュリンクフレーション」によって、食べ物が徐々に小さくなって、私がイライラする現象が頻発していた。

 工場設備やパッケージの変更もタダじゃない。素直に値上げした方がコスト面で安上がりなはずなのに、国民に露骨な値上げアレルギーがあり、類似商品は価格が横並びでなくなった途端に、最安値の商品や、経済学で言うところの劣等財に流れ、ブランド信仰のカケラもなかったがために、企業側がそうせざるを得ない状況となっていた。

 それが、昨今の不安定な世界情勢によって、これまでのグローベル経済の常識から外れるレベルでサプライチェーンが崩壊し、原材料費が高騰したことと、これ以上小さくするのは如何なものかと思うレベルまで、シュリンクフレーションが限界に達していたこと(個人的な感想)から、企業努力で太刀打ちできる状況ではなくなり、各社が切羽詰まってか、示しを合わすことなく、直接値上げし始めて、これまでの呪縛から解放された。

 それにより、企業の売上高は増加が見込めるようになったものの、現在のインフレはコストプッシュ型、すなわち原材料費の高騰に依るものだから、企業の利益が増えている訳ではない。

 つまり、値上げして売り上げが増えたからといって、それが受給バランスで、需要が増えた影響でなければ、利益ベースでは大差ない以上、労働者の賃金を持続的に上げ続けることは、資金力のない中小企業ほど厳しい状況と言える。

 今年こそ、政府主導で賃上げ圧力を掛けてきたものの、これが続かずに物価だけ上昇するようでは、スタグフレーションそのもので、一発屋で終わらないことを、社会のレールから外れた、蚊帳の外で低みの見物でもしようと思う今日この頃である。


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