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欲しいものを選定する基準。

先に理想的な状態を想像する。

 私は所有物を意識的に減らしている訳ではないが、思い入れが強く、おいそれとは捨てられないホーダー気質故に、むやみやたらに所有すると、もので溢れかえることを自覚しているだけでなく、実家を反面教師にしているため、非情なまでに入口の時点でシャットアウトしている。

 こうでもしないと、持ち物が少ない快適な状態はとても保てない。そんな私の住環境を見たことがある人からは、不本意ながらミニマリスト呼ばわりされる一方で、持ち物が独特だともよく言われる。

 少ないもので豊かに暮らす系のステレオタイプで、無印良品を多用している印象があるが、私は無印を間に合わせで買うことが多く、最有力候補にはなり得ない場合が圧倒多数で、私の持ち物はミニマリストのそれにも、世間一般の傾向にも当てはまらないから独特と言われるのだろう。

 とはいえ、物珍しいものなら何でも飛びつく訳ではない。手前味噌だが割と丁寧に扱う部類で、製品に致命的な欠陥でもない限り物持ちは良いため、ガジェットのように進化がめざましい訳でもなければ、買い換えずにメーカーの耐用年数よりも使っていることが多い。

 部品を交換すれば使えそうな故障に出会す頃には、既に製造そのものが終了していて、交換部品も在庫がなくなり、アフターサービスが打ち切られていて、突如難民化した悲劇も一度や二度ではない。

 そんな私の選定基準は、自身の「こんな製品があったら良いな」のニーズから、理想的な状態となる答えを先に想像し、それから想像した答えに近い製品があるかを調べる。

私物の具体例。

 冬場に防寒着が欲しいニーズを認知すると、多くの人は衣料品量販店に実店舗に出向くかECサイトで、暖かい素材で作られたヒートテックや、モコモコしているダウンジャケットをあまり吟味せずに購入しては、1シーズン使ううちに防寒性が微妙やら、ポケットが使いづらいと、色々と不満が出てきて、翌年にまた新しいものを買い求める。

 私はまず防寒着に求める機能を列挙し、それを買うのに最適なお店やメーカーを類推するところから始まる。第一に防寒性能が抜群であること。次点に頑丈で長期間使用できるものであること。動きやすく機能的であること。できるだけ軽くて嵩張らないもの。

 この条件が要求される用途として、ハイカーが愛用するアウトドアウェアが思い浮かぶ。山の天気は崩れやすいから、それに耐えられるだけの防寒・耐水性能が必要とされる。枝に引っかかったりもするだろうから、その程度では破れない耐久性も必要だろう。登山は体力勝負だから、機能性や軽量さも重視される。

 そんな防寒着の理想的な答えを想像すると、バリバリのインドア派で、ハイカーでもないのにアウトドアウェアの購入が最適解という結論に辿り着く。

 そうして選んだモンベルのシャルモパーカは、薄型軽量で生地そのものは特段暖かいダウンでは作られていないものの、保温性が抜群で身体を動かすとダウンジャケット以上に暖かくなり、動きやすい分だけ快適だが、寒さを凌ぎたいニーズ(欲求)からだと、この発想には中々辿り着けない。

 この要領でiPhoneケースに財布を兼ねられないかと、abrAsusのiPhoneも入る財布に辿り着いた。

 充電器も悪しきLightningコネクタを使わずに済むように、紛失しやすく壊れやすい変換アダプタではなく、着脱可能なマグネット式のスマホリング&スタンド兼用無線充電器に辿り着いた。これなら変換アダプタと違ってきっと紛失しないで済む。

 季節家電の扇風機は、毎年収納するのも面倒だが、出しっ放しも邪魔になるから、出しっ放しでも邪魔にならない良い方法はないかと考え、シーリングファンライトの小型サーキュレータ版としてドウシシャのサーキュライトに辿り着いた。

 毎日コーヒーを飲むのにフライパンでお湯を沸かしていたため、ケトルが欲しいと思ったものの、空間の制約上、湯沸かし専用家電を配置する余地はなく、だったらケトルに調理機能が付けばIHコンロを代替できると考え、アイリスオーヤマのクッキングケトルに辿り着いた。

 安直なニーズだけは満たせる、有象無象の製品の中からこれらを探し当てるのは非常に難儀する。だからこそ先に理想的な答えを想像することに意義がある。

想像力は株式投資で養われた。

 私の選定プロセスを説明すると、合理的だが面白いと言われることが多い。ルーツは個別株投資にある。日本の上場企業は2023年時点で3,800社超も存在するため、有象無象の銘柄の中から、自身の投資方針やリスク許容度に適合する銘柄を選定するのは、持ち物以上に骨の折れる作業である。

 ネームバリューのある大企業が良い銘柄とは限らない。株価は美人投票みたいなものだから、みんなが知っている大企業の株価は、みんなが欲しがるからこそ割高で推移しており、高値で掴むと売買で不利になり、損をする確率をいたずらに上げるだけだから、それが良い銘柄とは言い難い。

 人は多かれ少なかれ、資産を増やそうと思い投資を始めるのであって、損するつもりでやる人の存在を私は知らない。

 だからこそ想像力を働かせて、潜在価値は高いもののマジョリティ層がその価値に気付いておらず、割安な状態で推移しているようなマイナーな銘柄を、スポットライトが当たる前にこっそり保有して、みんなが欲しいと殺到した頃に売却することで実利を得る。

 これこそまさに金融のあるべき姿であり、不確実な将来にみんなが欲しがるであろう何かを、想像力を駆使して理想形から類推するのは奥が深い上、幅広い教養が必要となる。私は個別株投資のフレームワークを買い物に転用しているに過ぎない。


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