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最近の金融市場動向(2022年10月)

円安の利点活かす。

 日本円の価値が続落し、150円台を記録した為替相場だが、首相は円安の利点を活かし、インバウンド需要を呼び戻すための水際対策緩和や、農林水産物の輸出に力を入れる方針であることを示した。

 為替レートは年初来から3割以上下落したことになり、対外的に見れば日本の全てのものが3割引となっているに等しい状態となっている。

 輸出産業の代表格である自動車産業はさぞ好決算だろうと期待しがちだが、EVシフトでガソリン車が苦戦していることや、工場を海外に移転している場合、為替差益の恩恵がない。

 むしろ、産業問わず原価率を抑えるために海外移転したメーカーは、この円安で国内向けの製造で結構な打撃を受けており、円安が常態化するなら工場の国内回帰の動きが出て来て、益々鎖国化して舶来品に逆戻りする未来があるかも知れない。

 それに、インフレの程度も諸外国と比べれば緩やかなものだから、世界中で売られているビッグマックやiPhoneは日本に来て買えば、免税の効果と相まって同じ商品でも安く買えるため、疫病以前のような訪日観光客による爆買いの光景が日常風景となる日は案外近いのかも知れない。

 そうなれば、外貨が売られ日本円が買われる状況となるため、加速し続ける円安にもブレーキが掛かることが期待できるから、個人的には後述の理由を含めて、今焦って外貨建て資産を積極的に買う必要はなく、インデックス投資で設定している額だけ機械的に買い付けるだけで十分だと考えている。

 現に米国株式の年初来リターンは20%マイナスだが、為替差益で30%プラスとなっており、円建てで見れば10%程度のプラスで推移していることになる。

 反対に、株安だからと今買った分は、為替レートが年初の115円に戻るだけで、為替差損で30%マイナスになるリスクがあることを意味し、このリスクは無視できるほど軽微なものとは思えない。

政府、再度為替介入。

 先月145円だったドル円の相場は150円台まで下落。先月に引き続き、効果は限定的と見られる動きが続いている。

 1ドル150円台に突入したことで、年初来の115円から3割程度、対ドルで日本円の価値が目減りしたことになるが、この状況に危機感を感じて、外貨建て金融商品に手を出し始めた、これまで投資とは無縁だったであろう人の姿が目立つ。

 確かに、今のまま円安が加速すれば、180円や200円台まで下落しそうな感覚に陥るが、現在の円安は日米の金利差によって生じているものであり、私見では米国の利上げそのものが、いつまでも続く性質のものではないことから、円安傾向が続くのは今年中、長期化しても今年度いっぱいと踏んでいる。

 と言うのも、10月時点でのドルの金利が3〜3.25%で推移しており、11月に先月同様の2段飛ばしで0.75%の利上げを行うと利率は4%にもなる。

 新興国の通貨ならともかく、先進国、それも世界一の経済大国の通貨が、持っているだけで4%の利子が付く状態から、今後も加速し続けるとは思えない。

 バブル崩壊直前の日本経済では、円の利率が6〜7%まで引き上げられたことで、実体経済に急激にブレーキが掛かり、後に平成不況と言われるまで経済が冷え込んだ過去があるのだから、米国経済がどれほどインフレしていようとも、ドルの利率を6%以上に設定するとは考えにくい。

 そもそも、現在世界的に生じているインフレは、疫病によって実体経済が滞り、経済の潤滑油であるお金が循環しなくなることで、市場経済がパニックになることを防ぐために、世界的に異次元金融緩和を行い、マネーサプライを増加させたことによるものである。

 金融緩和による金余りによって、行き場を失ったマネーがあらゆる金融市場に流入し、結果としてインフレが加速し過ぎたことから、利上げによってブレーキを掛けているものと私は見ているが、それにより経済が冷え込んでしまえば、2年前に行った金融緩和が本末転倒となる。

 だから、米国経済がどれほどインフレしようとも、金融市場がクラッシュしない程度の利率までしかFRBは利上げできないと読んでおり、11月に0.75%の利上げで4%となった翌月以降、相場を考慮すれば12月からいきなり利上げをゼロにするとは考え辛く、徐々にペースを落とすとしても0.5%、翌々月の1月に0.25%で5%台にタッチしたところで、一連の利上げにピリオドを打つシナリオを想定している。

 つまり11月を過ぎれば、米ドルが利上げする余地は、これまでの常識が当てはまるなら1%程度と殆ど残っておらず、上昇幅が抑えられるようになると、日米の金利差がこれ以上開かなくなるのだから、そうなるとトレンドが転換して円安も頭打ちになると踏んでいる。

 そのタイミングが2023年1月〜3月辺りと仮定すれば、今のペースの円安はあと半年も続かず、日銀の介入と相まって1ドル160円辺りで一旦は天井となりそうだと思うのが私なりの見解である。

 もちろん、相場に絶対はないし、1ドル160円から先は上がらないと言う素人の戯言を鵜呑みにして、FXでフルレバショートを咬ましたら焼かれたと文句を言われても責任は取れないから、少なくとも私は上記を見越して金融市場で取引しているという、ひとつの意見として参考程度に留めて頂き、取引はくれぐれも自己責任で行っていただきたい。


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