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最近の金融市場動向(2022年9月)

為替介入も効果は今ひとつ。

 先月137円だったドル円の相場は145円まで下落。日銀が1ドル145円を節目に為替介入を行なっているものの、効果は限定的と見られる動きが続いている。

 リーマンショックの頃に買っていたドルを利確して、財源に充てる側面もあるため、全てが無駄と言うつもりはないが、何事も急激に変動するのが良くないため、円安が多少抑えられているだけでも良しとすべきだろう。

 為替介入によってこれまでのペースなら来月には150円台も視野に入ったレートが、145円で抵抗するだけでも、輸出入を行う企業にとっては近い将来の見通しが立てやすくなるだろう。

 株式投資ではファンダメンタルを重視しているため、決算短信や会社四季報をよく読むが、想定レートが130円相当の企業が多い印象で、もし145円前後で推移するならば、輸出企業はプラスインパクトとなる可能性がある。

 しかし、現行の株価は既にそれを織り込んだ価格になっている場合、円高方向に触れると却ってマイナスに作用する可能性もあるため、神経質な相場であることは間違いないだろう。

 私のスタンスは、日本で生活する以上、日本円は必要であり、いくら円安で円がオワコンと嘆かれていても、余剰資金の全てを外貨建て資産にするのは、為替リスクを過度に背負う側面があることから、円と外貨を半々にするようにして、円安、円高のどちらに転んでも、大きく影響しないように心掛けている。

S&P500のジンクス覆る。

 S&P500指数が半値戻しを達成した後、統計上再び安値以上に下落した過去はないことから、底値をつけた6月からの半値戻しを達成した先月は、「半値戻しは全戻し」で楽観的な相場感であった。

 私のスタンスは、統計はあくまでも過去の話で、未来にも適用される保証などない。として、押し目買いなどはせず、ドルコスト平均法で毎月淡々と積み立てるのみだった。そして、ジンクス通りの全戻しとなる前に、再び底値を割った。

 先月の同記事で「何かの拍子にあっけなく下落しかねない状況」と記したが、世界的な利上げによる同時株安の影響(と思われる)で、本当にその通りになってしまった。

 今読み返すと「相場が好調な時ほど慎重になったほうが良い」の一文に重みを感じるかも知れないが、先月時点でこの一文を読んだ時に今と同じ重さで受け止められる人がどれ程居ただろうか。

 私は詐欺師や未来人の類と一緒にされたく無いため、未来が読めている訳ではなく、熱狂から一歩引いた視点で、物事を見た上で相場の期待値は感情ほど高くなく、地合いが悪くなることに備えた方が良いという思いを、淡々と記し、結果としてそれが偶然にも現実となっただけである。

 私の相場予想が当たるか外れるかなど、相場予想で食べている職業経済アナリストと大差ない打率ではないかと思う。アテにする類のものではない。あくまでも、同じ物事を違う角度で見ている人の意見を取り入れる程度に留めるのが、適切な距離感ではないだろうか。

 我々は今、疫病と戦争という、歴史の1ページに刻まれる時代の渦中におり、何が正解かは未来になってみないと分からない局面に直面しているのである。これまでの常識が通用しない可能性も視野に入れて投資判断を行わなければ、相場の波にのまれ、退場しかねない。

 某国の軍事侵攻が開始されてから数日後の記事で、「そろそろ米国株式がマイナスリターンの年が来てもおかしくない。」と記したが、2022年の第3四半期経過時点では、想定した展開となっているが、状況が状況であるため、3ヶ月後にどうなっているかは誰にも分からない。

首相「NISAの恒久化は必須」

 22日に行われた、ニューヨークの証券取引所の講演にて、当国首相がNISAを恒久化する意向を示したが、その日の株価は下落した。

 このことが要因とは思っていないが、とはいえ日本という国は30年以上もの間、経済成長が横ばいで、世界の投資家目線ではあまり投資妙味がないためか、アジア圏の会社を詰め合わせたインデックスファンドでは日本だけ除かれていたりする。

 我々日本人としては、日本が除かれたインデックスファンドと、日本企業を個別株で運用するように、組み合わせることでダブりなく投資できるが、海外投資家からすれば、純粋に日本という国は経済成長率の低さに加え、言語の壁が相まって投資妙味がないと判断されているものと思われ、少額非課税制度の拡充ごときで海外投資家の呼水になるとは思えないのが私見である。

 どちらかと言えば、NISAの導入は金融資産所得の増税(10%→20%)とセットで行われた経緯があるため、拡充することによって、非課税枠以外の金融資産課税を強化したいのが本音だろう。

 そのために、一般人が資産形成を行うのに使い切れるか怪しい程度の非課税枠を設けて、それを超過した分の金融資産を保有している人をお金持ちとみなし、25%なのか30%なのかは分からないが、増税して富裕層への金融所得課税強化と、大衆の老後資産形成の両立を果たそうとしているのだろう。

厚生年金で穴埋め。

 老後資産形成つながりで触れなければならないのは、老後生活の軸となる年金である。先日、日経新聞の一面で国民年金の赤字分の穴埋めに厚生年金を使う旨の記事が出て、SNS界隈でサラリーマンが激怒していた。

 因みに現役世代は、ほぼ全員が将来受け取れる厚生年金よりも、支払った保険料の方が多い払い損となる。ここでの支払う保険料は、会社が折半して支払っている分も当然含めている。

 人件費として労働者に分配される筈の対価が、保険料として納付されているからだ。しかし、厚生労働省はこれを無視して、個人が給与天引きされている保険料ベースで、支払った保険料よりも多くの年金が貰えると主張している。まさに「数字は嘘を付かないが、嘘つきは数字を使う」の典型である。

 良い人生を送るために必要な要素として、良い成績、良い大学、良い企業を思い浮かべる人は多いが、これは国にとって「都合の良い人」であり、女性が言う「良い人」が「どうでもいい人」なのと構図は変わらず、個人にとっての良い人生とは結び付かないだろう。

 他者に良いように利用されたくなければ、レールの上の人生から、いかに離れて過ごすかが重要となってくる。変化の激しい時代だからこそ、一度きりの人生を無難で安定に過ごして後悔しないか、今一度考え直す時期を迎えているのかも知れない。


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