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遺族厚生年金の男女差是正、ネガキャンが過ぎる


寡婦に優しく、寡夫には厳しい遺族年金

 遺族厚生年金の男女格差が、25年の制度改正で是正される。これまで会社員の配偶者が亡くなった際の遺族厚生年金の給付条件に関して、男女差があった。

 男性がサラリーマン、女性が専業主婦の場合の、現代では全体の1割しか存在しない標準世帯を前提とした制度の弊害とも言えるが、子なしで夫が亡くなった場合の妻は、30歳以上であれば一生涯遺族年金が貰える。

 しかし、30歳未満の場合、5年間の有期給付となる。これは子が居なければ自立や再婚も比較的容易であると想定しているからだ。

 一方で、子なしで妻が亡くなった場合の夫は、55歳以上でないと受け取れず、55歳未満に関しては、女性のような5年間の有期給付すらない。しかも、女性には40〜64歳(年金受給開始のつなぎ)まで、中高年寡婦加算たる制度もあるが、名称が”寡婦”となっているだけあって、”寡夫”は対象外となる。

 夫婦共働きが当たり前になっている現状を鑑みると、子なしで現役世代の夫が亡くなった時の公的保証は手厚いのに、妻が亡くなった時の公的保証は無いに等しいことから、社会から男は働くのが当然、専業主夫などあり得ないと暗に示されているようなもので、男女差別に他ならない。

 だからこそ、子が居なければ自立や再婚も比較的容易である現役世代の間は、男女一律で有期給付に是正し、中高年寡婦加算に関しても、段階的に廃止していく方向で検討している。 

そもそもの制度趣旨が子どもの生活保障

 しかしネット上では「子なし主婦を国民として扱わない岸田政権」とネガティブ・キャンペーンが行われている。そもそもこれまで子なし寡夫には、55歳以上でないと支給してこなかった意味で、子なし主夫には人権が無いに等しかったのだから、それらが改善されるのは紛れもなく「是正」だろう。

 普段は男女平等を謳い、女性の権利を主張するフェミニストが、女性の特権が脅かされる状況になると、ネガキャンをしては現状維持を望み、社会保障制度上の男性差別を容認しているのは、男女平等の思想から反すると思うが、いかがだろうか。

 そもそも、厚労省が公表している、遺族基礎年金の給付条件を見てもわかるように、子を抱えている配偶者や、自らの生計を維持することができない子に対し、生活の安定を図ることを目的としているわけで、制度趣旨が子どもの生活保障となっている。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001138911.pdf

 子が18歳となる年度(事実上の義務教育である高校卒業)まで、一家の大黒柱である保護者が亡くなった際に、自ら生計を立てられない子の生活が困窮しないよう、遺族基礎年金は寡婦だろうが、寡夫だろうが支給される。

 それに上乗せする形で、遺族厚生年金が存在するわけだが、これが専業主婦を前提とした制度な訳で、男女雇用機会均等法が浸透した現代となっては、子なしの場合の受給条件は、先述の通り天と地ほどの男女差があり、55歳未満の子のある配偶者の場合、妻は受給できるが、夫は受給できない。

 つまり、寡夫に関しては、最愛の妻を亡くしてもテメェ働け!で片付けられて来た状態から、5年間給付される形で是正される。

 寡婦に関しては、子どもが社会に出るまでシングルはキツいため、確かに遺族年金が必要だが、子なしや、子が巣立った後の、自分ひとりの生活費くらい、自力で稼げるでしょうに。という、男性なら「当然」とされているロジックに統一されるだけの話以上でも以下でもない。

 要するに残された子どもの生活保障が前提の遺族年金を利用した、悠々自適なシングルライフは許さねぇ。という年金財政を考えれば至極真っ当な是正措置であり、善良なサイレント・マジョリティたる私からすれば、ノイジー・マイノリティが何をギャーギャー喚き散らしているのか、ちょっと何言ってるか分かんない。

夫よりも妻に死亡保険を掛けるのが合理的な社会の行き着く先

 これでも一応、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(1級は受験資格がない…)の有資格者として、「男性は仕事、女性は家庭」が前提の社会保障制度と、夫婦共働きやDINKsが多数派となった現代とのギャップが、何を引き起こすか考えると、今のままの女尊男卑な遺族年金制度を保持すると、女性に多額の保険金を掛ける未来が到来すると推察する。

 保険大好き日本人の一般論では、一家の大黒柱である夫が、養育中にでも亡くなったら大変なことになるからと、夫にばかり多額の民間の生命保険を掛け、妻に関しては手薄である場合が多い。

 しかし、金融教育が浸透し、国民の金融リテラシーがFP2〜3級レベルまで底上げされると、夫が亡くなった場合に関しては、遺族年金や中高齢寡婦加算といった公的保障が充実している。

 そのため、世間のイメージとは逆で、夫の民間保険は月額3,000円もしない掛け捨ての死亡保険で十分となる。

 理屈としては、遺族基礎年金が打ち切りとなる、末子が18歳となる年度までの年金収入から、必要となる学費や生活費をライフシミュレーションで算出し、恐らく2,000万円にも満たない不足分だけを死亡保険金として受け取れる、少額の掛け捨て保険で十分補える算段となるからだ。

 裏を返すと、むしろ共働き世帯の場合、妻に多額の保険金を掛けなければ、手薄な寡夫の公的保障に対するリスクヘッジとして不十分となる。

 これが何を意味するか。安っぽい昼ドラの保険金殺人の首謀者は未亡人と相場が決まっているが、これからの時代は男女で逆パターンの事件が起きても不思議ではないということだ。

 公的保障に男女差があることで、公的保障の手薄さを口実にすれば、女性には高額な死亡保険を掛けても何ら不自然に映らないことから、その分、保険金殺人の標的として狙われやすくなる可能性は否めない。

 そもそも保険が不幸の宝くじと言われる所以でもあるように、自分が死亡する可能性に賭けて、多額の保険金を支払う行為など、決して良い気分にはならないだろう。

 若者が食えない社会となった結果、無敵の人事件や強盗殺人が顕在化しつつある昨今である。女性ばかりが優遇される遺族年金制度の歪みによって、「こいつを殺人とバレないように殺したら、ワンチャン儲かるかも」と標的にされるリスクを考えたら、身の安全のためにも是正されて然るべきだと考えるが、いかがだろうか。


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