見出し画像

欲深いと相場の波に飲まれる。

流行りの投資は嫌いですか?

 最近、海運銘柄や某リチウム電池用セパレータ企業の株価や、半値戻しは全戻しの格言もある天下のS&P500指数などが軒並み急落しており、個人投資家のSNS界隈が荒れている印象がある。資産運用に限らず、私は流行りに乗っかるのがあまり好きではなく、自分のペースで物事を進めていきたい性分なため、この手の熱狂とは距離を置く傾向がある。

 2021年5月に読んだ「コンテナ物語」に感化されて海運銘柄に目をつけていたものの、高値圏と判断して保有を見送ったところ、3ヶ月後に日本郵船(9101)の大幅増配発表で急騰。見事に乗船し損ねたため、拗ねて今に至るまで一切触れていない。

 思い返せば2019年頃からのGAFAを始めとするグロース株優位な時も、バリュー株投資を貫き上層相場で置いて行かれた気がしたが、ITメガテックの期待が膨らみすぎた反動が今になって来ているだけであり、結果としてバリュー株の潜在価値が見直されているのだから、長期目線では流行りに乗らなくても景気循環で手堅く実利は得られると感じている。

 周囲が海運銘柄や某リチウム電池用セパレータ企業で盛り上がる中、期待が膨らみ過ぎではないか。割高な株価水準ではないだろうか。一歩引いて財務分析を行ない、今からでは投資妙味はないと判断して、この手の熱狂には触れないで日常を過ごしている自分がいる。

 それは、資産形成を目的に資産運用を行なっておきながら、恐らく大きく儲けてやろうと言った欲が欠如している影響だと推察している。仮に退場する際の確定損益はトントンだとしても、今まで優待や配当を消化してきた分は確実にプラスで、おまけに経済の知識や投資経験は残るのだから損はしていない。それくらいなら上出来と考えているから、個別の些細な含み損はいちいち気にしていない。

無欲さは資産運用の才能か。

 結果として、取るに足らない20代単身者でありながら、同世代の友人には驚愕される程度の金融資産を有する運びとなったが、資産の8割相当は愚直に積み上げた投資元本で、運用年数が10年に満たない要素もあるが、トレードで爆発的に儲けていない手堅さに余計驚かれる。

 やはり、工業高校卒で年収レンジも平均的、ボンボン育ちな訳でも、遺産相続があった訳でもないのに桁違いの資産を有していれば、何か卑しいことでもして儲けたと勘繰られるのは世の常である。

 蓄財するのに取れる手段は、収入を増やすか、支出を減らすか、運用利回りを高めるかの3要素しかないのだから、高学歴エリートで収入を増やせる訳もなく、投資初心者で運用利回りはインデックスファンドが天井だとすれば、生活コストの無駄を徹底的に省く以外の余地は残されていない。

 現在の大量生産大量消費社会とは逆行する、極力お金を使わないで生活するのをゲーム感覚で行い、捻出した毎月十数万円の投資元本を、ゲーム内の通貨感覚で証券口座で運用しているだけだから、1%の変動で十万円単位で変動しても、自分の月給何ヶ月分の増減などと一喜一憂することもなくなった。

 ギラギラしていないから熱くならず冷静に、それでいて淡々とウォッチしている銘柄の売買タイミングを見計らっているから、欲しいと思っても何ヶ月でも何年でも、希望する価格となる時期が来るまで待つし、権利落ちで下落幅が大きければ、半年~1年後の配当や優待狙いで進んで指値で買い注文を出して気長に待つ。

 亡くなった曽祖母から意地汚い下の兄弟との対比として、私は意地のきれいな子と言われていたらしい。物心付く前の話なので実感が湧かないが、どうやら私の無欲さは生まれつきで、天性の無欲さから情欲に溺れないことが幸いして、チャイナショック、暗号資産のネム流出事件、疫病、戦争の煽りを受けても、決して相場から退場することなく、まぁそんなこともあるさ。と嵐が過ぎ去るのを、落ちるナイフを拾いながら待って今に至ると思うと感慨深いものがある。

生涯投資家に必要な要素。

 大事なことなので何度でも記すが、投資をする上で最も重要なのは、相場から退場することなく、アインシュタイン博士が人類最大級の発明と評した複利の恩恵を受け続けて、歳を追うごとに指数関数的に運用資産額を増加させる点に尽きる。

 投資の神様の名を持つウォーレン・バフェットさんの現有資産の95%以上が、60代半ば以降に築かれたものだと言うことからも、複利の絶大さが窺える。

 世の中には、一瞬にして巨万の富を築く者が一定の割合で出現するが、それを見て短期間に急いでお金持ちになろうとするのは考えものである。リスクとリターンは表裏一体の関係にあり、短期間で大きなリターンを叩き出すと言うことは、相応のリスクを負っていることに他ならない。

 レバレッジを掛ければ資金効率が良くなり、若いうちに大金持ちとなれる夢はあるものの、「買いは家まで、売りは命まで」の格言がある世界で、多くの屍によって極少数の勝者が生まれているのもまた事実である。

 それに短期的に大金持ちになった場合、お金の器が十分な大きさになっていない場合がある。そうなると、多くの宝くじの高額当選者が迎えるような末路になりかねない。

 欲深いといつか相場の波に飲まれて退場する事態になりかねない。欲すら湧かない規模の運用から始めて徐々に大きくしていくのが、生涯投資家に必要な要素なのかも知れない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?