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年の瀬の大掃除を断捨離して早数年。


そもそも散らかせるだけのモノがない。

 世間は大掃除シーズンか。ゴミ出しの際に袋の量がいつもより多くなり始めて年の瀬を実感するが、自分自身、最後に年末の大掃除を行ったのはいつだろうかと自問自答するも、忘却の彼方にあり思い出せない。

 別に汚部屋やゴミ屋敷の住人ではなく、むしろ、いわゆるミニマリストのそれに近いが、公言している意識高い系インフルエンサーの胡散臭さの印象が先行して、あまり好きな表現ではないため、進んで公言することは決してない。

 因みにどれだけ所有物が少ないかと問われれば、引越しの際に単身者パックすら使わずに、宅急便5口で済ませた程度だ。無論、子供部屋はもぬけの殻で私物は置いていないが、兄弟が空いているのをいいことに貸し倉庫の如く侵食したため、既に実家に帰ったところで私物を置く空間などなく、事実上のシャットアウトである。

 そんな一般的な価値尺度に照らし合わせると、所有物が少ない部類の私だが、別に断捨離狂ではないため、他者にその価値観を強要するつもりはない。

 あくまでも、私は終の住処はどこが良いかを判断するための引き出しを増やしたい観点から、全国各地で暮らしてみたい欲求があるため、定住の快適さより、転居の身軽さを優先した結果、他人よりも持ち物が少ないだけであり、断捨離は目的を果たすためのいち手段に過ぎない。

 賃貸物件は更新料を取られるくらいなら転居する派で、平均2年スパンで引っ越す傾向から、引越しで処分する程度のモノは、あったら便利かもしれないが、本質的にはなくても困らない程度のモノと捉えられる。

 2年以内に処分する可能性が高いにも関わらず、定住する前提で家財道具一式を買い揃えたら無駄が多い。身軽さを重視して所有物を選定すると、そもそもの必要性を感じないモノが多く、必然的に持ち物が少なくなる。結果として散らかせるだけのモノがない状態が継続して、年の瀬の大掃除をする必要がなくなる。

投資で育んだ未来志向が、整理整頓の鍵。

 そんな私だが、元来もったいない病の重篤患者であり、不要なものを取り除く「整理」ができなければ、片付けが大の苦手で「整頓」も儘ならない側のダメ人間で、投資の世界に足を踏み入れなければ、今頃ゴミ屋敷予備軍だったのだろうとつくづく思う。

 日本では今でも投資に対するイメージが、人によってはあまり良くなかったりもするが、煎じ詰めれば、今よりも未来が良くなることに賭けて、何かしらのリソースを投じる行為全般が「投資」だと私は考えている。

 つまり、投資は「未来志向」が前提の考え方とも捉えられる。一見すると整理整頓とは無関係のようにも思えるが、未来志向の行き着く先は、人間の宿命である死そのもの。人生の最期をどんな形で迎えたいかを思い描くことで、今、何を整理するべきかの迷いがなくなる。

 大袈裟に思えるかもしれないが、私は20代半ばで死亡確率40%〜70%の大病を患い、命こそつながったものの、その代償として内臓をひとつ失った。

 身に覚えのない発作で、死が目の前に迫ってくる鮮烈な体験をしたことで、人はいつ死ぬか分からず、若年層も決して例外ではないことを痛感してから、死後に手続きが必要なものをリストアップして、親族がデバイスを開錠できる手段も用意している。

 いざリストアップしてみると、賃貸、水道光熱、通信、保険、サブスクなどの契約。銀行口座、証券口座、クレカ、マイナンバー、保険証、年金、運転免許証等々、往々にして数の多さに驚くし、死後、誰かに片付けさせるのも気が引ける。

 生活インフラの契約は仕方ないにしても、使っていないサブスクや銀行・証券口座、クレカは解約できるな。と何を整理するべきかの迷いがなくなり、行動に移せれば、立派に未来志向が身についた証拠だ。

複利効果を知ると、浪費しない。

 投資におけるもうひとつの副産物が、複利効果を知ることで、将来価値と現在価値の関係が肌感覚で分かるようになり、浪費をしなくなることだろう。

 複利効果で「72の法則」は有名だが、例えば米国株式の期待リターンを年率7.2%と仮定した場合、運用して10年で元本が倍増する計算となる。

 つまり、20歳で100万円を運用すると、30歳で200万円、40歳で400万円、50歳で800万円、60歳で1,600万円、70歳で3,200万円、80歳で6,400万円、90歳で1億2,800万円に成長することが期待できる。

 もちろん、過去10年のリターンがこれからも得られ続ける保証などないが、期待値通り推移するならば、20歳で100万円か、30歳で200万円の種銭を捻出して、それを適切に運用さえできれば、老後資金問題は解決する。

 複利運用する前提だと、余命が長い時のお金は、将来ものすごい価値になる可能性を秘めているわけで、複利の凄まじさが分かっている人ほど、それを捨ててまで買うだけの価値のあるモノが、そう多くない事実に気づく。故に浪費をしなくなる。

 未来志向による生前整理と、複利を意識した質素倹約な生活スタイルが掛け合わさることにより、お金持ちの家はモノが少なく、広くてスッキリしている構図が成立する。そうなる頃には、年の瀬の大掃除そのものが断捨離できていることだろう。


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