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最近の金融経済動向(2024年2月)


実質賃金2年連続減。ただし群馬、大分除く。

 実質賃金とは名目値(額面)からインフレ率を差し引いた値である。例えるなら、これまで時給1,000円だった人が1,050円に(名目値5%)アップしても、今まで1,000円で食べられた定食が、物価高で1,100円に値上げ(インフレ率10%)されてしまったら、実質的に5%マイナスとなるため、同じ1時間働いても、定食が食べられなくなってしまう状態となる。

 つまり現在の日本社会は、2年連続で平均的な賃上げよりも、平均的な物価上昇率の方が上回り、実質的な買えるモノの総量は減っている状態となっている。

 「平均的な」賃上げ・物価上昇というのがポイントであり、平均年収が一部の高収入エリートによって釣り上げられている数値となり、実態と乖離するように、平均を釣り上げているのは大企業であり、賃上げの恩恵を受けている人は就業者全体のおよそ3割に過ぎない。

 そして物価上昇率を釣り上げているのは、生活必需品に偏っており、お金がある時に手を出すような趣向品はそこまで値上がりしていない。

 つまり大多数の就業者は、平均ほど賃金が上がっていない。それにも関わらず、家計に余裕がない一般的な世帯ほど、出費の割合が高くなる生活必需品が平均以上に値上がりしており、手元に残って自由に使えるお金である、可処分所得は年々減っているのが現実で、庶民の生活は苦しくなる一方だろう。

 だからこそ、マネーリテラシーを身につけ、運用によって賃金を資産所得補う必要性が出ている訳で、新NISAは国策だから裏がある的な、陰謀論者のロジックでやらない理由探しをするのは正直見苦しい。

 我々の年金だってGPIFが株式や債券で運用している時代である。インフレしている以上、金利がほぼゼロの円預金のままでは、物価高に対応できない以上、余剰資金は価値が保全できる資産に変えておくのがインフレ社会の定石である。

 ちなみに、群馬県と大分県が例外なのは、中小企業への補助金と、コ○トコなどの外資系企業が、時給1,500円みたいな国際基準の賃金で雇っていることにより、賃金がインフレ負けしていないだけで、自力で地域経済を活性化させた結果ではない点は留意すべきだろう。

日経平均株価、史上最高値更新。

 2/22、日経平均株価はバブル期に付けた最高値の38,915円87銭を、34年ぶりに上回った。

 私もそんな歴史的瞬間にネット証券のトレード画面経由で立ち会ったが、そもそも34年前に生まれてすらいないため、頭では歴史的瞬間だと理解していても、実感が得られないどころか、むしろ隙あれば最高値更新しているイメージがあるNYダウやS&P 500と違い、34年間も更新しなかった辺りに、失われた30年の根深さを感じてしまう。

 とはいえ、日経平均株価の上昇を主導しているのは海外投資家であり、円安で対外的に割安で買われていることには留意する必要がある。国の景気判断は下方修正であり、実体経済に伴っているか問われると、微妙な部分がある。

 バブル期のレート(144円/ドル)で換算すると270ドルほどであるが、2/22終値時点でのドル建て日経平均は260ドルほどである。因みに2021年2月に290ドルを付けているため、ドル建てでは3年前の高値を超えていない。

 為替レートが150円/ドルで推移する前提なら、日経平均は単純計算で43,500円位の水準が、ドル建てでの最高値更新となる。

 そのため、日本人の1/4程度しか居ない投資人口の中でも、市場関係者や投資に熱狂的な1割程度が盛り上がっているだけであり、日本人全体で見たら2〜3%程度が騒いでいるに過ぎないと心得て、過熱感が伴っていないか、冷静な判断をしながら向き合うべきだろう。

非上場株、投信に15%まで組み入れ可能に。

 しばしば「貯蓄から投資へ」の謳い文句とセットで、株式市場が活性化すると、企業にお金がまわり始め、経済が好転して自分たちの暮らしも豊かになる的な説明が常套句となっている。

 しかし、取引されている上場株のほとんどが、板取引で買いたい人と売りたい人をマッチングしているだけであり、企業が直接出資者を募っているケースは稀だ。

 つまり、悪く言えば転売ヤーの原理で株式市場が動いているだけで、それが活性化したところで、企業が資金調達するための買い手がすぐに見つかり、事業投資しやすくなるとは限らない。

 会社そのものにネームバリューがあれば、IPO抽選会のように買い手が集まるが、非上場株となると中々そうはいかない側面があり、株式投資でメシを食ってるファンドが、15%を上限に組み入れられるようになったのは、スタートアップ企業にとっては助かるケースも出てくるかもしれない。

 その反面、市場に流通していない株式故に、タイムリーな話題に付け込む巧妙な詐欺が増える懸念があるため、自己防衛のために投資案件が来た際は、NISA成長投資枠の対象商品リストに載っているかを確認して頂きたい。

 営業マンが「載っているのは一部」とか、「新しいファンドで反映されていない」とか言って来たら黒か、限りなく黒に近いボッタクリの可能性が高い。


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