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厚遇すべきは株主?それともお得意様?


7453 良品計画 株主優待拡充も…

https://ssl4.eir-parts.net/doc/7453/tdnet/2446314/00.pdf

 はじめに、当記事で紹介する銘柄は推奨ではなく、投資は自己責任である旨をご理解いただければと思う。

 5/22、株式会社良品計画が株主優待で贈呈しているシェアホルダーカードの割引率を、24年8月権利分から5%→7%に拡充する旨を公表した。

 とはいえ、無印良品の会員(登録・年会費ともに無料)であれば、無印良品週間に全品10%オフとなるため、株主優待は時期を問わず使えるメリットがあるとはいえ、従来の5%は些か渋い割引率と評価せざるを得なかった。

 というのも、私は株式会社良品計画の株主兼、無印良品のメンバー兼、ポイント目当てでMUJI Cardまで発行していた時期もあった。しかし、専ら付与されるポイント消化のために、年4回程度しか利用しない身でありながら、偶然にも購入時期が無印良品週間に重なったことがある。

 予想通りの結末かと思われるが、普段通りシェアホルダーカードを提示したところ、割引は重複適用できないので、割引率の高いメンバーの10%を適用させていただくと案内され、株主優待を使わない方が得する事態が発生して、別に会員なら株主である必要なくね?と内心思った。

 そうして、ポジションを解消した矢先に、今回の優待拡充と来たものの、結局のところ、無印良品週間になれば5%引きの時と、全く同じ事態が生じるため、優待拡充のプレス発表でありながら、相場ではさほど好感されていない値動きのように感じた。

イオンラウンジも同じ構図だったような…

 今から5年前、8267 イオンの株主総会で、イオンラウンジの混雑状況に物申した株主に対して、社長が「株主のためのものか、お得意様のためのものか、どちらかにせざるをえない」と明言し、その後はコロナ禍で、ラウンジそのものが運営できない状況となり、顛末を知れるのは2023年になってからとなった。

 元を辿れば、株主のためのイオンラウンジだったが、ある時を境にゴールドカード保持者まで広げたことで、混雑に拍車を掛けた側面が否めなかったことから、イオンカードで年間100万円以上利用する、「超」が付くお得意様に制限。

 株主に関しても、月曜から夜ふかしの功罪もあって、優待投資が一般化したことで、株主数がとんでもなく増えた側面もあったため、ラウンジ利用は予約制、利用回数、利用時間に制限が加えられる形で決着がついた。

 私は現在、イオンすら存在しない地方に居住しているため、日常生活を営む上で、いわゆるステークホルダーではない位置にいるため、割合中立的な視点に立っていると思うが、イオンラウンジに関しては、株主のためのものという色合いが強いため、どちらのためのラウンジなのか、一応の決着が着いたと捉えている。

 上記を踏まえた上で、再度、7453 良品計画の拡充された株主優待(常時7%オフ)と、無印良品メンバー(期間限定10%オフ)、MUJI Card会員(有効期限付き500pを年2〜3回付与)を比べてみると、この会社が株主の方を向いているのか、お得意様の方を向いているのか、答えは出ているように思う。

資本主義の枠組みで、応援したい企業を探す矛盾

 一節の最後に「ポジションを解消した」と記している通り、既に株主ではないため後の祭り感が強いが、これでも一応、西友のPB時代の名残が強かった頃からの生き証人として、良品をノーブランド故に安価に売るポリシーがブレて、無印そのものがブランド化している現状に危機感を持ち、株主として然るべき意見は出して来たつもりだった。

 しかし、株主優待のあり方ひとつ取っても、誰の方を向いて経営しているのかが明白であり、これ以上は無駄骨だと察して、株主として原理主義の方向に修正することそのものを諦め、カード会員として付与されるポイントでフリーライダーに徹することを選んだ。

 株主よりも、カード会員の方が得をする構造上、同じことを考える人間が増えれば、売上高は稼げても利益には貢献しないのだから、株式の売却を判断するのは自明の理だろう。

 カネにならない消費者として、狡賢くただ乗りする道を選んだ方が得だと、一介の株主に思わせてしまったことが、結果として、その会社の製品に愛着を持ち、応援する気持ちで株主となった初心を蔑ろにしている訳で、この失望という名のマイナスを挽回するのはかなり難しい。

 上場会社は利益を追求しなければならない、資本主義の命題から逃れられない構造上、取り扱う商品は、いかに安い原価で、付加価値を提供し、高く売るかに集約されてしまう宿命にある。

 個人的に最近は専ら、非上場会社の製品が趣向に刺さる傾向があり、煎じ詰めれば採算を第一に優先していない点に尽きる。

 株式市場の世界に身を置いているからこそ、自分が買うものくらい、やれ製品ひとつあたりの原価と販売管理費がいくらで、利益率がこれくらいだと考えずに済むような、資本主義から隔絶されたものを欲するのだろう。

 そう考えると、そもそも上場会社という名の、資本主義の枠組みの中から、自分自身が応援したいと思うような企業を探すことに、矛盾があるのではないかと思ってしまった。

 この仮説はn=1の域を出ないが、確かに私が応援したい気持ちで保有した銘柄ほど、悉く失望売りに至っているような気がするため、経営陣は株主を冷遇したことにより、見込み客をも失うリスクと天秤に掛けた上で、株主のための会社か、お得意様のための会社かの舵取りを行わなければ、隠れたリスクを見落としているかも知れない。


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