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大卒よりも工業高卒が引く手数多らしいが


社会全体が現業職を蔑ろにしたツケで人手不足

 大学全入時代、高学歴社会となったことで、ブルーカラーの志望者が減少。少子化でそもそもの新卒者数も減少傾向であることが相まって、いわゆるブルーカラーを代表とする現業職で、人材獲得のために熾烈な競争が繰り広げられており、工業高校生が脚光を浴びている。

 マスメディアの刷り込みもあってか、工業高校=不良の巣窟的な、ガラの悪い印象が先行していることや、高い偏差値を必要としないことから、学の高い人ほど敬遠する傾向にあると感じる。

 しかし、かつての私のように、経済的に恵まれない家庭で育ち、奨学金という名の教育ローンを組んでまで、無名の私立大学を出て、借金を背負って社会に出るくらいなら、高卒無借金で社会に出る方が得策と考え、手に職をつけられる工業高校が理に適っていると、中学生の段階で決断して進学する者も一定数居ることは、一般に広く知られた方が良いように思う。

 確かに、学力偏差値という尺度では決して高くないかも知れないが、それは主たる学習内容が実学故に、入学時に必ずしも高度な知識を必要としていないからであって、入試で名前書けば入れる位に考えていると、工業実習やレポートでついて行けなくなって詰む。

 私の経験のため、n=1の域を出ないが、退学したクラスメイトの数も、3年間で片手では数え切れない。

 一般論として、中小企業から景気の如何に関わらず、毎年コンスタントに数名の求人枠が来ては、基本的に推薦枠がそのまま内定者数に直結するような、地元の中小企業と強固なパイプのある工業高校の場合、定評という名の期待に応えなければならないため、真剣にカリキュラムをこなさないと卒業できない。

 特に家庭環境を鑑みて、高卒で社会に出る覚悟を決めて入学している意識高い系は、大手企業の推薦枠を勝ち取るための内申点稼ぎで、5段階評価オール4以上はもとより、部活動(部長)、皆勤賞(3年)、長期休暇には資格取得(溶接各種、電気工事士等)と、優等生感を演出するのに躍起だった。(カッコ内は私の実績)

 上記のような、最終学歴となるのに殆ど遊んでいない工業高卒と、取り敢えず借金して進学し、人生の夏休みを謳歌していた大卒とで、企業の採用担当者が比べた際、どちらの人材が魅力的に映るかは、読者のご想像にお任せする。

 ただ、日本社会全体で、ブルーカラーをはじめとする現業職、現場仕事の従事者を蔑ろにし過ぎたツケが、昨今の人手不足を引き起こしており、安くて高品質な社会インフラの維持に綻びが生じた結果、建設会社の工期や物流の遅延、交通機関の減便と、我々の生活に跳ね返っているのは紛れもない事実である。

 誰かの言葉を借りると、「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ。」兎にも角にも、猫の手も借りたいレベルで、現場に人が居ない以上、下級ホワイトカラーよりも、機械で代替不能なブルーカラーの方が厚遇されるのは必然と言えるだろう。

身体が壊れた際の、身の振り方を考えておく

 現役の中学生や工業高校生が、私のnoteを見るとは思えないが、もし私のように高卒無借金で社会に出る覚悟を決めて、手に職をつけるべく工業高校を選ぶ(選んだ)のであれば、是非ともこの追い風を活かして、現場の最前線で、日本社会を長く支えていただきたい。

 それと同時に、かつてこの道を辿り、身体を壊して無事死亡した者の老婆心として、自身の経験に基づく、大卒と比べた際のリスクを列挙する。

・薄給、激務といった、総じて不利な雇用条件となりやすく、身体が資本のブルーカラーに勤める以上、身体を壊す=詰みを意味し、非正規雇用や失業するリスクも大卒ホワイトカラーと比べて高いうえに、現業職故にテレワークやフレックスのような、自由な働き方はまず選べない。

・鉄道で自動改札機が導入されたことで、切符に切れ込みを入れる係員が居なくなったように、社会環境の変化で真っ先に不利益を被る。(外国人技能実習制度によって不利な雇用条件のまま放置されたり、採用や設備などで女性枠を設けたことにより、男性の採用枠や現場の更衣室・休憩室が削減される等。)

・転職や失業、病気などでホワイトカラーへの転向を試みると、募集要項は大卒以上ばかりで、職業の選択肢が極端に狭まる。また、現業職故に単純作業に就くことが多く、スキルが溜まらなかったり、個人で実績を上げづらいことから、職務経歴に空白期間がなくとも、即戦力が求められる中途採用での評価は低いのが現状。

・逃げ道が自殺か、体売るか、媚びてパパ活するかの3択な女の子と違い、自殺以外で社会に逃げ場がない。(最近になって、弱者男性が認知されているが、かと言ってシルバー人材センターのような、公的な就労支援もなければ、シェルターも女性前提でセーフティネットも皆無。専業主夫は言わずもがな。)

 上記のリスクを鑑みて、身体が壊れた際の、身の振り方まで考えた上で、進路を決めることをお勧めする。


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