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歴史を学び直したいあなたへ、歴史の本を浅く深く紹介します

現在、社会人の研究日誌では、本の書評と博物館の感想記を掲載しています。これらの記事を読むことで、

①歴史学で研究されている意外なテーマを知ることができます

②歴史の知識を広げることで、自分の新しい興味関心に気づくことができます

③今まで知らなかった歴史的知識を身につけることができます

 実際、歴史学の学び直しを提供する意図で作成している記事のいいね数は多い傾向にあります。みなさんは

①歴史の学び直しができる

②飲み会でウケる雑談を見つけることができる

というメリットがあると私は考えています。

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 みなさん、はじめまして。私は大学院で歴史学を研究し、現在は社会人として働いています。現在でも趣味程度に専門書を読んでおり、平凡な毎日を過ごしています。しかし、歴史を専門的に研究したがゆえに、世間とのギャップを感じることがあります。それは「歴史の学び直し」というキーワードへの違和感です。

 確かに、大人の学び直しとして歴史学が注目されることは大変喜ばしいことです。実際、私よりも知名度があり、人生経験の長い方々が「歴史の学び直し」を私たちに提唱しています。しかし、そこで紹介されている本は、日本史、あるいは世界史の通史や大学受験で愛用されている参考書であることが多いです。

 私はここに違和感を感じています。その違和感とは、大人の学び直しとして勉強しなおす歴史は「通史」でよいのかという問いです。

 私の指し示す「通史」とは、ある地域の過去の出来事を年号順に整理し、何らかの因果関係を説明した上で、その整理したものをすべて掲載する歴史を指します。

 何らかの因果関係を説明した上でというのは、ある事件Xがあったら、その事件は別の出来事A、別の出来事B、別の出来事Cなどが原因となって、ある事件Xが起きたと説明することです。もちろん、別の出来事Aは、さらなる別の原因A’、さらなる別の原因B’、さらなる別の原因C’などが原因で起きています。このような連鎖を因果関係として捉えて説明することを図解すると以下のような図1になります。

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(図1)因果関係の模式図:出来事Xが起きた時間のことを現在としている。大きな矢印は原因と結果の関係を表す。実際はもっと複雑な影響を受けて、ある事件が起こる。

 このような出来事を古代から現代まで、または中世のみ、近世のみといった形で取り上げたものが通史です。通史はある地域がどのような歴史を歩んできたのかを大まかに確認することができます。

 しかし、通史だけで歴史を研究することはできません。なぜなら、すべての通史を勉強しようとすると、古代から現代まで勉強するのに膨大な本を読むことになるからです。実際、日本史において、古代から現代までを取り扱った通史の本は全20巻以上を超えるものもあります。つまり、通史は分量が非常に多いのです。そのような分厚い知の蓄積を1冊にまとめることができるでしょうか。

 私は学部生のとき、恥ずかしながら、過去から現代までの通史の本を書きたいと思っていました。しかし、歴史の勉強をすればするほど、それは非常に難しい作業であることに気が付きました。1つの事件を論じようとするだけで1冊書けてしまうのです。いや、事件によっては1冊ではとても足りません。

 私は通史を勉強することが悪いと思っていません。その分野の基礎を知るために通史を学ぶことは、避けては通れません。しかし、通史を知ることは大きな労力が伴うことが現実です。つまり、古代から現代まで幅広く知ろうとしたら、膨大な本を読まなければなりません。そして、その膨大な分量を減らした本を読んだとしても、その分の説明が省略されてしまうので、わかりにくくなってしまいます。

 それでは、歴史を学び直すのに適している本は何でしょうか。それは、読みやすい専門的な本を浅く深く読むことです。

 読みやすい専門的な本とは、新書、リブレット、選書などの本を指します。場合によっては、学部1年〜2年生が読むべき入門書も該当します。なぜ、このような本が学び直しに適しているのでしょうか。その理由は2つ挙げられます。

 1つ目は、面白そうなテーマの本から歴史を学ぶことができるからです。例えば、私が現在企画している「食と歴史学」というテーマがここにあたります。私たちに身近な「食」から歴史学を眺めたらどのような発見があるのかを紹介しています。また、もちろん食以外の面白いテーマも紹介しています。

 2つ目は専門家がわかりやすく書いているからです。私が言うまでもありませんが、新書やリブレットなどを書く歴史家の方々はその道のプロです。研究者として博士号を取得し、数々の華々しい業績を獲得している優秀な先生方がこれらの本を書いています。また、専門家向けに書いている本とは性格が異なり、新書やリブレットは専門知識がない人を想定して書いています。学び直しとして最初に読むべき本であるといえるでしょう。

 私はこれらの読みやすい専門的な本を紹介する手助けをしています。その専門的な本とは、通史とは違った、歴史に関するあるテーマの本です。例えば、私の紹介した本をきっかけに、とある人物に関する本を数冊読んだり、砂糖に関する本を数冊読んだり...私が紹介した本をきっかけに、歴史のあるテーマを深く掘り下げてほしいです。

 今現在、本の書評と博物館の感想記を10日に1回程度の頻度で更新しています。私のnoteを読むことで、歴史の学び直しのきっかけとなる書籍を知ることができます。また、書評や博物館の感想から知識を広げることも可能です。お役に立つことができれば幸いです。

よくある質問

Q1:紹介している本の基準は何ですか?

A:私が面白そうなテーマだと思った本であり、なおかつその本の内容をすべて読んだ場合に限り紹介しています。したがって、私が読んでいないが、面白そうだから紹介したという本は1冊もありません。もちろん、面白そうだと思って買った本ですが、面白くなかった本はボツにしています。

Q2:記事の更新頻度はどれくらいですか?

A:10日に1回を目安に更新しています。しかし、実際は仕事の関係があるので、更新頻度は安定していません。記事の更新はTwitterでも発信しているので、関心がある方はそちらもご確認ください。

Q3:歴史学以外の本は紹介しないのですか?

A:現時点ではあまり検討していません。しかし、歴史学を研究する上で、別の学問を勉強する必要があるので、私も哲学や社会学、政治学などの本を読んでいます。私が読んだ本で面白い本があれば、そのうち紹介していきたいと思います。

Q4:収益はあるのですか?

A:当初は有料noteで収益を得ようと思いましたが、私の考える学び直しの意図と親和性がなかったので、辞めました。現在はみなさまがサポートになっていただくことで、収益を得る形となっております。いただいたサポートは、当面の間、今後noteで紹介する本を購入する費用に当てます。

Q5:直接連絡を取りたい場合、どうすればいいのでしょうか?

A:現在、私の連絡先を公表する予定はありません。もし何かありましたら、noteのコメントまたTwitterでメッセージをいただけると幸いです。

Q6:新書の内容が難しいです。

A:新書の内容が難しいときは、私にもあります。読むのが嫌になりますよね。その場合は、その節を読み飛ばすことをオススメします。その内容を理解できない理由は、知識が足りない、読み慣れていない、そもそも文章がわかりにくいなどといった要因が考えられます。同じテーマの本を深く読み進めれば、そのうち理解できると思いますので、焦らず読み飛ばしましょう。私はある本の1頁だけでも理解したら、十分だと考えています。そもそも学び直しという難しいハードルに挑戦しているだけでも素晴らしいものです。継続は力なりです。同じテーマを浅く深く掘り進めて行けば、確実にその箇所を読むことができるようになります。お互いがんばりましょう。

最後に一言

何かを学び直すことは一筋縄ではいきません。それなりの数の本を読む必要がありますし、時間もかかります。しかし、まずは3ヶ月学び直しを続けてみてください。世界の見え方が少し変わります。半年続けたら、その分野をもっと学びたくなります。1年続けたら、それは学び直しではなく、確固たる知識に変容します。その確固たる知識から何が生まれるのか。歴史学の醍醐味の1つはそこにあると思います。

参考文献

福井憲彦(2006)「歴史学入門」岩波書店

小林通憲(2013)「歴史哲学への招待:生命パラダイムから考える」ミネルヴァ書房

長谷川貴彦(2016)「現代歴史学への展望:言語論的展開を超えて」岩波書店

※今回挙げた参考文献は専門的な本です。福井先生の本は学び直しの本として、よいかもしれませんが、残る2冊は学び直しの本とはいえません。参考までにしていただけると幸いです。


いただいたサポートで、今後紹介する本を購入していきます。歴史学の視座をより多くの人たちに広めるために、ご協力いただけると幸いです。