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歴史を学び直したいあなたへ−食と歴史学−

 昨今、様々な歴史に関する本が出版されています。専門家しか読まないような学術書をはじめ、歴史学の初学者が読むような入門書、社会人が趣味・教養として読む歴史の本、史実に基づきながら想像力を駆使して書き上げた歴史小説...

 書店に行けば、数多くの歴史に関する本が並んでいます。しかし、歴史学に興味を抱いている人々は、星の数ほど出版されている歴史書の中から本を選ばなければなりません。それは、小学校・中学校・高校で歴史が得意だった人も同じだと思います。歴史が好きなことと専門書を見抜く眼は異なるものです。

 歴史学は「史料」に基づいて、研究を進めます。この史料は様々なものを指します。公文書や雑誌、個人の日記、手紙、図画像、写真、映像、録音テープ、オーラルなど...ここにはない意外なものが史料になりうるときもあります。

 私の問題意識は以下の通りです。歴史学を学びたい。それは「教養を身に着けたい」「あの頃好きだった歴史をもう一度学び直したい」「とりあえず歴史の本を読み漁りたい」などという動機からくるものです。しかし、先に述べたように、歴史に関する本は膨大に存在します。こうして、何から手を付けていいかわからず、または歴史の本を読み始めたものの途中で挫折してしまう人がいるかもしれません。このような動機を持つ人々には歴史学の醍醐味である「史料」を読む面白さを味わってほしい。少なくとも私はそう考えています。

 「史料」を読む面白さを感じることができる質の高い本を読むことと歴史を学び続けるモチベーションを維持すること。この2つの理想を同時に叶えてくれるテーマは何でしょう。それは「食の歴史」にあると思います。

 なぜ「食の歴史」なのか。その理由は大きく3つあります。

 1つ目は、自分の生活に身近なものなので、興味を持ちやすいところにあります。例えば、カレーを取り上げるとしましょう。カレーといえば、スパイスに米、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、豚肉などを連想するでしょう。それではカレーは日本食なのでしょうか、それともそうではないのでしょうか。これは調べてみるとなかなか興味深い問題となっています。詳細は別の機会に譲りますが、身近な食の成り立ちなどを知ることは興味を持ちやすいものであると思います。

 2つ目は、食の歴史を知ることは社会を知ることにつながるからです。例えば、ジャガイモを取り上げましょう。ジャガイモは日本に最初からあったものではありません。いつ、どこから来たのでしょうか。そして、なぜジャガイモの栽培は北海道が1番なのでしょうか。このような質問に答えるためには、当時の社会情勢を考慮しないと理解できません。つまり、食の歴史を理解することは、当時の社会情勢を理解することにつながります。

 3つ目は、食の歴史の内容は誰かに話したくなるものが多いということです。例えば、給食は多くの人がお世話になり、また様々な思い出が世代によって形成されています。それでは、なぜ給食が始まったのでしょうか。このような多くの人が経験しているであろう話は盛り上がりやすいです。

 食の歴史を学ぶことで、歴史学にとって重要な「史料」を読む面白さ、そして、歴史を学び続けるモチベーションの維持をすることができると考えています。歴史の学び直しを「食の歴史」という視角で楽しんでみることで、何か新しい視座を獲得することができればと思います。

 

いただいたサポートで、今後紹介する本を購入していきます。歴史学の視座をより多くの人たちに広めるために、ご協力いただけると幸いです。