『ナツノヒカリ』と『another_sky』

 はい、こんにちは☀️

 実はですね私、先週に引き続いて今週もウキウキしてるんですよ。なんとですね、7月2日、ええつまり今週の土曜日なのですが“バイン”ことGRAPEVINEのワンマンライブに行ってくるのです。

 GRAPEVINEは今年でデビュー25周年(⁉︎)の超ベテランながら、毎年精力的にライブ活動を続けているバンドです。今年も既に上半期の”スプリングツアー”に多数のフェスなのどの公演をこなしており、参加できるチャンス自体はたくさんあったのですが、そのほとんどが平日、もしくは遠方だったのです😢

 それゆえにライブに参加できるのはちょうど丸一年ぶりでございます。2021年7月3日の『名古屋日本特殊陶業市民会館』でのライブ以来ですね。最新アルバム『新しい果実』を引っ提げた待望の全国ツアー、Radioheadを思わせる強烈なグルーヴ感の『』から始まる怒涛の2時間。あれも素晴らしかったなぁ。


 思い出話はさておき、今回のツアーは普段のツアーと一味違います。【GRAPEVINE in a lifetime presents another sky】と称しまして、2002年リリースの人気アルバム『another sky』20周年を記念したリビジッド・ツアーなのです。

公式Twitter(@news_grapevine)より

 25周年のバンドが20周年のアルバムのツアーを開催するとは、なんとややこしい笑

 『another sky』はGRAPEVINE中期の作品の中でも重要なアルバムです。というのもバンドのリーダーであるベーシスト“西原誠”が参加した最後のアルバムなのです。世界中のミュージシャンを苦しめる難治病、ジストニアによる苦渋の決断。重たく危機的な背景ですが、彼がバンドに残した最後の曲はポップでキャッチー。最高にかっこいいんだぜ😢


 ツアー前にアルバムを復習してみましょう。ジャケットはこちら。

 なんなんでしょうね。このいかがわしい爽快感。なみなみと注がれ、溢れだす謎の青い液体(ペンキ?)。テキ屋のブルーハワイのかき氷のような人工的な清涼感がそこにあります。不自然ですがこれだってスカイブルー。

 内容の方も、このジャケットのイメージ通りの雰囲気で進行していきます。ブルージーで閉塞感が強いAメロBメロから、サビでぶわーっと視界が開けていくような『マリーのサウンドトラック』や、バインの中でもトップレベルにエロティックで危険な歌詞を誇るヤベえ攻撃的歌謡ロック『Sundown and hightide』あたりは、ジャケット写真で注がれている謎の液体のようなドギツイ青(群青?)を思わせます。また、歌詞も青い、蒼い、碧い!!

マドモアゼルの背中を
見送る彼はただの未成年
若くて稚拙な祈りでした

おおその目その手その胸
創造の海に抱かれて
獰猛なブルー
あの見果てぬオレンジ
みんなわずかな風になった
『Colors』作詞:田中和将

 そしてアルバムのハイライトとなるのはやはりシングル曲でしょう。(『マダカレークッテナイデショー』という脳汁が滾りまくる(逝っちゃってる)アルバム曲もありますがいったん置いておきます。)今作では先述の『BLUE BACK』と、ようやく登場の『ナツノヒカリ』が該当します。

 『ナツノヒカリ』は、ポップで切ない“バイン流夏ソング”と言えましょう。私がこのバンドにのめり込み始めたキッカケの一つがこの曲のmvです。(確かニコニコに無断アップロードされてたんだっけ)

 ぐあああああああ!!!なんだこの平成初期の夏の空気感は!!!!!!!

 おそらく低予算で製作されていますが、20年後の今これを見るとレトロでハイセンスな映像に感じられます。シャツやアイスなど、ある一点にカメラがズームし、同系色の別画面に切り替わる手法、不思議で目が離せない。「次は何に寄るかな?」とついつい注目してしまいます。映像のラストも爽やかでクスっと笑える快作です。

 曲として印象的なのがイントロから鳴り続けるギターリフですね。弾けないので技術的な事は分かりませんが、雲1つない空から照りつける日差し、そしてそれを照り返すアスファルトに挟まれ、視界が揺らぐように暑い夏の真っ昼間を彷仏させます。

 一方で、ネット上でレビューを漁ると「夏の日の木陰ようなイメージ」と言う感想も出てきます。確かにそれはそれでめっちゃわかる!!ええ、とにかく夏の光なのです。

 そしてこの歌、バインの活動初期特有の田中氏の高音ボイス(通称みゃあみゃあ声)が1番映える曲なのではないでしょうか。サビ部分が特にマッチしてるように思えます。

 「だからまーーーーーだーーーーー♪」ってロングトーン。カラオケとかでこの曲を歌ってみるとわかりますが、普通に歌うとかなり物足りない、間延びして感じてしまいます。そこで輝くのが若い頃田中氏の甘く繊細なこのボーカルだったのです。少し不安定で緊張感を帯びているので引きつけられちゃう。「次はどうなるの?聴かせて!」

 そして今の田中さんの歌声は力強く、渋いです。成熟した大人の素晴らしき色気。20年の時を経てどう進化しているのか、楽しみで仕方がありません。(まぁ人気曲だからたびたびライブでやってるけどね、私は聴いたこのないのでむっちゃ楽しみなのです)

 そしてこのアルバムの名盤たる所以、ツアーでもクライマックスとなるであろうリードトラックが『アナザーワールド』です。アルバム曲でありながら人気投票でも上位にランクインする名バラード。

 バンド内のエース作曲者であるマッチョなドラマー“亀井亨” の生み出した渾身の泣きのメロディーがそこにあります。

 『光について』、『スロウ』、『風待ち』、『すべてのありふれた光』などの切なくて感情揺さぶる代表曲は、全てこのおじさんの作曲です。バラード界の人間国宝のような存在なのです。

(※ちなみに“アニキ”の愛称で知られるギタリスト“西川弘剛”も曲数は少ないものの名曲を手がけています。『放浪フリーク』や『羽根』あたりが代表的、どれも素晴らしきかな😭)

世界から日常から抜け出せるかい
世迷言も裏返せば容易いのかもな

生まれた時から歩けるのは
この道だけだったのか
だけど

空に届きそうで
また手を伸ばして やめて
明日もう一度 いつかはきっと
あの向こうへと
精一杯息をして
いつの間にか
ぼくらには見えやしない
『アナザーワールド』作詞:田中和将

 壮絶な幼少期を過ごしたことで知られる田中氏の人生観が色濃くでている歌詞だと思います。作詞者の背景を知らなかった時も“生まれた時から歩けるのはこの道だけだったのか”というBメロには心を動かされます。

 この日常から逃避しようと向かうアナザーワールドには届かないし、いつの間にか見えなくなっているのです。普段忘れてしまっている、この幼く健気なもどかしさを喚起され私たちは涙を流すのです。“もう僕らには見えやしない”のは大人になってしまったからなのかな。

 ということでGRAPEVINEの音楽のご紹介でした。このCD音源から20年もの時を経て、どう進化しているのか、ただただ期待しています。

 各プレイガイドを見てみると、まだチケットが手に入る公演もありそうなので、気になった方はぜひチェックしてみて下さい。最後の最後にダイマでした。


 おしまい

 過去の『アナザーワールド』のライブ映像。(非公式動画です)現在進行形のバインが奏でる『another sky』が楽しみで仕方がない。

 ※いったん置いておいた『マダカレークッテナイデショー』の魅力はニコニコに転がっているこれを見れば一撃で伝わるだろう。(例によって無断転載だけど)ニコニコ動画は2000年代ロックバンドの宝物庫だったりする。著作権に対する意識が緩かった時代の名残だよね、いつか消えてゆくのだろう。

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