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新規webサービスの立ち上げで、企画担当者が実際にやった業務を紹介

#PMの仕事

この記事の対象者

  • 自社のWebサービスを立ち上げようとしている企画担当者

  • 外部の開発会社に開発依頼をする必要がある方

この記事でわかること

  • サービスが公開されるまでにどんな工程があるのか

  • 各工程で企画担当者(あなた)は何をすべきなのか

はじめに

私はマイナビという会社で中途採用向けの求人広告を5年間営業した後、念願叶ってサイト運営部に異動。20代でサイト戦略部の部長を務め、分析データから課題を見つけ、改善施策を実施することを強みとしていました。

そんな中、転職者を対象にしたユーザー投稿型の新規サービスの提案が通り、サービス開発をすることに。しかし開発マネジメントの経験はゼロ‥。サービス開発ってどんな工程があるの?そもそも開発工程で企画担当者って何するの?

この記事では、過去の自分の体験談をまとめ、他の記事では知れない企画担当者のリアルを紹介します。

■ 前提

  • ユーザー投稿型のスキル発見サービスを立ち上げ

  • ユーザー画面(スマホ・パソコン)と管理画面(運営用:パソコン)を開発

  • 対応ブラウザは主要ブラウザのそれぞれ最新版

  • 自社メンバーは、企画担当(私)・アシスタント・社内SEの3名

  • 開発は外注で新規取引の開発会社に依頼

  • 開発予算は約5,000万円(デザイン含む)

■ 企画段階で準備していたもの

  • 要求定義書:リーンキャンバスに沿って企画内容を約20枚のパワポにまとめたもの

  • 画面イメージ:XDで作成した主要導線を約60枚のパワポにまとめたもの

  • 機能要件一覧:画面イメージをもとにExcelに書き出したもの

  • RFP:スケジュールや予算、非機能要件などを約10枚のパワポにまとめたもの

(ここまでの準備期間は半年程度)

あとは外部の開発パートナーを探せば、ようやくリリースできると思っていました。新規サービスの立ち上げ経験がある上司からは「6ヶ月くらいを目安にリリースできればいいね」と言われていましたが、結果、リリースまでに約1年かかります。

では、実際にどんな作業があったのか、その時私が何を行ったのか、工程別に出来事を紹介していきます。

工程別の出来事

1. 開発会社の選定

■ 予定:4週間 → 結果:14週間(3.5ヶ月)

  • WebやSNSで調べて3社ピックアップして問い合わせ(調査と社内共有で約2週間)

  • コンペのために開発会社に企画内容を説明(約2週間)

  • 提案を受ける(開発会社の準備期間が約3週間)

  • 社内稟議(開発規模的には社長決済で約3週間)

  • 秘密保持契約(NDA)の締結(双方の法務間での文書確認に約2週間)

  • 各種契約書の締結(リーガルチェックから締結まで約2週間)

<学んだこと>
・開発会社の選定には事前に判断基準を準備しておいた方がいい(開発について知識がないため基準がないと判断できない)
・デザイン部門があるか、エンジニアはフルスタックか、社内ではどういうMTGをして開発管理しているかあたりを聞くとよい
・要件共有から実際に提案をもらうまでに3〜4週間はみておいた方がいい
・普段あまり関わらない部署(法務や情報セキュリティ)とも連携が必要で時間がかかる
・契約書類のボリュームが多いため、事前にサンプルを手配しておいた方がよい

2. キックオフ

  • 開発会社のUIデザイナーとPMに対して要件を共有

  • コミュニケーション方法や連絡窓口を決めて1時間くらいで終わる

  • タスク管理はbacklogで行い、ファイルやドキュメントの管理ルールを決める

  • 情報が分散するのでSlackは使わないことにした

  • 6ヶ月後のリリースに向けたスケジュールが提示され、画面要件を2週間で決めることが次のステップ

<学んだこと>
・できる限り開発担当者も同席してもらった方がいい
・案件管理ツールを選定し、ファイルやドキュメントの管理ルールを決めておく
・確認したらとりあえず👍をつけるなどのコミュニケーションルールもあった方がベター

UIはXDで作ったデータがあったので決まったつもりでいたが、今思えば「企画レベル」で必要な画面しか作っていなかった。実際には「エラー画面」や「初期画面」「ユーザーパターンによる出し分け」など、開発するためには全画面のUIを細部まで作り込む必要があることをこの時はまだ知らなかった。

3. 画面要件(機能要件)の詳細詰め

■ 予定:2週間 → 結果:12週間(3ヶ月)

  • 開発会社のUIデザイナーが全120画面ほどの画面要件を書き起こす(約2週間、今思えばめちゃ早い)

  • 3時間のMTGを合計4回実施して、修正を行いながら画面ごとの機能要件を決める(約4週間)

  • 画面要件確定後、任せるよと言っていた上司から色んな意見が入る(議論を重ね妥協点を見つけるまでに約4週間)

  • UIデザイナーに追加修正を依頼し、今度こそ画面ごとの機能要件が確定(約2週間)

<学んだこと>
・企画段階で不足していたのは「エラー画面」「初期画面(0件の場合の画面)」「会員・非会員による出し分け」
・特に「会員・非会員による出し分け」で画面が2倍に
意見をしたがる上司や関係者はMTGに参加してもらった方がいい
・パワポの画面イメージは正直いらなかった
・はじめからプロトタイプレベルの画面要件があれば認識齟齬も生まれず、後戻りもなかった
FigmaAdobeXDを使えば非デザイナーでもプロトタイプは作れる
譲れない体験(機能要件)を1つか2つだけ決めておき、それ以外は成立していればOK
・ここでの細部のこだわりは、リリース後どうでもいいことばかり

4. 開発着手

■ 予定:16週間 → 結果:16週間(4ヶ月)

  • 設計2週間→機能開発10週間→デザイン当て3週間→結合テスト1週間

  • 画面要件を検討している間、エンジニアは待機していたことを知る(実際は別案件をしていたが、これ結構迷惑かかるため注意)

  • 最初の2週間はエンジニアが各機能の設計をして見積もりを算出しているので作業はほとんどない

  • 設計後は開発会社との週次定例で、画面要件で決めたことに対する仕様相談が毎週のようにある

  • 実際に見積もってみると10週間に収まらないので要件の取捨選択を行う必要がある

  • 機能開発中は平穏な日々が続く

<学んだこと>
・設計をするまでの機能要望や見積もりはあくまでも暫定
・設計すると、工数は1.2〜1.5倍くらいに膨らむことが多い
・機能要件はフルスタックエンジニア3名で3ヶ月くらいのボリュームに収めるべき(それ以上は、初期リリースとしては機能要望が多すぎる)
・開発工程では、機能の取捨選択などの「細かい判断」が続く
・プランナーではなく、エンジニアと直接会話した方が早い
エンジニアに一次情報との接点を提供すれば、コミュニケーションコストが半分くらいになる
・開発期間中にリリース後のユーザー獲得について準備しておくべき

5. テスト

■ 予定:2週間 → 結果:4週間(1ヶ月)

・主要導線が要望通りに動くか操作しつつランダムに操作してバグを探す
・「スマホ・パソコン」×「Chrome・Safari・edge・FireFox」×「Mac・Windows」でテストパターンはたくさんある
・実際に触ってみるとバグは結構ある(バグ50個)
リリースまでにどれを対応するか判断する必要がある

<学んだこと>
・企画段階でどのデバイス・ブラウザに対応させるかによってテスト工数が2倍にも3倍にも膨らむため注意
・特にアプリの場合は、AndroidかiOSのどちらかに絞った方がいい
・機能単位でのテストが問題なくても、機能同士をつなげた時にバグが発生することがよくある
・企画担当者が行うべきなのは「主要導線テスト」と「モンキーテスト」
・初期開発では、バグは50個くらい出る心構えが大事
・当たり前だが、バグを修正するのにも時間がかかる
・バグによるエラーで機能が正常に動かないものだけ優先度を「高」にする
・デザイン上の表示崩れは優先度「低」でOK(リリース後に対応)

モンキーテストとは
想定していない操作方法やイレギュラーな値の入力などをランダムに行うテスト。約半日程度、とにかくサービスを触り続けてみましょう。

6. サービス公開

・晴れてサービス公開の日を迎えることができました
・自社サービスにバナーを設置したり、メルマガを配信して初期ユーザーを獲得
・反響もまあまあで意気揚々としていましたが、2ヶ月目以降は新規ユーザーが全く増えない
・一番作り込んだページよりも、サブ的に作ったページの利用者が多かった

<学んだこと>
・当たり前だけど、作っただけでは誰も利用してくれない
・開発期間中に、先1年間のマーケティング施策は考えておくべき
・想定通りに利用されることは稀でリリース後に追加機能開発をすることになる
・場合によっては開発したばかりの機能を潰すことも

まとめ

今から5年前に、はじめて大型の新規サービス開発をしたときのことをまとめてみました。自分の立ち振る舞い方やどこまで判断をすればいいのか悩みながら仕事をしていた記憶があります。

最近では、このような立ち回りをする人のことをプロダクトマネージャーというようで、市場価値が非常に高い職種の一つです。

現在は、飲食店向けの口コミサイトの会社で、新規事業の事業責任者(プロダクトマネージャー寄り)として働いています。約16名の組織で、UIデザイナー・エンジニアと共にスクラム開発でプロジェクト管理をしていますが、外注の3倍の速さで開発が進み、工程も省略化されています。

次回は、外注と内製開発での具体的な工程の違いについてもまとめてみようと思います。

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