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「傲慢と善良」 辻村深月

この本は「圧倒的な支持を集めた恋愛ミステリ」という表現で紹介されているのをよく見かけます。
私は、この本は恋愛小説として楽しむ、というものではなく、自己理解と他者理解を恋愛小説を通じて学ぶ、そんな小説と思いました。
巻末には朝井リョウさんが解説されていて、これも学びになります。
この小説はヘビーなのである、と朝井さんが言っており、これを念頭に置いて読むことをオススメします。
朝井さんの解説の言葉を更にかりると、
「善良でいい子、言い換えれば自分の意思で何も選んで来なかったこれまでの歴史、自分の意思をわからないできた歴史が、いざ何かを選ぶ場面になった時、真実を傲慢にしてしまう。
この側面の炙り出し方が非常に鮮やかで、かつ、深く身に沁みた。」
これが、この小説のタイトルや前評判を見てから読んだ私の感想そのものです。

作中は確かにヘビーで、この登場人物、果たして救われるのかな、と強く感じたのですが、そうした重たい話の展開も善き回収がなされてスッキリしました。
だから読後感はすこぶる良いです。

私は小説を読む時の動機が3種類あります。
[1]エンタメとして楽しむ
[2]メッセージ性を読み解いて自分の学びとする
[3]登場人物の多様性から様々な人間心理を体感する

この最後の3つ目の動機に相対できるような小説と出会いたい、
そう思ってます。

この多様性について、登場人物の男女間での性格の違いの描写があるとき、性別ではなく、一人の人間として見たときの様々な性格の多様性について描かれていた方が奥深い体感となっています。
男だから、とか女だから、ではない多様性が描かれている方が私にとって読んだ甲斐があるかなと。

この小説に出てくる男性と女性について描かれているタイプの違いは、性別に関係はしない価値観の違いと感じてます。

作中で心に刺さった文面を一部

○×は絶対に自分のことは自分で決めたいし、自由でいたい。
しかし、世の中には、人の言うことに従い、誰かの基準に沿って生きることの方があっているーそういう生き方しか知らず、その方が得意な人たちも確かにいるのだ。特に、真面目で優しい子がそうなるのはよくわかる。

現代の結婚がうまくいかない理由は、傲慢さと善良さにある

善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、自分がない、ということになってしまう。傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう
そしてその善良さは、過ぎれば世間知らずとか、無知ということになる。

私が好きなサッカーで、有名なイビチャ・オシムさんが遺した名言「どんな結婚も最初は美しくエレガントに見えるが、うまく行くかはわからない」を思い出しました。
もし、結婚にエレガントさを求めている方がいたら、それは結婚式のみであって、うまく行くかどうかということについて、この本を読んでみることをオススメしたいです。
価値観が一緒だから結婚する、のではなく、同じでも違う価値観でも、それはどちらでも良いので、お互いに理解し合い、思いやりあうことが大事なんだと、改めて強く思いました。

まだまだ読書感想文として書き出したいことはありますが、とりあえず今回はここまでm(_ _)m


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