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名前の由来

じぶんの名前の由来を聞いたことはあるだろうか。

私の名前は過去にノーベル賞をとった江崎玲於奈という科学者からとってつけたものらしい。小学生の頃、名前の由来を聞いてくる宿題が出た時には「しょうらい、ノーベルしょうをとるようなすごいひとになりますように」と書いた記憶がある。

幼いながらに、おもわず「ちょっ待てよ」というキムタク的ツッコミをしたのを覚えている。いやいやいや、ド文系の両親、ミーハーすぎないか。おそらく彼らは江崎玲於奈の何がすごいのか、詳しくはわかっていないはずだ。私ですら、wikipediaを見てもよくわからない。しかもれおなという名前は通常男性に多い名前で、小さいころは少し変わった名前を恥じていた時期もあった。「まみ」とか「みき」とか、そういう2文字でいかにも女の子らしい名前に密かな憧れを抱いていたのだ。私も私でミーハーである。

大人になってから、もう一度本当の名前の由来を母親に聞いてみようと思ったのはついこの前の話。なんとはじめて会った人に、「あなたの名前は、ノーベル賞の江崎さんからもらったのですね?」とズバリ当てられたのだ。その人の教養の深さと、「間違いないな」という顔でサラッと言ってくる言い切りの良さにびっくりした。珍しい名前ですね、とは言われても、まさか名指しで由来を当てられることは今までになかったことだ。

人から言われると、ますますこの名前の由来をおかしく思えてくる。
母親に、改めて名前の由来を聞いてみることにした。親が大の化学好きとか、江崎さんに命を救われたとか特別な思い入れがあるならまだしも、親も私も生粋の文系、ましてや数学なんて大の苦手な親子である。ひょっとすると、生まれてくる子供が男だと思っていたのでは......?といういらぬ憶測が脳内を駆け巡り、若干憂鬱な気分で母親にLINEをした。

「急だけどさ、なんでわたしの名前ってれおななの?」

既読がついてしばらく返信が返ってこない。マズい...これはひょっとするとひょっとして人生で今初めて知る事実との遭遇かもしれない......と心の覚悟を決めて返事を待つ。

しばらくすると、こんなスクショとともに送られてきた。



江崎玲於奈の5か条らしい。けっこういいことを言っているじゃないか...!
母からのLINEはこう来た。「江崎さんは、ノーベル賞受賞者であることはもちろんのこと、人間性がすばらしい!生き方に感銘を受けました。そして、名前の響きも美しいと感じたので命名しました。(ハートマーク)」
母も私の名前は我ながらに気に入っているのだそうだ。

これで謎の「ノーベル賞をとってほしい」という庶民のミーハー感がすこしだけ払拭された。すこしだけね。
ノーベル賞を取るかはさておき、特に第二の「大先生を尊敬するには、のめりこんではいけない」などは私もハッとする内容だ。吉本ばななを勝手に師匠と呼び、小説は彼女からのお経だと思って正座をして拝読している節があるからだ。第四のたまには闘え(意訳)というのも好きだ。

私は自分の名前をけっこう気に入っている。
あだ名もあるし、特に東京に来てから名前を褒めてくれる人が多く、すこしだけ名前肯定感なるものが上がったのだ。

そうだ、今度会う友達にも、名前の由来を聞いてみよう。
どんなストーリーがあるだろう?どんな願いや思いが込められた名前だろう?

どんだけミーハーなネーミングでも、おそらくは親なりに、何かしらのあたたかい思いがあってつけられているはずだ。


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