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月を経る

今日はおひさしぶりにドえらい痛みの生理痛が来た。
いつもは大したことのない、無視して過ごせる程度の鈍い痛みなのに。何か変なもの食べたっけ?酒の飲み過ぎ?体が冷えてる?鉄分不足?最近焼き鳥屋に行ったら必ずレバーも食べてたのに???

しかし痛みに悶えている最中はそんな呑気なことを考える余裕もなく、今日は腰をかがめて歩く1日を過ごした。顔も歪み、冷や汗も出てくる。何もできない。ソファにうずくまったまま、痛みに耐えながら寝落ちしそうになる。寝落ちしたいがあまりの痛さに微妙に寝られないし、そもそも後にオンラインの予定があって寝落ちできなかった。

痛み止めを探す。いつもの棚に入れてあったロキソニン。蓋を開けると中身がない。説明書しか入っていない。痛すぎて何度も確認する。何度見ても、何度振っても錠剤は出てこない。
ふと、最近使ったカバンのサイドポケットにたしか薬のようなものが入っていたのを思い出した。それが痛み止めであるかどうか、80歳のおばあちゃんのような姿勢で見にいく。......あった。ヒストミン。鎮痛剤だ。思わず「助かった〜」との声が出る。急いで口に入れる。

薬が効くまで、最短でも30分ほど待たなくてはいけない。
とりあえずなんとかお湯を2回わかし、湯たんぽに湯を入れる。両手で抱えてそのままベッドで横に。生理痛には子宮を温めるのがいちばんだ。次第にあたたまり、気づいた時には薬が効いて痛みもスーッと消えていた。
今このnoteを座って書けているのはそのおかげだ。今日は湯たんぽと鎮痛剤に心から感謝したい。



私は少しだけ漢方のアルバイトをしていたことがある。といっても配合係とかではなく、簡単な接客程度のものだったのだが。
それでも客にある程度の説明はせねばならず、漢方の和漢草の常識程度の知識はある。

漢方のスタンスは、人間の体の水・気・血の巡りを日頃からよくすることによって大病を防ぐというものだ。医学の世界ではこれを原因療法といい、痛みがなぜどこから生まれるのか、その原因を根本的に解決しましょうね、というものになる。一方、鎮痛剤のように痛みに速攻アプローチ!というのは対処療法と言われ、どちらかというと西洋医学のスタンスに近い。

前者の漢方薬は病気の根本にアプローチするため、慢性的な病気に対して時間をかけて治していくことに向いているが、その分特効薬には向いてない。後者の西洋医学は逆に、症状をおさえる薬を飲んで速攻で解決するため痛みの緩和は早い。しかしその分原因の解決には至らず、再び症状が繰り返される可能性がある。

水・気・血の3つの巡りを整えて養生を目指す漢方の世界で言うと、生理痛は「血」にまつわる症状だ。漢方の世界からすれば、生理痛が重い時は、完全にこの「血」が足りてないのだそうだ。鬱血、鉄分不足だ。それによる「血」の巡りの停滞によって、生理痛が引き起こされるとのこと。
漢方的アプローチをすると、生理前〜生理中に鉄分を補う成分をとり、しっかり体を温めることがいいらしい。特に子宮。そして血の巡りを滞らせないことが、ひどい生理痛には良い。



生理がはじまって10年以上経ってくると、自分の体にも慣れてくる。
これは最近わかったのだが、私の場合は生理の時期と満月の時期がほぼ同じタイミングなのだ。だから、記録アプリよりも月のカレンダーを見た方がよっぽど当たりやすい。月経が「月を経る」という漢字であることに納得するとともに、なんだか神秘的な気持ちになる。月のバイオリズムと女性の体のバイオリズムは一致しているのだ。偶然ではないように思える。

あとは生理中にコーヒーを飲むと、大体お腹が痛くなる。たしかに生理中のコーヒーはあんまり良くないという話も聞いたことはあるが、なんせ私は朝起きてからコーヒーを飲まないとスイッチが入らないタイプ。無視して薬でごまかしている。
そして生理前に訪れる、かなりヤバいあの精神状態。軽く鬱だ。(そう思うと、女性の身体は毎月軽い躁鬱を抱えているのかもしれないね)なんとなく、あの地獄の底がわかってきた。果てが見えたというか。
「これはさすに生理だわ」がわかるようになってきたのだ。「うわ〜〜これ多分まじメンタル底きてるわ〜底〜」と思いながら、血迷った闇ツイートの送信ボタンもそっと消せるようになった。

ところで、前に男性の誰かのツイートで「女性は月経という月に1回自分の体がリセットされる生理現象が訪れる。対して男性はそれがない。その違いは大きいんじゃないか」みたいな趣旨のものを見かけたことがあった。
それ以来、果たして私は月に1回血と共に何かをリセットできているのだろうかと考えることがよくある。しかし、今もよくわからない。
わからないが、生理というものは自分の体のコンディションを知れるタイミングではあると思う。今日みたいに痛みがひどい時はおそらく、体が冷えているか鉄分をはじめとする栄養が足りてない時か、とにかく体がおかしい時だ。それを私は風邪をひく前に生理で知ることができる。生理がリセットになっているかはわからないが、少なくともコンディションチェックにはなっていると思う。

生理といえば、避けて通れないのが低容量ピルの話だろう。
これを読んでいる女性の方で、ピルを服薬している方はどれくらいいらっしゃるのだろう。
幸いにして、私はピルを飲まずとも日常生活をなんとかサバイブできている。今のところピルにはお世話になってない。
そして私個人の考えで言うと、私はどちらかというとピルには反対だ。
ここからは全て、PMSや生理痛の症状の軽い私のたわごとだと思ってさらっと読み飛ばしてほしい。

漢方養生に興味があるということもあって、私の考えでは「そもそも薬に頼らないといけないくらいひどいときって、体のどこかがおかしいんじゃないの」と思う派だ。日常生活に支障をきたすレベルのPMSや生理痛は小手先のピルでなんとかする以前の問題であり、もっと根本的な何かの点検が必要なんじゃないかと思う。根拠はないが、そう思う。
それに、ピルやそれにまつわるあらゆるマーケティングが無言で訴えてくる「毎日をご機嫌に、穏やかにあれ」的な主張がとにかく気に食わない。資本主義の匂いがする。毎日をご機嫌に過ごせ、と言うのはつまり、社会や企業からすれば「ず〜っと同じ量と質の労働を続けてくださいね(ニコ)」と言うメッセージの裏返しである。しかし人間たるもの、男も女もじいちゃんもばあちゃんもお姉さんもお兄さんも、みんな命あるものはパフォーマンスが均一になるわけがないでしょう。それが生身の身体ということなのだから。

女の体で23年ほど生きてきてわかったのは、女性の身体はどうやら基本的に今の社会やしくみに合ってないということだ。私たちの身体は、おそらく全く別の理屈で動いている。それこそ、人間ではなく空に浮かんでいるほうの月の理屈で動いている。
毎月月経で気分や身体のコントロールが曖昧になり、子を腹に宿せば月の満ち欠けのようにお腹は膨らみ、そしてしぼんでいく。生まれれば全ての行為が一旦遮断せざるを得ない。それが女の身体の理屈だ。
この「一時中止をせざるを得ない」理屈は、交代しながらも常に回り続けるが前提な今の社会に到底受け入れられないものだろう。だって進む・止まるを前提にしていないのだから。
揺らぎを止めず、ずっと揺らいだまま生きていくことにこそ、人間が人間であり続ける唯一の道であると私は思う。

というわけで、ピルは使いたくないなあというのが私の考えだ。変なところで保守だよなとは思うけれど、これが私なりの資本主義へのちいさな抵抗であり、科学にあらがうための哲学なのだ。

......そんなことを言っていたら、またお腹がいたくなってきた。
さすがに薬は飲んで寝ます。


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