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小説|ユリテルド村の村長

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3大国の中央に位置するユリテルド村。 これは、その村の村長として暮らす、1人の少女の物語ーー。
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小説|ユリテルド村の村長(16)最終話

小説|ユリテルド村の村長(16)最終話

その後のパーティーは滞りなく終了し、会談から2日が経った。ランシェル達は会談の後も今後について話し合い、契約を結んだ。彼女は今日、ユリテルド村へ帰ることとなっている。
クリスには、舞踏会が終われば帰ると伝えている。
あれから2日も経ってしまった。早く帰らなければ、要らぬ心配をかけてしまう。昨日の内に王と王妃には去る事を伝えてある。
ランシェルは、この国に来たときよりも少し重くなった荷物を持って立ち

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小説|ユリテルド村の村長(15)

小説|ユリテルド村の村長(15)

ホールに音楽隊の軽やかな音楽が響く。
くいっと手を引かれ、ランシェルもフィルの動きに合わせて、足元ばかり見ないよう注意する。
右、右、左、斜め右下に下がって……回る。
くるりとランシェルが回ると、ほぅという感心した声が貴族達から溢れた。

「お上手ですね」
「…………練習したので」

フィルの褒め言葉に、苦笑いを浮かべながら答えた。
だが実際、ここまで順調に踊っていられるのは、フィルのフォローがあ

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小説|ユリテルド村の村長(14)

小説|ユリテルド村の村長(14)

あれから数時間が経って、漸くフィル達の馬車がクレブレム洞窟に到着した。後は大人しいもので、ガーデュオ達が連行されていく。
それを先導していたのは、リュウであった。
父を見送っていたアレンは、リュウの背を見ながら茫然と呟く。

「どうしてあの人が、ブラウン王国にいるんだろう……」
「……どういうこと……?」

すると、アレンは驚いたように目を見張る。
知らないのかと、アレンはランシェルに目で問いかけ

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小説|ユリテルド村の村長(13)

小説|ユリテルド村の村長(13)

「……っはぁ、はぁ……っ」

元々体力のないランシェルにとって、全力疾走で地下通路までやってくるのは至難の技だ。それに、昨日訪れた部屋に行ってみても、アレンは見つからなかった。
一体どこに……。

「ーーーーせよ……っ!」
「!」

今のはアレンの声だ。ランシェルは部屋から飛び出し、声のしたほうへ走り出す。

「ーー、ーーっ!」

言い争う声が聞こえる。どうやらすでに、アレンの父も彼に気付いてしま

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小説|ユリテルド村の村長(12)

小説|ユリテルド村の村長(12)

クレブレム洞窟内部。
東の空はそろそろ暗くなり、もうすぐ西の大陽も沈もうかという頃。
酒場のカウンター内でも、開店に向けて準備を進めていた。
ランシェルも、店内の掃除を任され、モップで床を拭きながら、一つ一つのテーブルの水拭き、木椅子の整列、ジョッキのから拭きに、その他食器の皿洗いなど、意外と忙しなく働いていた。アレンはどちらかというと立場は上のほうであるため、他の従業員に指示を送るほうが多い。ラ

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小説|ユリテルド村の村長(11)

小説|ユリテルド村の村長(11)

アレンはランシェルの事を先程よりも強い力で引き寄せる。

「こっち!父さん達がここに来る!」
「えっ!」
「とりあえず、隠れないと……ッ」

ランシェルはアレンに導かれるまま走り出す。去り際、不安げな顔でこちらを見るベルニカと目が合った。
 ランシェルは、大丈夫だと安心させるように、彼女に対し頷いてみせる。
 ガタンッという鈍い音が響いて壁の扉が倒されるのと、アレン達が部屋の奥の壁の小さな格子に滑

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小説|ユリテルド村の村長(10)

小説|ユリテルド村の村長(10)

闇に包まれた空の下。リュウはひたすら馬を走らせる。
今までは森の木々に阻まれて見る事の出来なかった星々が空一面に広がっている。国境まであとほんの数メートルという所で、リュウは馬の足を止めた。
辺りを見渡し、先程から感じる妙な違和感の正体を探ろうとする。

「………………は、………………です」

リュウはすっと目を細める。確実に誰か、いる。
馬から降り、そっと声のしたほうに近付いていくと、2人の男達

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小説|ユリテルド村の村長(9)

小説|ユリテルド村の村長(9)

それから2時間ほど経過した店内には、空のジョッキがあちらこちらに散らばっていた。男達もあの後さんざん飲み散らかし、今は眠ってしまっている。
そんな中、空の酒樽を前に立っているのは、アレンとランシェルだけだった。

「ランシェって、酒に強いんだな。びっくりしたよ」
「……いや、僕も今日初めてお酒飲んだから、ここまで飲めるとは思わなかったよ。逆にこっちがびっくりしてる」
「酒場に行きたがってたわりに、

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小説|ユリテルド村の村長(8)

小説|ユリテルド村の村長(8)

酒場に入った時、ランシェルを出迎えたものは、沈黙だった。
皆がみな、見かけない客に対して不信感を顕にしている。どこもかしこも、見渡せば黒髪に黒の瞳を持つ者ばかり。淡い茶色の髪を持つランシェルとは、似ても似つかぬ容姿だった。

「みんなー、注目!」

アレンがひときわ大きな声を上げると、皆の視線が彼に集まった。アレンは強面の男達の視線に物怖じすることなく、隣のランシェルを手の平で指し示した。

「こ

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小説|ユリテルド村の村長(7)

小説|ユリテルド村の村長(7)

城を出たリュウ達はすぐに馬を用意した。フィルは国の内部でまだやるべきことがあるとの事だったので、ランシェルとリュウで先にユリテルド村へと向かった。
馬車だと1日かかってしまうのだが、馬で全力疾走した結果、半日で村へ着く事が出来た。
村へ到着すると、クリスが小走りで近寄ってきて2人を出迎えてくれた。彼女はランシェルの後ろに立つ男を見て、一瞬だけ驚いたように目をぱちくりとさせる。

「……まあ。どうし

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小説|ユリテルド村の村長(6)

小説|ユリテルド村の村長(6)

『ーーどうか、元気に育ってね』

「あ……」

そう……だ。夢の中。
夢の中の女の人の声に良く似ている。
……目を見開いてこちらを見ているランシェルを不思議に思ってか、王妃は小首を傾けて心配そうに尋ねる。

「……どうかなさいましたか?」
「あ……いえ。ただ……王妃様の声が、なぜか聞き覚えがあって、それが不思議だったものですから」

それを聞いて一度目をぱちくりさせると、得心がいった表情になった。

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小説|ユリテルド村の村長(5)

小説|ユリテルド村の村長(5)

舞踏会まであと五日となったブラウン王国の城内。城に滞在している貴族達の数も増えてきて、彼らは城と庭園の間にある壁際の廊下で対談を楽しんでいた。
そんな彼らを余所に、庭園をきょろきょろとしながら走る少女が一人。

「ーー……兵の、訓練場って、どこだっけ……」

『ーーいいか。明日は陛下と王妃に謁見する。昼頃に訓練場の前で待ってろ』
……そう言われたのは、昨日の晩だった。それから朝には目が覚めたのは良

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小説|ユリテルド村の村長(4)

小説|ユリテルド村の村長(4)

リュウが案内した離れに着いた時、真っ先に思ったのは"圧巻"。この2文字だけだった。王城もそれは立派なものだったが、ここは他とは次元が違うように思う。湖の水面に浮かぶかの如く建てられたその離宮は、白を基調としたデザインとなっていて、所々に違う色の石を埋め込む事で、色彩に色合いを出している。その石が水に反射するとキラキラと輝き、まさに壮観だった。離宮へは、湖にかかる一本のアーチ状の橋を渡るしかなく、孤

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小説|ユリテルド村の村長(3)

小説|ユリテルド村の村長(3)

翌日、従者とランシェルはまだ日の昇らないうちに森を出発した。ブラウン王国まではまだ距離がある。
昼までには到着する心積りでいた。王家には、昨日の夕方頃には着くと連絡していた為、さぞ心配をかけてしまったことだろう。出来るだけ早く着いたほうが良いに違いない、と早々に出発したのである。
森から王城までの道のりは何事もなく進んだ。

「ここで待て」

予定通り昼前に城に到着した2人は、馬車から降りて門の中

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