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ITIL4(アイティル4)を使ったDX実践の勘所_7つの原則を使いIT化で業務を標準化・自動化する上での考え方

第0章 はじめに

今回は「ITIL4(アイティル4)を使ったDX実践の勘所」、副題として「IT化で業務を標準化・自動化する上での考え方」というテーマで解説させていただきます。

2.DXという言葉の定義

はじめに、前提知識として「昨今の時代背景のお話」と「DXという言葉の定義」をさせていただきます。DXというと様々な定説がありまして、読者の皆さんはそれぞれ持たれているイメージが違うと思いますので、一旦ここで大体のイメージ合わせをしたいと思います。

昨今、2021年にデジタル庁が設立されたり、経済産業省が「DXを推進するためのガイドライン」を出したり、民間企業も含めて、国を挙げてデジタル化に取り組もうとしている中で、経済産業省が「デジタルガバナンスコード2.0」というのを出しました。以前は「DXを推進するためのガイドライン」という名称で出されていたものですが、現在は「デジタルガバナンスコード」という名称で、民間企業がDXを進めて行く上でのガイドラインを出しています。

実際に見てみると、分量で言うとPDF15枚ほどにまとめられたガイドラインとなっています。

このガイドラインの中で、DXの意義やDXの言葉の定義が説明されていまして、重要なところだけスライド上に抜き出しています。
文字が多いので「DXという言葉の定義」の所だけそのまま読ませていただくと 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と書いてありますが、こちらあまり具体的なイメージがしにくいと思いますので、後ほど、簡単なイメージも含めて解説できればと思います。

3.根拠となる考え方

ITIL4(アイティル4)を使ったDX実践をテーマとして挙げていますが、こちらそもそもITILと書いて、アイティルと読みます。ITILとは端的に言うと、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス手法、一種のプロジェクトマネジメントの手法です。今回はそもそもITILとは何なのか?DXと何の関係があるのか?なども含めて解説させていいただきます。本日解説する基本的な理論ですとか考え方の根拠は、ITIL4の公式出版物の3冊の考え方を元にしています。(スライド参考)

ITIL4は資格試験もありまして、その内容も一部含めまして、ITILの基本的な考え方を元にして、どう現場で使っていけばよいのか?ということを考察していこうというのが今回の主なテーマの一つとなっています。

スライドの右側に、応用事例を書いていますが、こちらは「守るべき7原則」と言われるものです。こういった原則をとらえて、プロジェクトを進めて行けば、簡単に言うと比較的スムーズに進みますよ、というフレームワーク・考え方になっています。

また、最初に申し上げておきたいこととしては、内容はかなり抽象的なものとなっていますで、ご自身の業務に置き換えたり、個人で進められているプロジェクトがありましたら、プロジェクト内での応用したシーンをイメージしていただければ、より内容が理解ができると思います。

4.ITILの活用イメージ

冒頭DXとITILとの関係性はどうなのか?ということを書きましたが、今回のご説明したいことのイメージ図はスライドのようになっています。

イメージ図ですので、若干簡略化しすぎというところもあるのですが、例えば、あるゴールを実現するために、プロジェクトを立ち上げました(内容は何でも良いのですがシステム導入、あるいはシステム切替における業務プロセス変革をやりたい等・・・を想定すると)、Aのパターンでもゴールは達成できますが、ITILのフレームワークを使い、Bのパターンでやれば、より問題が明確になりスムーズに進めますよということです。

ですので、一旦この図を頭の中にイメージしていただいて、Bのパターンでやったらどうなるだろう?ということをとらえていただければと思います。

5.対象者

今日のテーマの対象者としては下記のような方が読まれれば役立つと思いますので、より広い意味で大体の方は対象者に該当するのでないかと思います。

●組織のIT運用に携わっている方
●組織のIT開発に携わっている方
●組織のIT企画ITに携わっている方
●IT部門を管理している方
●DX案件に直接的・間接的に携わっている方等

6.アジェンダ

前段長くなりましたが、ここから本題に入らせていただきます。今回のゴールとしては、「何かしらのITシステムを使い、ある業務の一部を自動化し、業務プロセスそのものを変えたいときに、プロジェクトの進め方の勘所がわかる」といったのをゴールにしていまして、DXというのは、先ほどの言葉の定義でも触れましたが、単なるITシステムの導入やデジタル化ではなくて、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立するところまで行くのがDXであって、ここでは、「業務プロセスそのものを変える」ところまでのアプローチを想定しています。下記3つの流れで進めさせていただきます。

  1. ITILとは何か?

  2. 使えるフレームワーク・考え方

  3. ケーススタディー

第1章 ITILとは何か

第1章 ITILとは何か?
8.ITILの歴史

まずITILの歴史ということで、ITILが誕生した経緯について簡単に触れておきます。スライド左の「開発ストーリー」の所から解説します。

ITILは1989年のイギリスで誕生しました。当時の時代背景として、1985年どういった年だったかというと、Windowsがリリースされて、IT時代の幕開けということで紙からデジタルへの大きな流れがありました。そういった中で、当時のイギリスは長期にわたって経済が低迷しており、その状況を打破するために行政・経済の改革が行われました。今のデジタル庁が設置されて、デジタルで行政改革を行おうとしている状況と照らし合わせると日本と近い状況かもしれません。

その改革の中で、中央コンピューター電気通信局という、日本で言うと総務省のような省庁がありまして、「ITの管理手法を確立すれば、ITサービスを提供するコストは下がり、サービスの品質は向上するのではないか?」と仮説を立て、その仮説を元に、省庁のデジタル化を実証しました。
その実証は成功し、集められた成功事例やノウハウが書籍群としてまとめられまして、その書籍群こそが、現在の「ITIL」(Information Technology Infrastructure Library)となっています。

つづいてスライド右側の普及を解説します。先ほど説明した成功事例、ノウハウが書籍群のITILですが、現在はitSMFという、ITILのドキュメントやライブラリを構築し、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを世界中に普及させることを目的としている非営利団体によって、普及活動が行われています。日本では2003年に日本HP、富士通、マイクロソフト、NTTコム、日立製作所、NEC、P&G、プロシードなど8社の情報通信技術企業によりitSMF Japanが設立されて普及活動が行われているという状況です。

また、ギリシャのPeopleCert社が認定試験を実施していまして、日本でも、ITベンダー界隈では、IT系の国家資格の基本情報技術者試験、ベンダー系の各種資格に並び、ベンダーニュートラルな資格の中ではメジャーな資格の一部となっています。また、世界にはPIMBOC(ピンボック)等の数々のプロジェクトマネジメント手法がありますが、その一部に位置しているとも言われています。

9.ITILとは何か?

そういった経緯があります、ITILですが、端的に言うと、「IT管理における、数々の事例から導き出された、使えるフレームワーク、成功事例、ノウハウ集」のことで、ITILは書籍群ですので実際紙の書籍としてまとめれたものもありますが、電子書籍も発行されています。(こちらはITILの受験を申し込むと閲覧できます。)

10.ITILの進化と時代の流れ

ITILは1980年代にリリースされてからバージョンがどんどんアップデートされていまして、今はスライド上の赤でハイライトしてた今ITIL4が最新版となっています。ここでお伝えしたいことは、スライド上のメッセージにも書いてあります2点あります。

●1980年代にリリースされてから、時代の流れに応じてITのビジネスにおける役割が変化してきた
●近年ITはあくまでビジネスを補完するものであった、助ける脇役的なものだったが、現在は、ITとビジネスが融合しサービスを提供する立場へ変わった

時代の流れでいうと、1980年代のITはビジネスに技術を提供する → ITでビジネスを助ける → ITがビジネスを支える → ITとビジネスは共にある という関係性に移り代わりまして、よりITとビジネスが密接にかかわるようになりました。また、それに合わせてこれまでのフレームワークや手法を改める必要になりました。

11.他のフレームワークとの関係性

先ほど、世界に数あるプロジェクトマネジメント手法の一部に位置していると書いていますが、IT系の開発に使用するフレームワークですとかプロジェクトマネジメント手法は、メジャーなものを取り上げますとITIL以外にも、ピンボックですとかDevOps(デブオップス)ですとか様々ありまして、ここで言いたいことは2点あります。

●ITILはITライフサイクル全フェーズを網羅するフレームワークである(スライドの紫色のところがITILのカバー範囲となっている)
●ただし、決してITILが万能であるというわけではなくて、他のフレームワークと組み合わせることで、サービスマネジメントの実現する手段の網羅性と具体性を高められるというスタンスである

まとめると、あくまで、世界に数あるノウハウの一種であって、比較的広い範囲をカバーしているので、他のフレームワークと組み合わせることで、プロジェクトの進行、サービスマネジメントの実現する手段の網羅性と具体性を高められるというものです。

第2章 使えるフレームワーク(ITIL4の守るべき7原則)

第2章 使えるフレームワーク、ルール

今までの説明を踏まえまして、ITILの中身は何なのかということを解説します。

13.ITIL4の全体像

色々分かりやすくまとめられたものがないかということで、一番ビジュアル的によくまとめれている「ビジュアルインサイト」からの参照で、ITILの全体像を図でまとめるとこのようになっています。

14.ITIL4の全体像

今回は全ては解説できないので、この中で、比較的実践しやすいのではないかと言われている、あくまで一部分ではあるのですが「守るべき7原則」と言われているものについてご紹介したいと思います。

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