DXのヒント台湾にあり @病院
大病院の記憶
一般に大学病院というと、町医者の紹介状が必要だとか、無ければ高額な初診料がいるとか、そういう記憶があります。また、やっと終わったかと思うと最後に診療費の支払いのため窓口で結構な時間待たされ、その他に薬局に行って薬を受け取るとか。場合によっては検査は別の日にまた来いと言われる。とにかく大病院では時間がかかるという印象があります。幸いにも健康に恵まれた私の経験に基づく日本の情報は古いかもしれません。
DXの威力
國立成功大學醫學院附設醫院
今日、台湾でコロナのワクチン接種以外では初めて大病院に行くことになりました。台南市にある成功大学病院です。そこでDXの威力を実感しましたので、以下に記します。
まず診察の流れ
予約なし。当日朝、病院のアプリで予約しようとしたがうまく受け付けられず。なので、とにかく病院に行く。
【待ち◯分、処理◯分】
(1)総合受付カウンター
【待ち 0分 、 処理3分】
名前
生年月日
住所
電話番号
タバコの習慣
誓約文に同意チェック (読めないので読まない)
整理番号発券機で順番カードをもらう
(2)診療受付カウンター
【待ち 5分 、 処理3分】
(3)診察室
【待ち 25分 、問診3分】
(4)検査
胸部 レントゲン
【待ち 5分 、撮影1分】
心電図
【待ち 5分 、測定5分】
(5)再診察
【待ち40分 、問診3分】
(6)支払い
【待ち 0分 、処理1分】
(7)薬受け取り
【待ち10分 、処理1分】
院内2時間
合計すると、
【待ち90分 、処理20分】
もちろん他に移動時間があるので病院滞在時間はもっと長いです。特に私の場合、「次はどこに行きなさい」と言う中国語の説明がすぐには理解できず聞き流すのでトータル10分ぐらいはあちこちウロウロもたつきました。それでも検査2種、前後2回の問診を受け病院滞在ほぼ2時間ちょうどと言う速さ。
さて、本題
(2)の診察受付カウンターで軽く症状を説明し診療科を決定する。ここでもらう紙の書類にバーコードが印刷されている。後々威力を発揮する。
だが、DXの凄さを実感するのは(3)の診察から。診察室の扉の横にカードリーダーがありIC健康保険証を差し込む。受付完了。Displayに予約者と飛び込み受付の者の配列が表示される。自分の名前も確認できるので安心。名前を◯で1、2文字消してあるのでプライバシー対策もOK。
問診は、医者が聞き取りしながら目の前で電子カルテにタイピングしていく。アナログの記録は一切なし。
診察を終えると一旦外で待ち、x線検査、心電図検査に必要な紙を受け取る。ここにもバーコードが印刷されている。
検査室に行くとボランティアがいて紙のバーコードをdisplay下のスキャナーにかざし読み取ってくれる。瞬時に登録完了。順番が表示され呼ばれるのを待つ。
終わると次の心電図検査室に行き、ほぼ同じ手順。最後にまた、元の診察室にもどりIC保険証をポストに放り込む。
診察室では検査結果がモニター表示され医者とともに見る。
「問題ないですよ」
「ふーっ」
アレルギーを確認し薬を決定する。
一旦診察室の外で待ち、最初の紙に紙が追加されホッチキスで留められ渡される。もちろんバーコードが記されている。 診療費、薬代の合計が記されていた。610元(約2,870円)
それをもって支払い自動機に行く。バーコードを読み取らせると金額が表示される。数台併設されており、現金処理で領収書不要のところは待ち時間なし。クレジットカードや領収書対応の自動機には少しならんでいた。支払った証明は何もくれないので少し不安になる。
薬局にいくと、紙に記されている番号まで表示されたらカウンターに並ぶ。カウンターの奥にはベルトコンベアがありバックヤードから袋詰された各患者の薬のセットがパッキングされて出てくる。
窓口ではバーコードを読み取り該当する薬セットを渡してくれる。速い!ここで印刷された名前だけアナログ確認をする。
CXを要約すると
・飛び込みでも不利益なし
・順番待ちの状況が可視化表示され安心して待っていられる
・途中、手書き情報の入るところ無し。部署間での情報の受け渡しはバーコード。
・支払い情報も診察終了時点で算出され、バーコードに記録済み。
・支払いは窓口でなく自動機の無人対応。すこぶる速い。
・薬の受け取りも全く同様で番号が表示されるまでは座ってみていれば良い。
DX文脈で読み解くと
・大病院は気軽には行けないという先入観がなくなった。すなわち、予約、長い待ち時間、また後日検査をするという煩わしさは解消。【患者の困りごと解消】
・これはもう、町医者に負けないスピード。キャパシティーが上がることによって高度な医療だけでなく、軽いところまでねこそぎ患者を取り込む。【競争優位性】
・病院事務の煩雑さ、職員のストレス(患者さんまたは付添人から「遅い、いつまで待たせるんだ」と言うイライラのクレームリスクを激減)【病院職員のストレス低減】
・病院事務職員一人あたりの生産性の著しい向上【収益性への貢献】
想像するに、成功大学病院のDXは、目的と効果がシャープに検討され実行されたように思われます。
DX担当者へのエール
経営サイドからDXの課題を突きつけられたご担当者の方々、これ参考になりませんでしょうかね。それとも、日本の病院でも既にこういうシステムになっているのでしょうかね。健康保険証のデジタライゼーションが完了していればいけると思うのですが。
こんな病院だとまた行きたくなっちゃいます。病気は嫌だけど。
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