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楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方 ー 企業家と投資家の共創こそが未来をつくる

読みました。この本を読んでみたい!と感じたきっかけが著者の市川さんのnoteの記事でした。

こういう読書もあるんだ、という興味から、題材とされた市川さんの著書を読んでみたいと思ったのです。もう一つは、ろくすけさんがブログでご紹介されていた記事です。

本の目次です。

序章
第1章 TBSへの提案と財務危機
第2章 ひとりIR
第3章 暴落後、反転
第4章 楽天の理念と価値創造プロセス
第5章 金融事業への毀誉褒貶
第6章 東日本大震災と直後の株主総会
第7章 一円ストックオプション導入とSR
第8章 東証一部上場と楽天イーグルス日本一
第9章 ヤフー・ショッピング無料化
第10章 IR活動の仕組み化
第11章 グローバル・オファリング
特別編 コーポレートガバナンス・コードと資本コスト
おわりに
参考文献
付録 インベスター・リレーションズ(IR)実践ミニ用語辞典

楽天の2回の公募増資(2006年、2015年)にIRという立場で関わられた市川さんの現場の体験がとても分かりやすい文体で語られていて、とてもスムーズに読み進めることができました。

あらためて知ったのは、上場企業は色々な制約がありながら活動しているんだなあ、と特に楽天のようにM&Aを積極的に行って事業を拡大している発行体にとっては。

特に印象的だったのが、2006年頃から楽天の株式を保有していた英国の投資家との関係です。第11章のグローバルオファリング直後の決算発表で株価が下落した際の、その投資家の言葉が響きました。

短期的な業績で株価は下がったけれども、あの日三木谷さんが言ったとおり、国内の事業の基本的な強さに変わりはなく、海外事業の損益もうまくマネージできている。いい会社に投資させてくれてありがとう

市川さんの表現で言うと、「妄想」、経営者の妄想こそが未来をつくるわけですが、その実現には資本が必要です。それを提供するのが投資家です。投資家が資本を提供するか否か判断するには、その妄想が新しい価値として実現される可能性を見積もらなければなりません。その過程で、その経営者が、会社が、どんな会社かという深い理解に加え、これまでどんな価値をつくりだしてきたかという実績が必須ですし、それが最終的に投資家のハートに響かないといけません。会社の人となりを、実績を、経営者の妄想を伝えるのが、IRの方の仕事なんだなあ、と思いました。先に述べた通り、経営者の妄想だけでは未来はつくれません。そこに資本を引っ寄せるための媒介者の一人がIR、重要な役割であることを学ぶことができました。

株式を発行する会社と、その株式を引き受ける投資家が手を携えてこそ、未来の価値は生み出される、実現するのだ、と。特別編「コーポレートガバナンス・コードと資本コスト」の最後に、

社会の変革に挑戦する企業の資金調達が低いコストで行われる。
そのような企業を応援する投資家が高いリターンを得て、そして年金や投資信託などを通じて
国民の資産が潤っていく。

と書かれていましたが、本当にその通り!と思いました。未来の価値創出を目指す会社をしっかりと選別し、オーナーとして関わることを通じて、共にその価値実現に至らしめる、そうした事例を一つでも多く積み重ねる、これこそが投資家の役割や責任の一つなのだろう、と思います。

株式投資、投資家の役割を考える、非常に良い読書となりました!

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