「対話」「エンゲージメント」 と #責任投資 (前編)
株式投資のリターン、果実は、その対象がどんな会社であっても、地球(環境)や社会との関係からもたらされるもの、最近、そう考えています。
というわけで、”ESG”という言葉を毎日目にすると、なんだかなあ、と思わずにはいられません。地球や社会に果実を育ててもらっている、だから、そこに対して責任がある、その責任を負えるような企業統治体制が必要。ESGとはそういう概念だと僕は理解しています。
ESGを考慮した投資判断「なら」投資のパフォーマンスが向上する、ということが起きたとしても、それは結果論に過ぎない。そもそも株式に、企業に投資する、そこから果実を得ようとするなら当然に考えるべき要素でしょう。
「責任投資」って呼ぶべきなんだと思います、ESG投資ではなくて。
「不買」ではなく「質す」
と題したコラムを寄稿しました。
#ユニクロ #ファーストリテイリング を例に挙げて、投信会社、投資家の責任はどうあるべきなんだろうか、と。
脊髄反射的に「不買」というのは、あまりに単純過ぎると思うし、事実をよくわからないままに逃げたりしてはいけないのでは、と。
この問題の背景にある事実はどんなもので、どこまで調査できて、それをどのような基準をもって判断するのか、それを会社に「質す」。それが、お金の配分を託されている機関投資家(もちろん、投信会社も含まれています)の役割、責任ではないか、と感じたのです。実際、僕もいくつかの投資信託を通じて、ファーストリテイリングの株式を保有しています。それだけに、この問題について、お金を託している投信会社にもっと突っ込んで確認してもらいたい、と思っています。
1日あたりのフィー 3000万円
日経225に連動するETF、最大の規模のファンドです。
2021年3月31日時点の純資産総額は 8兆1,874億円でした。
このファンドの運営に対する報酬として、野村アセットマネジメントさんは1日当たり3000万円程度受け取っていると試算されました。年で換算すると、110億円。
ファンドの資産のうち、3月末時点で10.6%をファーストリテイリングの株式が占めていました。つまり、この1日で322万円がファーストリテイリングを保有していることで発生した報酬と考えることができます。年で換算すると11.8億円。
野村アセットマネジメントさんは他のファンドも多数運営されていますし、ファーストリテイリング株式を保有していることで、より多くの報酬を受け取っています。
また、上記のファンドは日経225に連動するように運営することになっていますから、日経225にファーストリテイリングが外されない限り、売却することはできません。投資するかしないか、を自分の意思で判断できるアクティブファンドならば「売却」という選択肢もあるわけですが、インデックスファンドには無いと考えるのが妥当でしょう。
では、野村アセットマネジメントさんは、どんな行動ができるのだろうか、ということを考えてみると、投資先との「対話」、エンゲージメントです。
こんなページがありました。
当 社 は 、対 象 企 業 、お よ び そ の 事 業 を 取 り 巻 く 環 境 と 将 来への深い理 解が、投 資 先 企 業との建 設 的な対 話である エンゲージメントのスタートであると考えます。そして、エン ゲ ー ジ メ ン ト を 、ス チ ュ ワ ー ド シ ッ プ 責 任 を 果 た す た め の 最 も有力な手段のひとつとして位置付けています。
当 社 の エ ン ゲ ー ジ メ ン ト の 定 義 は 、「 会 社 に 対 す る 深 い 理 解 を 基 礎 に し つ つ 、企 業 が 望 ま し い 経 営 を 行 い 、企 業 価値向上と持続的成長を実現できるよう働きかけること」です。
こうした発信のベースになっているのが、スチュワードシップ・コードです。スチュワードシップ・コードの原則6です。
機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をど のように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。
こうも書かれています。
アセットオーナーは、受益者に対して、スチュワードシップ責任を果たすた めの方針と、当該方針の実施状況について、原則として、少なくとも年に1度、 報告を行うべきである 。
立派な報告書をつくるのも大切でしょう。でも、タイムリーに発信することも大切なことだと思います。
今回、このETFを取り上げたのは、日経225に連動するもので最大だったからです。投信協会の統計では、2021年3月末、日経225に連動するインデックスファンドは21兆円の残高がありますし、ウエイトこそもっと小さいもののTOPIX等のインデックスファンドでもファーストリテイリングの株式を持っています。要は、投信会社、業界全体が責任を負っているということです。
また、この種の問題を抱えている上場会社はファーストリテイリングだけではありません。そして、他にも様々な社会の、地球環境の問題が存在していて、それへの対処、対応、解決を迫られています。事業活動を通じて、それに向き合っている会社も沢山あります。
スチュワードシップ・コードからは、「責任」が投資家、アセットオーナーに対してのものを指しているように感じます。しかし、投資家の果実が、社会からもたらされる以上、その「責任」の目線は社会全体に向けられているべきではないか、そんなことも感じます。
その「責任」を果たす意味での、「対話」「エンゲージメント」について感じていることを、明日書いてみようと思います。
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