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思い出は心の片隅に。

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思い出は心の片隅に。
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今日は『立春』
昨日の節分を境に旧暦上では、今日から春。

そんな早春の今日、ノルウェーは晴れであった。外で太陽の光を浴びて深呼吸すると、冷たい空気が肺にスゥーっと入ってきて、身体中が冷たくなるのがわかる。

確かに、少しずつ少しずつ北欧にも春が近づいている。つい最近まで、日没は午後4時あたりだったけど、今では午後5時までに遅くなった。

授業終わりの家路。顔を上げてみると、北欧らしい広い空が遠くまで広がっていた。天気が不安定な、ここスタヴァンゲルではいつ雨が降るかわからない。まさに青天の霹靂を具現化したような天候だ。酷い時には10m先すら見えなくなるくらいにモクモクと霧がかかることも珍しくない。

だからこそ太陽が出てきた日には何か良いことが起こりそうな気がして少しソワソワする。

遠くで地平線へと沈もうとしている紅色に光る太陽。その周りでは橙色へと色を変え、そこから少し離れるとピンク色になる。もっと遠くなると、真っ青な空がまた遠くまで広がっている。

「こんな空を見たのはいつ振りだろう」

それくらいに、久々に綺麗な夕焼けを見れた。だいたいこういう瞬間は突然やってくるもので、そういう時に限ってカメラを持ち合わせていない。

「あーあ、少し重たい思いをしてでも晴れの日にはカメラを持ち歩いてた方が良いかな」

なんて思うこともあるけれど、こういう瞬間は写真として収めるよりも、心の片隅にこっそりしまって置いた方が良い。

心で記憶した思い出は、いつの日か、ふとした時にスッと舞い降りてくるもので、いつでも思い返されるような思い出でない方が良いのかもしれない。

そういえば、ちょうど3年ほど前に行ったフィンランドのラップランド。4日間ほどいたと思うのだけれど、肝心のオーロラはなかなか現れない。

人生で一度は見ておきたい絶景と呼ばれるだけあって、そう簡単には姿を現さないんだね。

滞在4日目最終日の夜。ナイトアクティビティでトナカイが引くソリに乗って、森の中を散策した。見上げるとそこには無数のダイヤモンドが散らばっていた。

すると、突然後ろで聞き覚えのある言葉を叫んだ人がいた。

「オーロラが見えるぞ!」

その方向を見てみると、緑がかった光のカーテンが極寒の夜をなびいている。消えては現れ、また消える。その繰り返し。くっきりとその存在感が確かにそこにはあった。

今でこそカメラを片手に写真を撮りに行くようになったけど、当時はスマホの写真で満足していた僕は、まさかそのスマホでオーロラを収めることなんか出来ないから心のシャッターを何度も何度も、何度も何度も切っていた。

そうした瞬間には腐ることがなくて、突然また思い返される。

思い出は形がなくても大切にしまって置く場所がある。

そんな貴重で尊い時間を過ごたフィンランド の夜を思い出した、春の始まりだった。

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