見出し画像

洋服記録97_青春ブラック

今年の春、
一番登場したコーディネート。

黒いジャンプスーツに、
黒いシースルートップス。

それぞれ別のブランドで購入したのだが、
合わせてみたら思いのほかしっくりときた。
細めと太めの対照的なフォルムも、
メリハリが効いていて良いと感じている。

それにしても、
ここまで徹底した上下ブラックに身を包むと、
高校時代の制服を思い出す。

中学時代は、
当時その界隈では珍しく私服通学であった。
高校に入って制服で校門をくぐった時には、
長年の夢が叶った誇らしさと、
ここから新たな世界が開けるような期待とで、
とにかく嬉しかったのを覚えている。

私の高校の制服(冬服)は、
見事な上下ブラックであった。
黒いブレザーに黒いジャンパースカートという、
シンプルで地味な装いではあるのだが、
特筆すべきはこのジャンパースカートという存在。
制服をおしゃれに着こなしたい女子学生にとっては、
かなり厄介な代物であった。

まず言わずもがな、上下がつながっている。
ブレザーを着るにも、カーディガンを羽織るにも、
上半身の生地が膨らむし暑いし、
とてつもなく邪魔になる。

そして、重い。
ただでさえ分厚い生地の制服なのに、
上下分ともなると重量感が半端ない。
ダッフルコートを着た時など、
文字通り重装備になり坂道がキツかった。

極めつけは、丈詰めが難しい。
スカート部分に大きめのプリーツが入っていたのだが、
ジャンパースカートという形態によって、
さらに丈詰めの難易度は上がる。

そんな理由もあって、
入学から1年も経たないうちに、
大多数の女子はジャンパー部分をカットしてしまう。
お直しに持って行って上部を切り取り、
ウエストで留めるタイプのスカートとして着用するのだ。

だが私は、
卒業までジャンパースカートで通した稀有な人間であった。
母親が許さなかったであろうことも大きいが、
とにかく制服を着られたことへの喜びが、
ハサミを入れることを躊躇わせたのだと思っている。

ある時、当時付き合っていた彼氏と、
学校帰りに自宅でデートしていた。
外では滅多に晒さないジャンパースカート姿であったが、
家ということもありカーディガンを脱いだところ、
「え、まだジャンパースカートなの?!」
と驚愕された。

制服を切らない女子=真面目で稀有な女子
という暗黙の認識があった男子高生にとって、
目の前にいる女と自身の認識とが結びつかなかったようだ。

その時に私は制服への尊敬や畏怖の念を語ったのだが、
その様子も彼にとっては珍しかった模様。
やけに真剣な顔付きで物思いに耽っていた。

一体何をそんなに真剣に考えていたのか。
その時は見当も付かなかったのだが、
卒業式にその謎が解けた。

式終了後、友人と話したり、
卒アルを書き合ったりしていた時、
遠くで後輩女子に囲まれている彼氏を見つけた。
(体育祭で応援団をやっていたりすると、
 後輩女子から人気を得るのはお約束)

遠目に私と目が合うと、
その人垣を掻き分けるように近づいてきた彼が、
にゅっと手を伸ばして私に何かを手渡す。

受け取って見てみると、
学ランの第二ボタンだった。

制服を愛する私への、
制服で表現できる愛の形が、
卒業式の定番、第二ボタンだったのだ。

後輩女子達の目の前で
特別感のある演出をされた喜びもあり、
(むしろこの優越感が大きかった可能性)
言葉を失うほど嬉しかった私は、
ああ、やっぱり制服って最高!と実感した。

あれほどの感動を生む洋服のいちパーツが、
果たして今まであっただろうか。
洋服は大好きだけど、
あの時ほどボタン一つに感動することが、
果たして今後あるだろうか。

10代の愛すべき思い出と、
アラフォーで組んだコーディネートが重なる今日。

ああ、やっぱり洋服って最高!

ブラックのコーディネート備忘録

この記事が参加している募集

#買ってよかったもの

58,881件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?