【レトリック詞】であって、でない
私が勝手にレトリック詞と呼んでいる形式の散文を紹介いたします。戯れ言ですので、文字どおりに取ったり、真に受けないでください。今回は「であって、でない」というタイトルで、テーマは「文字を文字どおりに取る」です。
であって、でない
であって、でない。
Aであって、Aでない。
Aという文字であって、Aというものではない。
つまり、Aであって、Bでない。
*
であって、である。
Aであって、Aである。
Aという文字であって、Aというものでもある。
つまり、Aであって、Bである。
*
は、であって、でない。
猫は、猫であって、猫でない。
猫は、猫という文字であって、猫という実体ではない。
つまり、猫は、猫であって、猫でない。
*
は、であって、である。
猫は、猫であって、猫である。
猫は、猫という文字であって、猫という実体でもある。
つまり、猫は、猫であって、猫である。
*
猫であって、猫でない。
猫であって、猫である。
猫は、猫であって、猫でない。
猫は、猫であって、猫である。
文字と実体の区別もせずに、人は猫と書く。
猫は猫。とっても明快、明解、明晰、平明、分かりやすくて、超論理的。真理は常にシンプルなの。
分けることが大好きなのに、肝心なところで分けない、分からず屋。
信じる者は救われる。
Seeing is believing.
見ることは信じることなり。
人は見たことを信じてしまう。
人は見たことを信じるしかない。
百聞は一見にしかず。
百回聞いたことも一回見ただけで一転する。
文字を文字どおりに取ると馬鹿を見る。
文字を文字どおりに取らなくても馬鹿を見る。
文字を文字どおりに取る、文字を文字どおりに取らない。
きわめて気まぐれで、行き当たりばったり。
自分もふらふら、相手もふらふら、話が噛み合うわけがない。
*
Aであって、Aでない。
Aであって、Aである。
Aは、Aであって、Aでない。
Aは、Aであって、Aである。
文字と実体、○という文字と○というもの、文字と文字ではない何か、○という具象と○という抽象、○という物と○という観念。
目の前にあるものを文字として見ないことから、すべての学問は始まる。
目の前にあるものを文字( letter )として見ることから、文学( letters )が始まる。
ここと向こう、こことかなた、文字を文字どおりに取ると文字を文字どおりに取らない。
ふたつのあいだで、ゆれる、ぶれる、ふれる、振れる、震れる、狂れる。
というか、振れる、振られる、振りまわされる。
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