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森と湖の国のあの人(フィンランドを訪ねて)前編

ちょうど10年前、運良く会社の海外研修でフィンランドに行くことになった。
フィンランドといえば、北欧デザイン、ムーミン、サンタクロース、オーロラ、雄大な自然…などなど、個人的には心ときめくワードが多い。

当時の研修プログラムは、現地の保育園での3日間の実習。そして、ホームステイプログラムだ。
教育先進国である北欧などのヨーロッパにいくことは、なかなか保育士さん達にとって、ハードルが高い。
そんな彼女たちへの、会社からの学びの機会に、本社勤務のわたしも便乗させてもらった。
フィンランドの、すてきなファミリーのおうちに泊まれるなんて、それだけで胸が高鳴った。

出発前。
ホストファミリーの家にお土産を持って行きたい、そう母につげると、「ちょっとまちな」といって、何やら押し入れの奥からゴソゴソと引っ張りだしてきた。
それがこちら。

たしかにそうそうたるメンバーだし、奇跡的に、欧州という文字も入っている。
しかしなぜこれが我が家にあったのか。今でも謎である。
ちなみにこの数年後に、錦糸町の焼肉屋で、横綱の白鵬に遭遇したことがある。

フィンランドで出会った風景

フィンランド研修は特に思い出深いできごとだった。
書きたいことはありすぎるのだけど、なかでも今回はホストファミリーの女性のことを書きたい。

彼女の名はピニー(仮称)。
私が3日間実習をする、保育園で園長をしているのが彼女だった。おそらく100名はゆうに超える、大規模な保育園の責任者だ。
その保育園をおとずれ、はじめて彼女と対面した。
母親ほど歳が離れているであろうその人は、事務所からひょっこりと顔を出して、それはそれはあたたたかな、チャーミングな笑顔で迎え入れてくれた。
異国の地で多少なりとも緊張していた心が一気にゆるんだ。

そこからピニーの家で、数日過ごした。

赤い壁がすてきなおうち。家でも、古いほど価値が高いのだよと教えてもらった。
家の前の風景。フィンランドは広い国土に広大な森や湖が広がる自然豊かな国だ。

真っ赤な壁の小さな一軒家。こぢんまりとした庭には、小さなりんごの実がなる木もある。
築何十年も経ってるであろうこの家を、ピニーは大好きな赤に塗り替えたそうだ。
私は一目で、この家が好きになった。

フィンランドは白夜があったり、曇天が多く、鬱になる人が多いときいたことがあった。だからこそ、家の中の暮らしやおくものにこだわっている。

家の至るところにキャンドルがある。朝や夕方はキャンドルの灯りを灯して過ごすことが多かった。

わたしが一緒にステイしたのは、当時、うちの会社で園長をつとめていた女性だった。わたしは心の中で、彼女を勝手に「カーリー」と呼んでいた。
カーリーは厳しい人と有名で、たしかにかなりのマシンガントーカーだったため、職員の中には萎縮する人達もいた。

「りっちゃんしか一緒にペアになれる人がいないからよろしくね…」と、研修担当の人に申し訳なさそうに言われ、私は問答無用で、カーリーとペアになった。
あんたならとりあえず大丈夫だろう、という謎の理由からものごとを頼まれるのはこれが初めてではないけど、フィンランドにきてまでその役回りなのか。
たしかに30ほどは離れていたであろう彼女も、私のことはりつこさん!りつこさん!と呼んでくれて、なぜか良くしてくれていた。しかし、若手の保育士さんからしたら、彼女のマシンガントークはtoo muchだ。
わかったよ、こうなったらカーリーととことんフィンランドを満喫するよ、と最後は腹を括った。

後編に続く。

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