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デンマークのライ麦パンを焼けるようになるまで

デンマークのライ麦パン、ルブロ(Rugbrød)。今では気軽に焼けるようになりましたが、ルブロを焼きたい!と思い立った当初、かなりの試行錯誤と探索の旅がありました。

特にルブロに不可欠なサワードウは難しかった。

インターネットや書籍ではなかなかわからないライ麦パン、ルブロとサワードウについて、私が学んだことをいくつか書いていきたいと思います。コロナの影響でおうちベーキングは世界のトレンドとして増加中ですね。学びを少しでもシェアできたらと思います。

スタート→大失敗の連続

ルブロを焼こうと思った私が最初に入手したのは、こちらの本。

デンマーク人の料理研究家でロンドン在住のトリーネ・ヘネマンさんによる、北欧のベーキングのレシピ本です。

当時はデンマーク語はわからず、英語のレシピに頼るしかありませんでした。私が買った時は、日本で買える北欧のベーキングに関するレシピ本は、ほぼこの本だけでした(ヒュッゲが注目されて以降、北欧の料理本は増えています)。

さっそくサワードウを作ることにトライしましたが、見事に失敗。
家庭用のレシピで取り組みやすいかと思ったものの、失敗ばかりでした 涙。

サワードウにカビや雑菌が生えるといったトラブルはありませんでしたが、パンを焼くのに十分な発酵を作り出せていませんでした。発酵を進めようとしたら酢酸発酵になってしまい、ツンとするお酢のような臭いにがっかりしたことも。
作ってみてダメ→原因を調べてみる→ライ麦粉の種類が違う、石臼挽きの方がいい、などの情報を得る→粉を変えて作ってみて、またダメ。。。救済できないほどの失敗パンを眺めては絶望的な気持ちになりました。

失敗の理由は数え切れないほどありますが、今振り返ると、主には下記の3つでした。

サワードウ失敗の理由
① サワードウの発酵が十分進んでいるかわからない
② 1月は寒く、発酵に適切な温度管理が難しかった
③ バターミルク(発酵乳の一種)のレシピだけど入手困難

今考えれば、当たり前のことばかりですが…全くわからないで始めると、意外に難しいです。そして、原因①に対応すべく、正しいサワードウとはなんぞや!ということを学ばなければ、となりました。

ドイツパンに学ぶサワードウ

自家製サワードウを学べるパン教室を探し、私はPSパパンというパン教室にお世話になりました。

様々な自家製酵母を使ったパンを学べるパン教室です。ライ麦のサワードウでは、カンパーニュや香ばしいひまわりのタネのパンなど、いろいろなドイツパンを焼きます。最初は教室の酵母を分けていただいて持ち帰り、家で練習できますし、もちろん酵母の作り方も教えてもらえます。

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こんな素敵なカンパーニュが焼けるようになります

サワードウを学ぶということでは、本当に勉強になりました。

サワードウを使ったパン作りのポイント
・ライ麦粉は輸入物を使ったほうが確実。日本産はパンが膨らみにくい
(同じレシピでもうまく焼けないことが多い)
・ライ麦はグルテンがほとんどないため、ライ麦100%のパンは難しい
(小麦粉入りの方が扱いやすい)
・小麦粉は準強力粉を使う。灰分が高い準強力粉は粉の旨味が出る
(強力粉だと味も食感も異なる)
・発酵の間の温度を一定に保つことが大切

サワードウのパンが焼けるようになって、とっても嬉しい!
家で焼きたてのパン、美味しくて本当に嬉しい。

ただ、残念な発見がありました。一通り学んでわかったのは、ドイツはドイツ、デンマークのルブロに近いものはない!ということでした 涙。
ドイツはデンマークと隣だし、どこかで近いパンがあるのでは、と期待していたのですが、目指していたデンマークのパンとは違う。

レシピや作り方がいろいろ違うものを、どこを工夫したらルブロに近づくのか、わかりませんでした。

デンマークで学ぶルブロ

そしてとうとう、デンマークにルブロの作り方を学びに行くことにしました。
ライ麦パンの作り方を英語で教える教室はほとんどなく、探すのに苦労しましたが、2つの料理教室に加え、パンを焼いている方だったので、airbnbのホストに教えてもらいました。

実際に行ったのは、有名ベーカリー&レストランを持つ、マイヤーズのベーキングコース、そして料理研究家の自宅で行われていたCPH Good Food(2020/9現在は開講されていません)でした。どちらもサワードウを使ったルブロと、シナモンロールやデニッシュなどを教えてもらいました。

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Airbnbのお宅のキッチンで、ホストのレシピでライ麦パンを学ぶ

英語のクラスのためデンマーク人はごく一部でしたが、現地在住の方向けのコース。デンマークでは家でパンを焼く人が圧倒的多数ですが、サワードウで焼いてる人は多くないことがわかりました。さらにライ麦パンを家で焼いてる人はかなりの少数派!
そんなデンマークで実際できるようになることを重視した内容だったので、どのように焼き続けていくか、のヒントがたくさんありました。

デンマークで学んだこと
☆ ルブロは水分がとても多いため、焼き上がりの確認は温度計が必須
☆ サワードウは味が良いが、コントロールは難しい。発酵が弱いときは微量のイーストを併用する
☆ サワードウは強いので、何週間も冷蔵庫で生き続けられる

実際にデンマークで学んだことで、サワードウやライ麦パンの生地の様子など、良い状態の見分け方が分かったことはとても大きかったと思います。
この時学んだライ麦パンのレシピ、今でも焼き続けています。

もちろん、帰国してからレシピどおりにやっても同じ味にはならず、レシピを微調整したり、発酵時間を変えたり。何回も焼いてみて、自分なりに「成功するレシピ」、そして気温の変化や自分の仕事のスケジュールへ合わせながらパンを焼くことを覚えました。


こうして私は、デンマークのライ麦パン、ルブロを焼けるようになりました。今でも毎日、美味しいです。

ルブロに興味のある方はぜひコメントください。
できる範囲で、お分けしたいと思います。



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