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デンマークのライ麦パン サワードウの作り方

今回は、デンマークのライ麦パン、ルブロ(Rugbrød)で使用しているサワードウ(Surdej スーアダイ)の作り方や使い方について、書いていきたいと思います。

だいぶマニアックな内容かと思いますが、私が学んだ、デンマークのサワードウに特化したところで書いていきたいと思います。

デンマークのサワードウ

私は現在、4〜5種類のサワードウを使っています。全て、材料の粉や水と混ぜて8時間〜24時間発酵させ、後から粉やライ麦粒などと混ぜてさらに発酵させる作り方で使います。

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(右から)
・ライ麦100%用サワードウ、デンマークのベーカリーから
・スタンダードなライ麦パン用、デンマークの友人から
・ライ麦比率50%のライ麦パン用、デンマークの友人から
・ライ麦比率の高いライ麦パン用、自家製

大きくは2つのタイプに分かれています。

①スターターのようにかけつぎするもの
(使用する前にかけつぎ、最長4週間保存可能)
②生地の一部を取っておき、次のパン生地に直接入れるもの
(最長2カ月保存可能)

自家製と書いたもの以外は、私はサワードウをデンマークの友人たちから分けてもらいました。使われ続けているサワードウは菌たちが安定しているので、パン作りの成功率が上がり、楽になります。ご友人でサワードウで焼いている人がいたら、タネを分けてもらえるととても良いと思います。

ただ必ずしも環境が変わってもサワードウが大丈夫か、といえば、保証はできません。
デンマークで聞いた話ですが、引っ越した途端、何年もパンを焼いてきたサワードウが突然死んでしまったそうです。環境が大きく変わったからか、新しい家の何かがサワードウにはダメだったのか、わからないと言っていました。
最初に分けてもらったサワードウたちも、幸運なことに私の家の環境や材料たちに順応できて、今があります。


サワードウの作り方

基本の作り方は、粉と水を混ぜて、放置するだけです。
サワードウを起こす時はライ麦粉や全粒粉が混ざっている方が望ましい菌が繁殖しやすいと言われています。

小麦粉:全粒粉:ライ麦粉:水=1:1:1:3

私は今年の春、日本産の無農薬ライ麦粉を使ってサワードウを起こしました。その時は、デンマークの有名ベーカリー、マイヤーズのレシピを使用しました。粉と水を混ぜて、常温に4〜5日間置いておきます。泡が出てきてヨーグルトのような酸っぱい香りがすれば、準備ができています。
(ライ麦のサワードウにするには、かけつぎ(refresh)数回が必要)

サワードウを作るためのレシピとしては、ヨーグルトなどの乳酸発酵食品やハチミツを混ぜる、ビールを混ぜる、少量のイーストを混ぜるなど、様々なやり方があります。
パン酵母になるだけのイースト菌の発酵と、美味しさに繋がる乳酸菌を活性化することが重要なため、菌のエサになるハチミツなどの甘みを入れる、乳酸発酵を促すために乳酸菌のある食品を入れる、イーストを追加することで天然のイースト菌を活性化する、ということだと考えられます。

ただしこのレシピはデンマークなどヨーロッパのもの。高温多湿になりやすい日本では、置いておくだけの発酵だと、失敗する確率が高めです。上記のレシピでもかけつぎをしていきますが、最初の数日間かけつぎをしていくレシピの方が雑菌が入りにくく、成功率が高いと思います。

デンマークのベーキングスクールで聞いたところ、各地でサワードウやパンの作り方はそれぞれ違うものの、今は情報交換が進み、お互いのレシピのいいところを学びあっているので、各地のレシピはだいぶ近づいているそうですよ。


サワードウ発酵のコツ

実は、私が当初挑戦して失敗した時は、酢酸発酵になってしまいました(乳酸ではなく、食酢のようなツーンとする酸味)。乳酸発酵を促進するってどうすればいいのー?となりました。私が学んだ大切なことは、下記です。

サワードウを起こすために大切なこと
・水温がとっても大切!
・発酵に適した20−27℃くらいの気温
・有機栽培や無農薬栽培で、できる限り挽きたての小麦粉・ライ麦粉
 (スーパーで買うなら一番新しい日付のものを選ぶ)
・塩素が入っていない水

サワードウの発酵は、菌の活動がどれだけ活性化されるか、ということになります。使われている粉や置かれている環境によって大きく影響されるので、もうやってみるしかない、というのが正直なところ。
一番コントロールしやすいのは、水温です。活性化するには温かめ、活性化が早すぎる(=早く発酵が落ちてしまう)なら少し冷たい方へ。気温に合わせて多少変える必要がありますが、私は温かめの30度を目安にしています。

あとは発酵に適した気温ですが、これは住んでいる環境によって違います。部屋のどこに置くかでも影響されます。私の家は古い戸建てなので、部屋の中でも1日の気温差がかなり出てしまい、コントロールが難しい。そのため、発泡スチロールのクーラーボックスを発酵箱として温度管理をしています。ちょっと温かめのお湯の入ったペットボトルを入れたり、という管理です。

その他、私が気をつけていることは下記です。これは人によって意見が異なります。参考として。
・金属のボウルを使わない
・混ぜる時に空気を混ぜ込むため、ウィスク(泡立て器)を使う
・状態を知るには必ず味見する(匂い、味)


サワードウとの付き合い方

あるレシピでサワードウを起こすのに挑戦していたときのこと。少し発酵に元気がなくて、どうしたらいいかなー?と相談したら、デンマークの友人たちのアドバイスは様々でした。

「ビールちょっと混ぜておいたら?」
「はちみつ入れると元気になるよ」
「イースト(生イースト)を少し入れておけば大丈夫!」

人や家庭によって、本当に様々なやり方があるんだなと学びました。それは、まさにぬか床のお手入れ!という感じ。必ずしも成功しないかもしれない、でも、自分のはそれで美味しくなったよ、という成功体験に基づいたアドバイスでした。

私にとってサワードウは、パンを焼くための相棒。

絶対に他のものを混ぜない!とかっていう厳しいコントロールをするよりは、ご機嫌で元気な状態でいてもらいたい。そのために、ちょっと愛情を注ぐという意味でお手入れをしていくと、美味しく元気なサワードウになっていくと思います。


今はinstagramやyoutubeにいろいろなチュートリアルが存在しますので、コツと思っていることのシェアとしては、この辺で。

私のやり方で聞いてみたいこととかあれば、コメントください。
サワードウに取り組まれている方、一緒に楽しみましょう!



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