見出し画像

今期のドラマの最終回〜フジテレビ「この素晴らしき世界」

今週は今期のドラマの多くが最終回を迎えた。木曜日はテレビ朝日の「ハヤブサ消防団」とフジテレビの「この素晴らしき世界」。「ハヤブサ消防団」はこれまでチェックしておらず、今日の昼過ぎにやっていた1話からのダイジェストを観て、最終回に臨んだ。「この素晴らしき世界」は全話リアルタイムで見ていた。別にハヤブサより素晴らしき世界の方が面白いからというわけでもない。あくまでなんとなく。

この2つのドラマはいままさに世の中で話題となっていることを取り上げていた。
「ハヤブサ」はカルト宗教であり、もちろんこれは旧統一教会を意識しているのだろう。
「この素晴らしき世界」は芸能界やテレビ業界におけるセクハラ、パワハラ、モラハラや芸能事務所への忖度などなど。「ハヤブサ消防団」は最終回以外、ダイジェストしか見ていないので、今日は「この素晴らしき世界」の方を中心に、最終回を見ての感想を書きたいと思う。

当初、主演にキャスティングされていた鈴木京香が体調不良で降板し、若村麻由美に交代したという話に興味を持ったことが、このドラマを見始めたきっかけだった。女優が変わるとドラマはどう変わるのだろうという興味だ。とはいえ、鈴木京香版がどういうものになるかは見られないのだから、あくまで想像の上での比較である。プロデューサーによれば、主演が変わったことで多少の台本変更はあったが、大人のコメディ&サスペンスを目指した物語自体は変わっていないとのこと。

で、最終回まで見ての感想であるが、鈴木京香が主演だった場合の方がコメディ色が強くなっていただろうと思う。三谷幸喜とのタッグで、コメディエンヌ的な部分が開花したといわれる鈴木のことだから、多分、演出もそれを意識するだろうし、鈴木自身の役作りも三谷色は払拭できず、ドラマも三谷幸喜的コメディ色が強くなっていたことだろう。私の勝手な想像ではあるが、ドラマの空気感は結構違っていたんじゃないだろうか。

若村麻由美は三谷幸喜的なコメディには呼ばれそうにない女優である。三谷幸喜が望むような、ある意味記号的なーアメリカンな演技とは無縁な感じがする。仲代達也の無名塾で演技指導を受けていた女優はその存在自体、三谷幸喜とはあまり縁がなさそうだ。鈴木京香のコメディエンヌぶり=三谷幸喜的と決めつけるのもなんだが、どうしてもそういうイメージで見てしまう。そうすると、脚本の方向性が同じであるはずがないと思っちゃうのだ。

社会風刺よりも人間讃歌が得意と思われる三谷氏。そのイメージの強い鈴木京香が主演を務めるとしたら、このドラマの最終回はどちらかというと平凡の中の幸せを落とし所にしたもうちょっとお茶目なドラマになったように思う。社会は変えるものではなく、今の社会を前提に、その中で幸せに生きていくとしたらを考える、もっと家族に焦点を当てたドラマだ。しかし、主演が若村麻由美に変わり、彼女のキャラクターに合わせたドラマにしようとした場合、ベクトルは逆になる気がするのだ。なんとなく彼女には今の社会が生きづらいなら、みんなで変えていこうよっていう空気感がある。 制作側は現在世の中で注目されている事象と彼女のそうしたキャラを活かして、脚本を書き直したのではないだろうか?

そもそも、このドラマの脚本は「ダメ男をやっつけろ」がコンセプトだったそうだ。確かに、いまだに「終わってる、、、」と思える男たちの発言が、このドラマには頻発する。今、現実の社会でも問題となっている男社会の硬直したヒエラルキーや、自分達が正義だと信じて疑わず、下の世代の声を聞かないジジイたちをモデルにしたような登場人物が居並ぶ。こうしたジジイたちをデフォルメしたような登場人物と言いたいところだが、もはや現実の方がフィクションを追い越してしまい、ニュースやワイドショーで流れるそうした現実のジジイたちの言葉の方が、コンプライアンスや視聴者の反応を気にしたドラマ脚本のセリフよりずっと下品で、酷いものになってしまっている。こんな社会状況のもと、別にテーマは「ダメ男をやっつけろ」でも良かったのかもしれない。しかし、このドラマには展開要素として、現在、世の中から最も注目されている出来事が盛り込まれていた。

お分かりかもしれないが、芸能事務所とタレントの関係性の問題と、マスメディアによるスキャンダルもみ消しの問題である。主婦の妙子が女優の若菜絹代に扮してテレビ局で見たものはまさにこれだった。ドラマの中では、普通の主婦が芸能界に入って、やはり噂は嘘ではなかったとうなづくが、それを見ながら、視聴者である私たちは、やっぱりねと思いつつ、
現在、世の中で注目されているジャニーズ事務所の問題やちょっと前の#metoo運動を思い出すのである。制作陣は、ドラマのクライマックスに向け、今はこの問題を最終回のメインに据えた方がいいと考えたのだろう。若村麻由美が主演なら尚のことである。

最終回では、女優の若菜絹代に扮した若村が、テレビの生放送をジャックして、これまでの芸能界の仕組みの中で、自分はカゴの中の鳥であり、自分を育ててくれた事務所の言いなりでここまでやってきたが、こうした慣習のようなものを、若い世代に持ち越してはいけないと語った。そして、一方で、自分自身はここまで自らを育ててくれたプロデューサー的な人物には感謝しているとも。また、これまで巧妙に揉み消されていたテレビ局員の悪事も暴いた。このテレビ生放送で若菜絹代が1ショットで語るシーンは数分に及び、最終回は、ほぼ、このメッセージを伝えるために存在したという印象だ。

そこで思い出したのが、あのSMAPの謝罪会見である。
ジャニーズ事務所から独立しようとする動きを見せた木村拓哉以外のSMAPの面々は、フジテレビに特番を組んでまで、お騒がせしてすいませんと、世間とジャニーさんに対して謝罪を行なった。なぜ、テレビの電波を使ってまで、ジャニーさんに謝らねばならないのか、、、。このことの賛否はかなり物議を醸したが、ジャニーズ事務所を批判する大メディアはほとんどなく、その後浮上したジャニーさんの性加害問題も含め、マスメディアのジャニーズ事務所への忖度が浮き彫りとなった。

この「この素晴らしき世界」最終回で、若村麻由美が語った長台詞は、ドラマの中で会見という形を取っていたこともあり、かつて、現実において、「SMAP謝罪会見」というメディアの酷い忖度の象徴のようなことをやってしまったフジテレビの懺悔のようにも見えた。

このドラマの脚本はプロデューサーの鈴木吉弘氏がペンネームで書いたという。
30年前に一度企画しながら実現しなかったものを、現代に合わせて作り直して、再挑戦したそうだ。30年前は、主人公の設定はもっと若く20代前半のアイドル。現在の木曜劇場はもっと大人が見る枠なので、それに合わせた大人のコメディ&サスペンスにしたとのことだ。

でも、30年前にこの企画が通らなかったのは当然かもしれない。また、通ったとして、今回のドラマの最終回にあったような、テレビ業界や芸能界に対して反省を求めるような長いシーンは入れ込めなかったかもしれない。今、海の向こうではハリウッドの大物プロデューサーのセクハラパワハラが暴露され、子どもへの性加害問題でイギリスの大物芸能人が失墜し、それで日本でもやっとジャニー喜多川氏の性加害問題が取り上げられ始めた。萎むのが早かった印象はあるが、芸能界における女性へのセクハラパワハラも一部問題となった。ジャニーズ事務所に関しては、事務所の独占禁止法違反疑惑にも目が向けられた。世の中にそういう風が吹き始めたからこそ、最終的にこういう形でドラマが世に出ることになったのだろう。偶然ではあるが、女優が鈴木京香から、より社会性を感じさせる若村真由美に変わったことも、このドラマをこういう落とし所に持っていく一助となったかもしれない。

視聴率は低迷していたらしいし、それほど話題にもならなかったし、最終回の若菜絹代の演説も、もう少し心を打つものが書けるのではないかと見ながら思った。でも、ここにフジテレビとして、SMAP謝罪会見をやってしまったことや、特定の芸能事務所や政治家への忖度に対する社員スタッフの反省の気持ちや、テレビ業界の奢りを自覚する謙虚な気持ちがあってのこの最終回の脚本だとしたら、少しはそれを評価したいと思う。そして、それが、私の勝手な想像でなく、本当にそうであることを祈る。

これが「この素晴らしき世界」最終回を見ての感想です。


**************************************************

【引き続き生活費治療費緊急支援のお願い🙇‍♀️】

こんな文章を書いていると、生活に余裕があるのかと思われてしまいそうですが、実はまったくその逆で、この月末までの支払いを乗り切れない瀬戸際におります。この夏の体調の悪さで収入が得られなかったのが原因です。ただ、まったく何も提供せずにサポートをお願いするのはいかがなものかと思い、何とか文章を書き、少しでも面白いと思ったらご支援願えないだろうかと思って、こうして新しい文章をアップした際にお願いをしている次第です。

この夏、体幹のつっぱりが強くなり、動くのが非常に困難で、一日中椅子の上で過ごす日々が続きました。鎮痛剤の副作用で昼間の眠気に襲われ、完全に横になることができないので、寝る時もリクライニング椅子で座って寝るような状態です。そんなことで、このところnoteの更新もなかなかできず、毎月いただいている企画書作りの仕事をするのがやっとで、それではまったく生活できない収入にしかなりませんでした。そんなこともあり、現在、所持金も尽きてきて大ピンチにあります。

今の状態でも文章が書けるような体調に持っていけるよう、養生し、鎮痛剤の飲み方なども考え、今後できるだけちゃんと“仕事”をしたいと思いますが、今しばらく、この8月は助けていただけませんでしょうか。クラウドファンディングをやろうかとも思いましたが、手数料が20~30%も惹かれるので、自分で寄付サイトを作ってお願いしております。

常に自転車操業で気持ちも安まらず、まとまった収入をどこかで作り、そこから落ち着いた気持ちで、養生、文章や音声での発信をしていければと思っています。体調は行ったり来たり、比較よくなった時の状態を保てるよう、養生法を工夫せねばと思っています。
いつも、同じ方からご支援いただき、心苦しい限りですので、もっと広く多くの方にこの状況を知っていただきご支援願えるよう、このnoteやサポートのお願いについて、情報拡散もお願いできれば嬉しいです。サポートは以下のリンクよりカード決済にて行えます。私へはそのうち3.75%の手数料が引かれた分が振り込まれます。
何卒よろしくお願いいたします。助けてください。

火鉢クラブ=中村有里の活動サポート窓口
https://checkout.square.site/merchant/ML9XEFQ92N6PZ/checkout/QJBOWTPES6Y42SAEUEYR6ZRC

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?