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トラブルシューティング

私のハンドルネームにもなっている我が家の愛犬、ぺぱおくん。
4歳半のミニチュアダックスフンド、超穏やか、超内向的、めんどくさいことが嫌い、家の中でぬくぬくすることが何よりも幸せ。攻撃的なところなんて微塵もない、優しい、優しい我が家の良心だ。

ただし、ものすごくビビりでものすごくテリトリー意識が強い。

テリトリー意識についてはダックスフンドは性質上もともとそうだと言われている。だから仕方ないと開き直るわけではないが、外の物音、訪問者に対してはひとしきり吠えないと気が済まない。そしてまた声が通るんだな。子供二人の泣き声と相まってこっちの頭がおかしくなりそうになることもしょっちゅう。一通り吠えて相手に脅威がないことが分かればスンと静かになる。そしてコロッとお腹を見せたりする。

そして彼のものすごく特徴的な点が、とにかく極度の犬嫌い。
人間は大好きだし小さい子なんかに絡まれてもずっと我慢していられるのに、犬が寄ってくると後ずさりして唸る。ドッグランなんて彼にとっちゃ地獄。向かいから犬が歩いてくればしれっと道を変えるレベルの犬嫌い。

そんな彼を連れてマンションの中庭を歩いていたときのこと、向かいから可愛らしい幼いプードルを連れたお姉さんがやってきた。さりげなーく避けて通ろうと思ったとき、プードルちゃんがお友達になろうよーと寄ってきたのである。ゆっくりと寄ってきたので、嫌がるかな~でも少しは挨拶できるかな・・と様子を見ていたのだが、ぺぱおは「窮鼠猫を噛む」状態で牙をむいて一声吠えてプードルちゃんを追っ払った。

やっちゃった・・・

ぺぱおの親としては、この子が怖かったから強く出て追い払いたかっただけで、決して噛んだり傷つけたりしないこと、誰よりもよくわかってる。だから「やっぱ嫌だったか」で終わりなんだけど、プードルちゃん連れてたお姉さんの私を見る目たるや…。

(なんなの、この凶暴な犬、信じられない。あなた正気?!)

とは言ってない。彼女はOh my god…としか言っていない。言ってないけど顔が如実にそう語っていた。

もちろんすぐに謝って、怖がりで吠えてしまうんだ、ごめんなさいと伝えた。それでも彼女の表情が和らぐことはない。恐怖と蔑みが入り混じったあの目に、私は心をえぐられ、二つの感情に支配されそうになった。

ぺぱおを責める気持ちと、そのお姉さんに対する、敵意。

すぐに家に帰って、心を落ち着けた。どっちの感情も、大間違いだ。

ぺぱおは怖かっただけ。彼はトラブルになりたくないから、関わってくれるな!とプードルちゃんに伝えただけ。プードルちゃんはその場はびっくりして離れたけど、もちろんケガも一切無ければ、トラウマにすらなってないだろう。犬の「吠える」なんて、犬同士じゃそんなもんだ。ぺぱおは悪くない。プードルちゃんも当然悪くない。

お姉さんも怖かっただけ。自分の大切な大切な赤ん坊であるプードルちゃんが攻撃されたんじゃないかと「母」としての本能が発動した。幼かったし、たぶんまだそんなに多くの犬とは関わらせていないのだろう。大切に大切に育てているのだ。気持ちは痛いほどわかる。人間だれしも、自分が理解できないものは、怖い。

じゃあ誰が悪かったんだろうか。私か。私が、事前に察知して関わらせないようにすべきだったか。寄ってくるプードルちゃんが見えた時点で、うちの子犬苦手だからごめんねーと避けるべきだったか。

でも、これが我が家のキッズだったらと考えてみたの。

同じようなこと、人間の子供でも腐るほどあるだろうなって。むしろもっと複雑で、もっとセンシティブな話が、山ほど出てくるのだ。そういうときに、親が全てを事前に察知して、トラブルを回避することが正しいの?

そうじゃなくない?

トラブル回避して気持ちいいのって、双方の親だけじゃない?

子供は、失敗して、もめて、怒って、怒られて、謝って、謝られて、反論して、説得して、和解して、そうやって生きていかないとだめじゃない?

飼い犬の場合はもしかしたら、トラブル回避が正しかったかもしれない。なぜなら彼らは一生飼い主に庇護されて生き、いずれひとりで外の世界に羽ばたくという前提がないから。でも子供は違う。トラブルは、そしてもっと言うならトラブルシューティングする力は、人生の欠かせない構成要素だ。

そのために親にできることって何って言ったら、トラブルを起こさないことじゃなくて、トラブルを解決する姿を見せることなんだろうなって。だから、怒られることや責められることを怖がらず、きちんと謝ったり、悪くないならきちんと説明したり、お互いが納得いく解決策を提案したり、逆に被害者になったときに、感情的に責めずきちんと建設的な話をするとか、そういうことを、ちゃんとやっていくということなんだろう。

そんなことを思った私は、ひとつ心に決めた。

今度あのお姉さんとすれ違ったら、笑顔でこの前はごめんなさいねと言おう。彼女の表情が和らぐまで、ぺぱおへの誤解がとけるまで、ママは歩み寄る努力をしよう。伝わらないかもしれないけど、そのときは、しゃーないなって笑ってぺぱおを抱きしめよう。







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