マガジン

  • 殺伐感情戦線への投稿作品

    殺伐感情戦線へ投稿した作品です。 過去に投稿した物も少しずつ乗せていきたいと思います。

  • 映画の話

最近の記事

落ちる実験(2022/5/7.お題:塔)

 君が塔から落ちるのはそれが初めてだった。  それを止めようとして間に合わなかった私は、君の後を追って塔から落ちた。  君が塔から落ちるのはこれで10回目だ。  ようやく私が間に合って、伸ばした手が君に届いたと思ったら、私も一緒に塔から落ちてどちらも死んだ。  君が塔から落ちるのはこれで20回目だ。  今度は下で受け止めようとして、私は君の下敷きになって、君は頭から私に突っ込み、どちらも死んだ。    君が塔から落ちるのはこれで30回目だ。  また、どちらも死んだ。  

    • 起きない(2022/1/23.お題:静止)

       春海ちゃんと私が最後に会って話した日に私達がどんな事をしゃべっていたかなんて、私はろくに覚えていない。 「昨日さ、ネズミの死骸を見たんだよね。剥製のように綺麗だったけど、全く動かないし、毛並みに艶もなかったから、あれは眠ってるんじゃなくて死んでたんだって思うんだ。それでね、今朝、ネズミを見付けた場所に行ったら、もう死骸は無かったよ。きっと誰かが片付けてしまったのかな」  でも、春海ちゃんのその言葉だけは、何故か私の記憶にはっきりと残っている。  昨日、今年初めての雪が降った

      • 堕ちてくれないかな(2021/12/25.お題:天使)

         私にとって妹は天使だ。  とても可愛くて、優しくて、頭も良い。私とは全然違った。  全然違うのに、私と妹は周りから比べらる事が多かった。  ただの人間である私が、天使と比べられてきて耐えられるはずがなかった。  だから、私はどうにかして妹に人間に堕ちてもらいたかった。  私は寝室で寝ている妹の身体を揺さぶった。 「なに……お姉ちゃん」  妹が目を覚ました気配を感じると、私は妹の服の中に手を潜り込ませた。  手探りで胸の柔らかな膨らみに指を這わせ、強く握る。  妹は小さく声を

        • 姉を探して(2021/12/20.お題:裏)

           私は「裏返しになった女の子」を回収する仕事をしている。  5年前、私の姉が買い物に行ってそのまま帰って来なかった。  今、姉がどこでどうなっているのか、私はそれが知りたくて、その手がかりを得る為にこの仕事に就いた。  道端に打ち捨てられたように転がっている裏返しになった女の子達を、袋に詰めてトラックの荷台に積んでいく。  お腹の部分が破けている女の子がいた。裂け目からは、服らしき物がはみ出していた。  私はその服に見覚えがあるような気がした。  嫌な予感がして、気のせいだと

        落ちる実験(2022/5/7.お題:塔)

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        記事

          「Black Journey」シブヤ Fling Posse、旅の途中の現在地

          何故私が観音坂独歩の誕生日なのに、シブヤの曲についてのnoteをアップしているのか? その答えはただ一つ…… 今日がぁ、ヒプマイ結果発表SPで決勝へ進むチームが発表される日でもあるからだぁぁぁ!!! ま、嘘ですけどね。(独歩、誕生日おめでとう!!) まずはこちらの曲を聴いていただきたい。ヒプノシスマイク2ndラップバトルのシブヤVSヨコハマのバトルでシブヤ・ディビジョン〈Fling Posse〉の新曲として発表された「Black Journey」という曲だ。 初めて

          「Black Journey」シブヤ Fling Posse、旅の途中の現在地

          私には生きる才能が無い。

           生きる為の才能とは何だろうか?  これは、私がTwitterで「生きる才能が無い。」と、呟いた瞬間に生まれた疑問である。  とにかく私には生きる才能が無い。それなのに無理やり生かされている感じがある。私の意志や価値なんて関係ないのだ。  もしも、私を無理やり生かしている何かが私を見放した時が来たら、私は「ようやく死ねるんだ」と安心するだろう。でも、それだけ。  きっと死のうとかしないし、死にたいとか考えない。生きたくも死にたくもない。  生きる才能って自分の生死について望む

          私には生きる才能が無い。

          天気の子について

          『天気の子』について、できるだけネタバレ無しで感想を書こうと思う。 私はこの映画を、帆高と陽菜が自分で選択し、2人にとってのささやかな光を見つけるまでを描いた物語だと感じた。 パンフレットにも「運命に翻弄される少年と少女が自らの生き方を選択するストーリー」と書かれている。 世の中にはままならない事柄があまりにも多すぎるし、自分達がこの先のどうなるかも全くわからない。自分が選んだ事が物事を更に悪くする事もある。それでも2人は自分で選んでいく。 そして、選択を重ねていった先に、帆

          天気の子について