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忘れられない、人のこと。

わたしは、大切な人を、
大切にしなかったことがある。

「後悔しないように精一杯生きよう
今に集中しよう
何でもあたりまえじゃない
思いやりをもって
感謝の気持ちを忘れないようにしよう」

どこかで聞いたことがあったり、本に書いてあったりすることば。
もちろんわたしも聞いたことがあったし、大事にしてきたつもりだった。

「後悔しないように
今に集中してる。
あたりまえじゃないよね
感謝してるよ」

そんな風に感じてた。感謝できてる!って思っていた。

けど、全然できていなかった。
未熟で子どもなわたし。

わかってる。そんなこと。

甘すぎる、子どもすぎる、苦労も知らない
見た目だけ着かざって、
大人になったふりをして、
恥ずかしくて、人の優しさに気づかないふりをして
強がっていた
わたしの恥ずかしい姿。

そんな自分を認めたくなくて。
認められなくて。




失恋をした。

長い間付き合っていた人と別れた。

別れを伝えたのはわたし。
原因は、物理的な距離の問題。
けど結局はわたしのわがまま。
それをいかにも、
もうわたしたち終わりだよね
風に、彼に伝えて
あっけなく終わり。

彼は優しいから、
「そういうなら仕方ないね」と。
悲しい顔をしながら。
 

わたしは彼に何と言って欲しかったのだろうか



距離の問題だって、我慢できたはず。
会えなくたって大丈夫
2人で工夫だってたくさんできたはず。

わたしは
彼がしてくれていること
彼の気持ちを全く考えず、

今の楽しいことや今の幸せに集中せず、
先のことばかり考えて
不安ばかりを募らせて
彼を困らせていたことにも気がつかず
彼と向かい合うことから逃げて

彼の優しさに甘えて、
彼との付き合いに手を抜いた。



彼が、いつも連絡をくれていたこと
彼が、気遣ってくれていたこと
彼が、大切にしてくれていたこと
彼が、愛情を表現してくれていたこと
彼が、わたしを認めてくれていたこと

彼は、いつでもわたしの話を聞いてくれた
彼は、わたしを絶対に否定しなかった
彼は、努力をしてくれていた
彼は、いつも優しかった

荷物を持ってくれたり
体調を気にしてくれたり
わたしが嫌がることはしなかったり
わたしのために我慢をしてくれたり
車を運転してくれたり
空調を気にしてくれたり
思いを伝えてくれたり
誕生日を祝ってくれたり
お風呂を沸かしてくれたり
褒めてくれたり
ソファーの席を譲ってくれたり
わたしが観たい映画をかりてくれていたり
お土産をくれたり
お店をいつも予約してくれたり
気になることはすぐに調べてくれたり
言い合いした日も駅まで送ってくれたり
手を繋いでくれたり
甘えてきてくれたり
車道側を歩いてくれたり
いつも待っててくれたり
迎えにきてくれたり
ご飯を作ってくれたり
食器を洗ってくれたり
飲み物を入れてくれたり
道に迷った時は駆けつけてくれたり
買い物に付き合ってくれたり
行きたいところに連れて行ってくれたり
サプライズをしてくれたり
休みの日は予定よりわたしを優先してくれたり
次の日の朝が早いと伝えたら、
「じゃあ今日は早めに帰ろう」と言ってくれたり
そして次の日の朝には、
「起きた?」って連絡をくれたり
全部が好きと言ってくれたり

まだまだあるけれど、
そんな毎日の優しさに気付かない
いや、気付かないふりをして
努力を怠って、彼に甘えた。

もちろんわたしにも彼にも悪いところはある。
だけど彼とぶつかり合って、正面から向き合うことを
しなかった。

感謝はしているつもりだったし
あたりまえだとも思っていない。
「はず」だった。
もちろんありがとうは伝えていたから。

でもそういうことじゃないんだよね。
今ならわかる。
わたしの「ありがとう」じゃなかったんだ。

彼を失ってはじめて、
大切なものに気がついた。

そして、
いかにわたしが自分勝手で
感謝を伝えられていなかったか
彼を幸せにする覚悟がなかったか
気がついた。

彼と会った最後の日
これで彼に会えるのも最後かと思うと
寂しくて悲しくて涙が出た。
わたしに涙を流す権利なんてないのに。

日々の不満や、これからの不安なんかより
好きの気持ちが大きかったことに
本当に大好きだったことに
やっと。やっと、気がついた。

大切なものを
わたしは、わたしの手で
わたしのちょっとしたわがままで
彼を傷つけながら壊してしまった。


最後の最後にしか
気づけなかったわたし。
遅すぎるのはわかってるけれど、
彼に今までの感謝を伝えようとした。

優しくしてくれてありがとう
気遣ってくれてありがとう
好きって言ってくれてありがとう
自信をもたせてくれてありがとう
強く優しく抱きしめてくれてありがとう
幸せにしてくれてありがとう

そして
一緒に時間を過ごしてくれてありがとう
付き合ってくれてありがとう
出会えて本当によかった

伝えたい想いは
次から次へと
たくさん、たくさん溢れてきた。
ただ、それがことばになったのは
ほんの一部だった。

伝えられたのはありきたりなことば。
ありがとうだけじゃ足りないのに。

こんなに伝えたい想いは溢れてるのに
ことばにならなかった。
けど、涙は溢れて止まらなかった。

そんなぐちゃぐちゃでかっこ悪いわたしを見て、
彼は「うん、うん」と
優しく頷きながら、聞いてくれていた。
いつものように。


最後の日は、近くまで送ってくれて
さよならをした。




わたしは心から後悔している

彼を傷つけてしまったことに。

彼がしてくれていたことに気付けなかったことに。
気付かないふりをして彼に甘えてしまったことに。
そして、感謝を伝えきれなかったことに。

それは、別れたことよりも、後悔している。

だからわたしは強く思う。

ありがとうを心を込めて伝えよう。
気がついた時、すぐにでも。
してくれて嬉しいことを伝えよう。
好き、大好きの気持ちを素直に伝えよう。

最後にまとめてなんて、
同じことは二度としない。
毎日、毎日、少しずつでもいい。
綺麗なことばになっていなくてもいい。

ありがとうの気持ちを伝えたい。
伝えなければいけない。

いつ会えなくなるかなんて
誰にもわからないし、
明日がどうなるかなんて、わからない。
先のことなんて、誰にもわからない。

だからこそ、「今、この時」に集中して
今のわたしにできることを精一杯する

楽しい時は、精一杯楽しむ
幸せな時は、精一杯幸せを感じる
嬉しいときは、精一杯喜ぶ
がんばるときは、精一杯がんばる

伝えたいことは、精一杯伝える
恥ずかしくても、難しくても
絶対に伝えなければならない。

大切なのは、「今、この時」だ

出会えたことはあたりまえじゃない

もう、絶対に手を抜かない

**幸せになる、幸せにする、覚悟をもつ **


彼のおかげでこう思えるようになった。

別れたのはずっと前のことだけれど
わたしの心にはずっとずっと残ってる。
わたしにとって、いつまでも大切な人。

最後にさよならをして送ってくれた日は
夜遅かったけれど、
彼はあれから無事に帰れたのだろうか。
今は元気にしているのかな。
彼のことだから、新しい素敵な人はいるだろう
優しい彼ならあの時のように
大切に大切にしているんだろうな。


あれからずいぶんと時間がたって
未練があるわけではないけれど、

いまだに、ふと、思い出す。


彼と過ごした時間のおかげで

「後悔しないように精一杯生きよう
今に集中しよう
何でもあたりまえじゃない
思いやりをもって
感謝の気持ちを忘れないようにしよう」

こんなことばたちが
わたしの想いと重なって
やっとやっと

やっと「わたしのことば」となった気がした。
すべて、彼のおかげで。


本当に本当に、ありがとう。
そして、ごめんね。
ありがとう。ありがとう。

あれからわたしは本当に反省した。
自分を磨こう、ことばを大切にして、
人を大切にできる人になろうと
心に誓った。
まだまだ未熟だけど、
彼はわたしを成長させてくれた。

わたしにとって
必要で、大切で、素敵な経験。
忘れてはいけない。



恥ずかしくて目を背けたくなるけれど、向き合っていかないといけないと思って、文章にした。

ずっと心に残っている。


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