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実家の猫の思い出。

ちょうど3年前に、大好きだった実家の猫が天国へ旅立った。14歳になる直前、13歳と11ヶ月だった。

上の猫のイラストは、その子がベロをしまい忘れたのが可愛くて描いたもの。


ネコさんとの出会いはペットショップだった。
祖母の家近くに、私が小さな頃から何十年も経営している小さなペットショップがあり、そこに何気なく立ち寄った。

数種類の猫がいる中で、生まれて数ヶ月のロシアンブルーの女の子に目が止まった。
私は10代の頃からロシアンブルーという品種の猫に憧れがあり、絵に描いたりもしていた(上の絵とは別)。

この子を迎えたい…母はどうだろうか?と隣にいる母に尋ねてみたところ、やはり生き物の事は簡単に決められないものの、あまりの可愛さにだいぶ心を揺さぶられているようだった。


ここで押せばいける!と思った私は母に
「私の貯金でこの子をお迎えする!!」と言った。

母はそこまで言うならと承諾してくれ、晴れてロシアンブルーのネコさんは家族の一員となった。

わんぱくで、鳴き声の愛らしいネコさん。
早く懐いて欲しくて、家にいる時は一定の距離を測りつつもずっと側にいた。
数日すると、膝の上で寝てくれるようになった。
ものすごく嬉しかったのを覚えている。

おもちゃを投げれば犬のように持ってきてくれたり、ソファで横になってうとうとすれば胸の上で一緒に寝てくれた。
撮った写真は数えきれないほどだ。


ネコさんのいる生活が当たり前になって5年の月日が過ぎようとしていたある日、私は結婚を前提とした同棲をするため、実家を出て遠くの土地で暮らすことになった。

連れて行きたい気持ちはあったものの、これからどういう生活になるのかまだ検討がついておらず、穏やかに暮らしてもらうためにもネコさんにはそのまま実家にいてもらう事にした。

家を出る直前、日当たりのいい場所で丸くなっていたネコさんに挨拶をした。
「そのうち、ちゃんとまた帰ってくるからね。忘れないでよ?」

きょとん、とした顔をしていたと思う。


新しい土地で暮らし始めて3ヶ月くらい経った時、母とメールのやり取りをしている時にこんなことを言われた。
『ネコさんね、つくねが家を出てからやっぱりちょっと元気ないよ』
『ベッドの下でじっとしていたりして、声をかけても出てこない時もある』

その文章を見た瞬間、涙がボロボロと出てきて止まらなくなってしまった。
「ネコさんは母や父のこともちゃんと好きだし、別に問題ないだろう」と思っていたからだ。
まさか、私がいない事で元気を失くすなんて思ってもみなかった。

メールを見ながら、ごめんねごめんねと何度も言い続けて号泣していた所に、同棲していた彼氏(現在の夫)が帰ってきてしまい「えっなになに!?」とビックリさせてしまった。

それからは、母と通話した時などに「ネコさーん」と電話越しに呼びかけてみたりして。
母が『あ、キョロキョロしてる。探してるね』と言うのを聞いて愛おしくなったりした。

そして年に2回帰省をする度に、名前を呼んで撫でようとするのだけれど最初はいつも“ふーん”と言った感じで、スルー。
しばらくすると段々思い出してくるのか、抱っこをせがんで鳴きに来る。というのがよくある事になっていた。
父からご飯を頻繁にもらうのか、帰省する度にふくふくと肥えていっていた。

しばらく滞在して、家へ戻る日になると「じゃあね。また来るよー」と挨拶をして帰る。

そんな感じで毎年を過ごしていた。


3年前の4月、母から連絡が来た。
『今、ネコさん激やせしてる』
なにがあったのか尋ねると、急に食欲がなくなってご飯を食べなくなったので病院に連れていったところ“糖尿病”と診断されたと言うことだった。

ふくふくとし過ぎていたのでいつも「あまりご飯をあげ過ぎないでね」と親に話していたのだけれど、恐れていたことが起きてしまった…と思った。

ただ猫の13歳は人間で言うと70近い歳であり、決して若い訳ではない。
仕方がない部分もなくはない…と自分を落ち着かせて、今後どうするのかを母に聞くと
『痛い事や辛い事はしたくないから、無理な治療はせずにできるだけ一緒にいようと思ってる』
という返事がかえってきた。


ペットの病気の治療というのは莫大な費用がかかり、ペットの体にも大変な負担をかける事になる。
動物自身にどうしたいのか聞くことはできないから、最後は飼い主の判断に委ねられる。

色々なことが頭の中を駆け巡りぐちゃぐちゃになってしまい、最終的に「そっか…」と言うことしかできなかった。


その連絡の後、ゴールデンウィークに夫とふたりで帰省することが決まった。

心の中では「もしかしたら、ネコさんに会うのはこれが最後になるかも知れない…」と覚悟して、実家へ向かった。


ネコさんは痩せていたけれど、ガリガリと言うほどでもなく、思ったよりも元気にしていた。
でも抱き上げると、やっぱり驚くほど軽い。
「スリムになったねぇ」と言いながら、たくさん撫でた。猫好きの夫もたくさん撫でてくれた。
そして、できる限りそばにいた。

相変わらず膝の上で丸くなってくれるネコさんの体温が、ものすごく温かく感じた。


この帰省から1ヶ月後の6月4日に、
ネコさんは旅立った。

その日は偶然父の仕事が休みで、ネコさんの最期は父が看取ってくれたらしい。
私達に会ってちょうど1ヶ月後というタイミングも、父が家にいる日というタイミングも、なんだか計算していたかのようだった。


ある日の夜、ネコさんが夢に出てきた。

ネコさんの夢をみること自体がほとんどなかったので、目が覚めてすぐにカレンダーを確認すると、ちょうど1ヶ月後の7月4日だった。
すぐ母に「ちょうど1ヶ月だね。挨拶しに来てくれたよ」と連絡をした。

夢の中のネコさんは、穏やかに毛繕いをしていた。


そして今日、ふと思い出してこのnoteを書いてみた。
前からこの内容を書こうと決めていた訳ではなく、そういえば…と思い出したのだ。不思議。


なんとなく、この時期になるとこれからも必ず思い出すような気がする。
ネコさんに「忘れないでよ?」と言われているのかも知れない。



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