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ホッケと鯖の干物のオーブングリル サルディーニャの樽の効いた島ワイン

魚を食べたいときに冷凍庫から取り出し下処理なしでオーブンで焼くだけ、干物は重宝する。この日はホッケと鯖。

右側がホッケ、左側が鯖

他にもアジ、イワシ、サンマ、シシャモあたりの定番の干物も好んで食べるし、キンメダイ、カマス、カレイ、のどぐろ、キンキ、ニシンなども売られている。干物だけで居酒屋メニューが完成しそうだ(実際に干物居酒屋はたくさんあるようだ)。干物に様々なグラスワインを合わせる店があればなぁ。
以前に合わせた沼津のアジの干物にレバノンのオレンジワインの相性も良かった。

今回合わせたワインはイタリアからはアルプス山脈そびえる北西部トレンティーノ・アルト・アディジェ州と中部アドリア海沿いアブルッツオ州のスパークリングワイン、カンパーニャ州のフィアーノ品種、ヴェネト州のソアーヴェ(ガルガーネガ品種)、お魚と相性の良いヴェルメンティーノ品種はフランスのプロヴァンスのものと、イタリアのサルディーニャ島のものを2種(フレッシュなものと樽香の効いたもの)。最近、週に3、4回はヴェルメンティーノ品種を口にしている。
結論を言うと、ヴェネト州のソアーヴェとサルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種(樽香の効いたもの)が非常に良い相性をみせてくれた。

ピエロパン, ソアーヴェ クラッシコ ラ・ロッカ, ヴェネト, イタリア, 2020, 12%, 3,773円
Pieropan, Soave Classico DOC La Rocca

ラ・ロッカは海抜200~300mに位置する南西向きの畑。石灰質と粘土が豊富な土壌。短期間マセラシオンの後、ガラスで内張りしたセメントタンク(2500L)を用いて発酵。2,000Lと500Lの樽に移し替えて澱とともに約12ヶ月間熟成。さらに数ヶ月の瓶内熟成。
ゴールドがかったはっきりとした強い色調。
香りにはりんご飴、リンゴのリキュールなどの濃密なリンゴの香りに、バニラ香は炙ったバニラビーンズを鼻の前に置いたよう、複雑なヘーゼルナッツ、明瞭にアカシア、フラワリーな蜂蜜、微かにヨード香や海藻や炙りわかめのニュアンス。
風味は厚みのある凝縮感の強いリッチでまったりとした果実味は陽のニュアンス、塩味やヨードのニュアンスはワインを心地よく引き締めワインを支える陰のニュアンス。陰と陽の両面をバランスよく備える。余韻にも豊かにバニラ香が広がる。
ホッケの干物に合わせる。ホクホクの身は淡白ながら存在感のある旨味と脂を伴う。これらと干物の少し熟成したニュアンスに、ワインの厚みのある果実味と樽香がみごとに重なる。相性: ★★★★☆
鯖の干物に。干物の熟成感、グリルによる軽い焦げ目、そしてリッチな鯖の脂に、ワインの厚みのある果実味、樽香、塩味やミネラルのニュアンスが絶妙に調和。相性: ★★★★☆

ピエロ・マンチーニ, プリモ, ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ 2021, 2,049円
Piero Mancini, Primo, Vermentino di Gallura, DOCG, Italy, 2021, 14%

サルディーニャ島で唯一のDOCG格付けのヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ。
香りにはリンゴのリキュール、林檎酒、ピンクグレープフルーツ、グァバにグレープフルーツの果皮、レモングラスなどのハーバルな香り、ほんのりと樽香、白胡椒のスパイスのタッチ、海岸を歩いているような潮の香り。
風味は豊満でジューシーな完熟した果実味、塩味がワインにメリハリを与える、清々しい酸味も、余韻にはまったりとヨーグルトや乳酸飲料のようなタッチ、鼻腔を樽香が力強く抜ける、ほろ苦さを伴う充実したリッチな余韻。
ホッケの干物に。ホッケの旨味とグリルされた軽い焦げ目に、ワインの磯の香りとやや明瞭な樽香が絶妙に調和。相性: ★★★★☆
鯖の干物に。ワインの果実、磯、樽などによる力強い風味は、少々癖のある鯖の脂も絡めとる。かなり癖のある血合いの部分とも目立ったケンカはしない。生臭みが立ち上がる心配なく安定感抜群。相性: ★★★★☆

上記の2つのワインに続くハイレベルな相性を見せてくれたのが、サルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種。こちらは上記のヴェルメンティーノ品種のワインと異なり、樽香のないさっぱりとしたスタイル。

ジュゼッペ・ガッバス, マンザニーレ, 2019, ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャ , イタリア, 2,464円
GIUSEPPE GABBAS, Manzanile

「マンザニーレ」とは「早朝」という意味の言葉、現地ではかつて朝の飲酒習慣があったようだ。元々は自家消費用として造っていたワインをお客のリクエストにより商品化。生産量は僅か5,000本。
香りにはグレープフルーツ、ライムの青いニュアンスも微かに、果実香はやや控えめ、グラスを回すと潮の香りがふわりと広がる。
風味にはみずみずしい口あたり、中庸ながらしっかりとワインを引き締める酸味でワインには緩さはない、グリップとほのかな渋みとビターネス、余韻にヨードが明瞭で岩塩を舐めた後のよう。
ホッケの干物に。ライムのようなフレッシュでハリのある果実香が、ホッケに絞った柑橘のように作用。またワインの潮の香りもホッケに絶妙に調和。相性: ★★★★☆
鯖の干物に。ピエロ・マンチーニの同じくサルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種の力強さによる安定感には負けるが、その分、鯖の風味をしっかりと活かしながらワインの柑橘が調和。相性: ★★★★☆

続いて、イタリアのスパークリングワイン2種、フランス プロヴァンスのヴェルメンティーノ品種、イタリア カンパーニャ州のフィアーノ品種に。

ロータリ, ブリュット プラチナ, トレントDOC, 2016, , 12.5%, 1,746円
Rotari Brut Platinum

アルプス山脈がそびえるイタリア北部トレンティーノ地方に位置。
自社ブドウ100%にこだわる。ステンレスタンク発酵。シャルドネ 80%、ピノ・ノワール 20%。
はっきりとした色調は7年熟成を思わせる、非常に細やかな泡が緩やかに持続的に立ち上がる。
香りにはリンゴのコンポートの厚みのある果実香、海藻のヨード香、微かに干しわら、やや複雑なヘーゼルナッツ。
風味にはみずみずしくピュアな果実味に、心地よいシャープな酸味、中盤からヨードのニュアンスに富みややビターな余韻に、鼻腔にはブリオッシュが抜ける充実の質感。
ホッケの干物に。淡白ながら干されて凝縮されたホッケの旨味に、ワインの泡と酸味の刺激が心地よく重なる。相性: ★★★☆☆
鯖の干物に。鯖の少々癖のある脂にもケンカせず、優等生的な包容力を示す。相性: ★★★☆☆

ファルネーゼ, ファンティーニ・スプマンテ キュヴェ, イタリア, アブルッツオ, 12%, 2,112円
Farnese, Fantini Cuvee

ココッチオーラというなんともかわいらしい名前のブドウで造られる。プーリア州が原産とされる地場品種だ。白ワイン向けにブレンド補助品種として用いられることが多いが、スパークリングワインには単体で用いられることも。
香りには青リンゴ、メロンにパッションフルーツ、パイナップルのニュアンスも、果実香は力強い、白い花のフラワリーなフレーバー、開放的な果実香を軽く引き締めるハーバルなタッチ。
風味には柔らかい甘みを伴うジューシーな果実味、酸味は中庸、ほろ苦さやミネラルのニュアンスに富む。カジュアルでチャーミングなスタイルながらバランスに優れる一本。
ホッケの干物に。ワインのやや強めの果実味が反発しないか心配したが、ワインのミネラルのニュアンスがしっかりと出てきてホッケに調和。相性: ★★★☆☆
鯖の干物に。干されて凝縮されたサバの旨味と個性的でリッチな脂に、ワインの厚みのある風味がバランス。同じ三ツ星ながら、トレンティーノ・アルト・アディジェ州のロターリの優等生的な調和よりも、こちらに軍配。相性: ★★★☆☆

シャトー ド ロムラード キュヴェ マリー クリスティーヌ プロヴァンス 2021, 1,631円
Château de l’Aumerade, Marie Christine, Cotes de Provence, 2021, 13.5%

シャトーの創設は15世紀に遡る、可愛らしいボトルで、コストパフォーマンスも素晴らしい。
グレープフルーツの甲高い香り、微かに海藻やヨードのニュアンス、軽やかにハーブの爽やかなニュアンス、
果実味の凝縮感はかなり控えめでみずみずしい、やや明瞭に塩味、中後半にかけてやんわりとほろ苦さが引く、果実味が控えめなので料理とぶつかりにくく幅広く合わせやすい。
ホッケの干物に。軽快な果実味と心地よい塩味を備えたフードフレンドリーなワインはホッケの淡白な身質にも期待通り寄り添う。相性: ★★★☆☆
鯖の干物に。鯖の風味には圧されてワインが負けるが、ケンカせず、またワインの余韻の塩味が心地よく鯖に重なる。相性: ★★★☆☆

マストロベラルディーノ, ラディーチ, フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ, カンパーニャ, イタリア, 2021, 2,732円
Mastroberardino, Fiano di Avellino, Radici, Campagna, Italy

イタリア南部ティレニア海沿いのカンパーニャ州で造られる。標高520-620mの単一畑で栽培される地場のフィアーノ品種。ラディーチとは「根」の意。
香りには青リンゴ、ライチの爽やかでほのかに甘い香りに、潮の香り、白胡椒のスパイス、樹脂のような香りやヨードのニュアンス、フラワーな香りも強く、セルフィーユなどのハーバルな印象も。
風味はみずみずしく果実味は程よくコントロールされている、果実味がややおとなしめな分、明瞭に感じる酸味、やや明瞭な塩味、余韻にはほのかにフェノリックなタッチとほろ苦さを残す。
ホッケの干物に。ワインのフラワリーな香りが反発してか、ホッケの脂が生臭く立ち上がってしまう。相性: ★☆☆☆☆
鯖の干物に。ホッケよりも脂に癖のある鯖とのケンカが予想されたが杞憂。塩味やほろ苦さが鯖の旨味にふんわりと調和。相性: ★★★☆☆

風味の強い魚の干物、鯖の個性的な脂にも、サルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種が安定感抜群の相性を見せてくれた。これだからヴェルメンティーノをやめられない。

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