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中学聖日記に裏切られて涙が止まらない

一時間テレビの前から一歩も動けなかった。CM中さえ放心状態で心ぎゅうってなってた。「教師と生徒が恋に落ちる禁断のラブストーリー」だったはずが、まさか「自分らしく生き直すためのヒューマンドラマ」だったなんて、全然聞いてない。心の準備できてない。


第4話で聖ちゃん(先生)が、黒岩くん(生徒)に言ったこの言葉。

「なりたい自分があって、その前の、前に、今いると思ったら、行きたい学校、見えてこない?」

聖ちゃんがなりたかったのは、いつだって「いい聖」だった。

いい娘、いい婚約者、いい先生、いい私。
だからずっと、建前に本音を隠して生きてきた。誰にも(黒岩くんにも)気持ちを話すことなく、、、いや本当は聖ちゃん自身が、自分の本心を分かっていなかったんだと思う。

けれど黒岩くんは、そんな「いい聖」を初めから全力で否定してくる。

8割型ストーカー、いつだって強引すぎるほど聖ちゃんラブな黒岩くんなのに、聖ちゃんが『世間の言う正しい方』へと進もうとする時だけ「面倒くさい」「だるい」「がっかりした」って突き放す。



このドラマの見所は、聖ちゃんを取り巻く黒岩くん以外の登場人物がみんな正しいところだ。

エリート街道まっしぐらの翔太郎さん(元婚約者)も、体裁整えて守ってくれる両親も、二度目はないよと許してくれる先輩や同僚も、みんな、正しい。
みんな正しいから、強い方へと引っ張られそうな聖ちゃんを全力で引き戻してくれる。それは紛れもなく、聖ちゃんが大事だから。

だけど、みんなが必要としてくれるのは小さな頃から必死に作り上げてきた「いい子の聖」なんだよね。(と、聖ちゃんは思ってる)

「大丈夫」と、いつも口を結んで笑う聖ちゃん。
大丈夫。わかってる。これでいい。間違ってない。これが正しい。



本音を言わないのはいい子だから、じゃない。甘えないのは優しさでも責任感でもない。「いい聖じゃない私」を受け入れてもらえる自信がなくて、ただ傷つきたくないだけだ。

だからどれだけ黒岩くんに好きだと伝えられても、私も好きなんて言えっこなかった。だって黒岩くんの前では、どうしたって「いい聖」でいられないんだから。


そんな聖ちゃんが9話になってようやく気持ちを伝えられたのは、黒岩くんがとことん聖ちゃんの本音を諦めなかったからだ、と思う。

「僕は先生のことよく知ってますよ。なんか分かる気がするんです。
昔担任だった時も、一生懸命先生ぶってるけど、本当は自信ないんだろうなって。」


黒岩くんは初めから分かっていた。聖ちゃんの「いい私」も、見え隠れする「本当の聖」も。その両方を、丸ごと好きになった。

だから一切、変わることを求めない。

聖ちゃんが教えたことを覚えてくれて、ありがとうって言ってくれる。
同じ夕日を見て綺麗だねと足を止め、降る雨に同じ短歌を思い出し美しいねって言ってくれる。

そんな風に自分が大切にしていることを、同じ熱量で大切に思ってくれる。心が嬉しいと感じることを、同じように嬉しいと感じてくれる。

どれだけ拒絶しても、どれだけ月日が経っても、「気持ちは変わらない」と全力で伝えてくれる。どんなにダメダメでも、「僕が守るから」とそのままを真っ直ぐに認めてくれる。

「心配かけたくないから」と教師辞めたことを言わなかったら、「そういうのくだらない」って、もう、こんなにも弱いところ抱きしめて一緒に生きようとしてくれたら堪らない。

聖ちゃんにとって黒岩くんは、そうしてくれる初めての人だったんだ、それってどれだけ嬉しかっただろう。そう思うだけで今もまた泣けてくる。


ずっと「いい子」でしか認められないと思ってきた聖ちゃんには、上へ上へと引っ張りあげてくれる翔太郎さんよりも、常識やモラルに沿った幸せを教えてくれる両親よりも、「本当のことなど言わなくていい」と処世術に加担してくれる先輩よりも、

「そのままの聖ちゃんがすき」「起きたこと全部大切だから無かったことにしない」って、まるごと全肯定して愛して守ってくれる黒岩くんが、ずっとずっと好きだったんだよね。


第5話で学校を去る時の聖ちゃんの手紙を、今でもそらで言えてしまう。

校舎に響く、生徒の声が好きでした。教えることが好きでした。
生徒のために頑張る先生方を尊敬していました。
なのに自分から全てを壊してしまって、本当に申し訳ありません。


本当はずっと壊してしまいたかったのだ、と思う。なりたかった「いい私」を、全部。


本心に従うことが誰かの言う幸せかはわからないけど、今までのいい私ぜんぶ壊して素直な気持ちを貫けた経験は、たとえ全てを(黒岩くんを)なくしても、かけがえのない自己肯定感に繋がるんじゃないか、と思う。

あるがままの自分が愛した人が、あるがままの自分を愛してくれたという確固たる事実は、自分を肯定して強く生きていくための自信になるし、いつかまた誰かを愛するときの信念になる。


「なりたい自分があって、その前の、前に、今いるって思ったら、行きたい学校、見えてこない?」


「嘘のない、そのままの自分でいたい。黒岩くんの、隣にいたい」と笑った10話の聖ちゃん。綺麗だよ美しいやっと素直になれたね羨ましい。

「何がどうなっても、自分の責任だって受け入れたい」、信念を持った聖ちゃん、つよい。

私はどんな自分になりたいかなあ。



物語の内容にばかり触れたけれど、映像の美しさが悲しい物語のコントラストになって切なさ相まっているので注意が必要。
特に揺れる描写が秀逸で、スカートの裾や後れ毛や風に舞うホコリや打つ波や差す光が、繊細な心の揺れをこれでもかと視覚で訴えてくる。

さらには主題歌(uru「プロローグ」)が素晴らしくて、クライマックスで流れる時にはもう心鷲掴みにされてる。見終わったら小一時間は「あなたを〜探してる〜」って絶対歌ってるからこれも注意が必要。

次週最終回、楽しみなようで終わってほしくなくて楽しみで楽しみで楽しみです。

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