森美術館での「建築の日本展」に行ってきました。
こんにちは、アーキテクチャーフォトの後藤です。
先日、会期が始まった森美術館での建築展「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」に行ってきたので、個人的な感想を書いておこうと思います。
建築の展覧会ということで、どれくらいの方が入場されているのかな?という興味もありましたが、会場内は本当に多くの方が来られていて大盛況でした。
実際に訪れて印象的だったのは、実寸大や大きなスケールで過去の名作と言われている建築を木製の模型として制作し展示していることでしょうか。
これらはかなりのインパクトもあり、その精巧さも加わって多くの観衆の注目を集めていました。
丹下健三の自邸を1/3スケールで再現したもの。
待庵を再現したもの。
北河原温による「ミラノ国際博覧会日本館」の立体木格子を再現したもの。
(これらの作品は写真撮影が可能になっています。)
様々な作品を見ていく中で、最も印象に残ったのは、石上純也さんの展示でした。皆さんご存知かと思いますが、こちらのレストラン&住宅に関する図面・模型・映像を展示していました(写真撮影不可でした)。
洞窟のような印象と、その施工方法でも注目を集めている作品です。
もちろん、その他の作品も素晴らしかったのですが、個人的なテーマとして「現代建築家が自身の作品をどのようにプレゼンテーションするのか?」という見かたで建築展を見ているところがあり、そのような視点でみていくと石上さんの展示が個人的にとても勉強になりました。
恐らく、この映像がポイントだったと思うのですが、
・ストーリー性の強い映像ではないつくりで、どこから鑑賞しても閲覧に入り込むことができる。
・現場の施工のプロセスを切り取ることで、その作り方を分かりやすく想像させる。
・建築の素材感が良く伝わるように撮影されている。
というような映像であったために、目の前にあるモルタルで制作した模型や図面が、模型でありながら、凄くリアリティのある物体として認識される感覚がありました。
例えば、これが図面と模型だけだった場合には、もう少しオブジェのような感覚を受けてしまって、「建築」として見ることができなかったのではないかと、、、。
このように考えると、映像を建築の構成や全体像を伝えるのではなく、雰囲気や素材感を伝える役割に徹しさせて、模型や図面の補助的な役割を与える、と言うのは、実に効果的な建築の展示方法なのでは、と思いました。
余談ですが、2000年以降、アートの世界でも映像作品が爆発的に増えたと思います。そのような状況の中で、ドクメンタ11という国際的なアート展をドイツで見たのですが、沢山の映像作品を見ていくと、映像作品の中にも、ふらふらっと歩いていてスッと入り込める作品と、そうでない作品があることが分かりました。
もちろん、それは作品の良し悪しには関係ないのですが、観客の足を止めさせる、少しでもその作品を見てもらう、という視点で考えると、考慮しても良い部分なのかなとも思いました。
それらの動画と言うのは、今回の石上さんの動画のような、「どこからでも見始めることができる」「ストーリーと言うより画面の作り方や構図で引き込まれてしまう」というような性質を持っていたような気がします。
ネットの世界が発展したことで建築を伝える手段として動画という選択肢も選べるようになってきました。しかし、効果的に動画を活用する定番的な手法はまだ確立されていないような気がします。
そんななかで、建築展という場において動画の活用の仕方の一つのアイデアを今回感じることができました(見せる場がウェブだとしたらまたその方法は変わるでしょう)。
今回は石上さんに注目して書きましたが、見る人によって多様な見方、学びがある展示であることは間違いないです。
是非、観覧することをお勧めします。
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