後悔したくないという思いから始めた早朝の打撃練習（飯塚高校OB　鳥羽識史インタビュー）

憧れを抱いて始めた野球

――野球を始めたきっかけについて教えてください
　小学4年生の頃にテレビで見ていた選手たちに憧れて、野球を始めたいと思って始めました。

――ご家族が野球をやっていたということはなかったのですか？
　していなかったですね。父は別のスポーツをやっていましたが、野球には全くかかわりがありませんでした。家族の影響などはなく、自分自身が憧れて野球を始めたという感じです。

――飯塚高校に入学を決めた理由を教えてください
　一番は甲子園を狙いやすい高校、行ける可能性がある高校というのを考えていました。その中で飯塚高校さんの方から特待生という形でお誘いをいただいたので、飯塚高校への進学を決めました。

プラスの方向に向かう声掛けを意識して

――高校時代に掲げていた目標について教えてください
　個人の目標としては、自分はキャプテンを任されたということで、難しいのですがプレーで引っ張っていって、皆と1つでも多く勝てるようにということを目標にしていました。チームとしては、甲子園に出て勝つことを目標にしていました。

――甲子園を目標としていた当時の思いなどを教えてください
　自分たちは皆口をそろえて「甲子園で勝つこと」ということを言っていました。チーム内での競争も凄かったですし、ミスした時や試合中の掛け声はプラスの方向に向かうようにということを意識して取り組んでいました。

――プラスの声掛けというお話がありましたが、例えばどういったものがありましたか？
　ミスした時とかも「ドンマイ、ドンマイ」で済ませることもできるのですが、ミスした時に「次のプレーもあるぞ」とか「次切り替えていけよ」といった適切な声をかけて、「ドンマイ」で済まさないということを意識していました。

――当時の練習で印象に残っているエピソードなどはありますか？
　飯塚高校は冬に合宿があり、朝早くから夜遅くまで1日中練習していました。その時は甲子園や春の大会もあると思っていたので、そこに向けて皆で協力して練習できたことはいい思い出です。

甲子園中止とこれからへの不安

――甲子園中止の第一報を知った時はどういった感情でしたか？
　やっぱり悔しかったです。薄々分かり始めていた部分はあったのですが、いざそれが現実になり、練習を中断して監督から伝えられたときは「マジか～」みたいなショックは大きかったです。

――そうした中でチームメイトと話したことなどはありましたか？
　これからどうするかという話が一番に出ましたね。甲子園がなくなってしまい、野球を続ける組と続けない組とに分かれて、どうするのかという話が一番多かったと思います。

――当時、監督からかけられた言葉などはありましたか？
　「力になれず申し訳ない」という一言があり、その言葉が印象に残っています。

独自大会に向けて話し合えたことがプラスに

――その後、各都道府県で独自大会開催の動きが進みましたが、大会の開催を聞いたときの心境を教えてください
　自分たちは参加することがすぐ決まりました。監督からどういった形で参加するかということを聞かれて、自分たちは「3年生だけで参加させてください」と監督にお願いしました。当時3年生が21人いたのですが、全員でベンチに入って、1,2年生にお願いしてサポートに入ってもらいました。3年生全員で試合ができたことは嬉しかったですね。

――独自大会の直前に監督の交代があったとのことですが、そういった中で独自大会を勝ち抜くためにチームで話し合ったことなどはありましたか？
　その時はもうやると決まっていたので、最後優勝して終われるようにということを考えていました。下級生にもメンバーに入っていた子がいたので、3年生たちだけで自由にやらせてくれということをお願いしました。
　監督が変わったということが大きく影響したということはなく、1週間くらいどうするか話し合いました。下級生に譲るという案も出ましたが、それでも野球をするのが独自大会で最後というメンバーもいたので、どういう方法が一番いいのかということを話し合いました。その期間に色々と話し合えたことはチームにとっても大きなプラスだったと思います。

ーー独自大会前には早朝の5時半から打撃練習をしていたとのことですが、そのことに関して何か思い出などはありますか？
　最後の大会だったのでどうしても後悔だけはしなくない、やれることは全部やろうと思っていました。朝は時間があるので、朝から練習をしていました。当時仲が良かったチームメイトたちと3人で練習して、3人とも今も野球を続けています。そんな仲が良いメンバーで「最後までやりきろうや！」という思いで集まっていました。
　新聞にも取り上げていただいたのですが、「新聞に取り上げられたい」とか「誰かのために」という思いではなく、単純に「後悔したくない」という理由でやっていました。今思えばいい思い出です。

――福岡中央大会での優勝が決まった瞬間はどういった心境でしたか？
　本当にめちゃくちゃ嬉しかったです。最後の試合は序盤で点差が開いたので、ベンチ入りメンバー全員が出られる状況になりました。自分も途中で交代して、皆を近くから見られる場所ということで、一塁のランナーコーチを務めました。全員が出られて、全員で勝つことができたといういい決勝戦になったので、とても良かったと思います。

もう一度あの代のメンバーと野球を

――この「あの夏を取り戻せ」というプロジェクトについて聞いたときはどう思いましたか？
　当時のチームメイトから「こういうプロジェクトがあるんだけど、出ようや」という連絡をもらって、キャプテンだった自分が皆に意見を聞いて参加することを決めました。
　個人的には、もう一回あの代のメンバーと野球をすることが夢だったので、そういった場を提供していただけることには感謝しかありません。

――このプロジェクトでの目標について教えてください
　全国で自分たちと同じ思いをした選手たちがいっぱいいて、その中で自分たちは県内4地区に分かれていたことでたまたま優勝できて、たまたま出させてもらえるので、感謝の気持ちだけは忘れずに参加したいと思います。

――最後に応援してくださってる方々へ意気込みをお願いします
　こうしていただけた機会なので、感謝の気持ちを忘れず、最高の思い出を作りたいと思います。
　頑張るぞ！

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