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エンブレムの域を超えた、東京五輪オリンピック・パラリンピック"組市松紋"

今回のオリパラは本当にゴタゴタが多すぎた。マイナスの出来事ばかりが連日報道され、多くの素晴らしい取り組みが霞んでしまいがちであった。
そんな中、エンブレムの再選定後、リオ五輪の衝撃の閉会式に始まり、オリンピック閉会式のドローンによる球体エンブレムの演出など、過去に例を見ないエンブレムデザインの活躍ぶりには目を見張った。

デザイナーは美術、建築など多分野で活躍する野老朝雄氏。幼少より建築を学び、ロンドンのAAスクールに留学経験を持つ。作品を通じて人や社会を「つなげること」をテーマに紋を繋げて、紋様パターンを描き続けている。
私が学生の時、野老先生が特別ゲストとして来てくださり、課題の講評をしてもらった。誰も真似できないことをしてる人、という印象だったので、彼のエンブレムのデザインが選ばれた時、ホッとした。

https://mobile.twitter.com/asaotokolo


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1.世界に誇る緻密な設計「日本らしさ」が炸裂

異なる45個の長方形のパーツの組み合わせでオリンピック、パラリンピックのエンブレムが構成されている。野老氏は、これをパソコンデータでなく、木材パーツで検証し完成させたと言う。緻密に規則正しく各パーツが組み合わさり、完成したカタチもまた美しい。藍色の紋様は粋な日本らしさを体現している。このエンブレムが世界に発信されることは日本人として誇らしい。

2.分解、3次元‥、デザイン展開の多様性

リオ五輪の閉会式では、エンブレムを構成する長方形のパーツが立体フレームとして使われ、様々なカタチ、動きを作り出した後にエンブレムに収束するという、実に巧妙でクリエイティブな演出に感動した。東京五輪では色んな事情があり変更を強いられた部分もあったようだが、ドローンによる球体の演出は結構びっくりした。このデザインを構成する要素は極めてシンプルであり、様々なデザインの可能性があることがわかった。かつてエンブレムがこれほどまでに分解されたり立体になることがあったか?という視点で今後のエンブレムにも影響を与えるだろう。

3.「つながり合うこと」今、最も重要なメッセージが込められている

異なる長方形の組み合わせは、国や文化の違いを超えてつながり合う「多様性と調和」のメッセージが込められている。加えて、オリンピックとパラリンピックのデザインは同じ数、形で構成され、角度を変えずパーツの位置をずらすだけでもう一つのデザインになる。
また奇しくもコロナに直面した全世界の人々にとって、つながり合うことの大切さをこのデザインからも教えてもらった。

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もはやエンブレムの域を超えて、今世界中が抱える様々な課題に立ち向かうための「心の拠り所」となる存在にこのデザインがなっているような気がする。

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