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まちと社会とつながる"谷中 TAYORI"

少し前の新建築に谷中のいくつかのプロジェクトが載っていたので、自転車で行ってみた。
谷中は休日のお昼時ということもあり、どのお店も賑わっていた。その中でも、路地裏でありながら結構な人が入店待ちをしていたのが、この「食の郵便屋さん TAYORI」。
自転車に乗る郵便屋さんのロゴマークが誘う建物脇の小径を入ると入り口がある。

このお店を手掛けているのは建築デザインからお店の運営まで行う、谷中を拠点に活動するHAGI STUDIOだ。
建築家が事業まで手を広げると上手くいかないことが多いが、HAGI STUDIOは代表の宮崎晃吉氏が元々学生時代に住んでいた木造アパート「萩荘」を改修し、「最小文化施設」としてギャラリー、カフェ、アトリエ等の複合施設を作り出した。その後谷中エリアにおいて、飲食、宿泊施設、店舗、教室事業などを面的に展開している。
そして谷中の飲食店や店舗もこの一連の開発の一端を担いながらうまく共存しているように見える。

谷中におけるHAGI STUDIOの取り組みはどんな点で人々の心を動かしているのだろうか。

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1.トレーサビリティが生む安心感

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TAYORIの店内では食事ができる他、惣菜・お弁当がテイクアウトできたり、加工品の販売も行っている。惣菜は子どもからお年寄りまで楽しめるよう優しい味になっている。
そして食材は何処で採れて、誰によって調理されたかが見える化されている。
年々食材は品質が良くなり、調理技術も上がってるためか、比較的多くの場所で美味しいものを食べられる。さらに健康、美容などテーマ性をもった食べ物にも巡り合うことができる。その先に人々が求めるものは、食材や食事が作られるストーリーや想いなのではないか。東京にいながら、自分の地元や地縁のある地域の食材が使われていたら何か嬉しい。活動の思想に共感する人や組織によって作られたものは、つい手に取りたくなる。そんな人々のニーズを心地よく満たしている気がする。

2.リノベーションが可能とする街の持続性

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TAYORIを始め、ベーカリー、八百屋さん、宿泊施設など谷中の古民家をリノベーションした形態で構成されている。建物の柱や梁はなるべく表しにして、欄間や建具など当時の暮らしぶりがわかる程度に残されている。それらに調和するように内装や家具は丁寧に選ばれている。建物はその地域の産業や文化を色濃く表すものであり、街並みを形成する重要な役割を果たす。元々在るものを残しながら新たな価値を吹き込んでいくことで、街や人の想いは継続されていく。もちろん新築には新築の価値が多分にあるが、谷中においてはどれもスーっと街に馴染む取り組みになっている。

3.食べる人と生産者をつなぐ仕組み

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ロゴマークや店舗前にもその面影が見える、このお店の象徴的な存在である「郵便屋さん」。ここではデザインアイコンに留まらず、実態として作る人と食べる人が便り、によってつながっている。入り口付近にある、食の郵便屋やさんコーナーでは、生産者からの手紙を読むことができる。そして食べた人が生産者に向けて想いを綴り、その手紙を投函することもできる。通信手段が発達著しい現代では、アナログでシンプルな手紙、という手段。ただ昔からあって、いつでも誰でも想いを伝えられる手紙は、この先も変わらずあり続けるのだろう。この取り組みを見て改めて感じた。

次回は谷中の他の施設も回りたい。そして面的に谷中に侵食してるHAGI STUDIOの取り組みをじっくり堪能したい。


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