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アートに潜む日常の気付き"六本木アートナイト2023"

先日、新国立美術館へルーヴル美術館展を見に行った。
展示室以外のパブリックスペースにもいくつかのアート作品があり、その中に見かけたアートがあった。
それは、美術館の湾曲したガラス面に掲げられた、大きなフクロウのような羽根を広げた生き物で、以前見たのは確か角川武蔵野ミュージアムだった。
調べると「六本木アートナイト2023」の一環の展示だそう。本イベントは、生活の中でアートを楽しむという新しい提案を、六本木を舞台に展開するアートの饗宴だ。アート以外にも音楽、映像、パフォーマンスなどが主要商業施設や街中で見られ、周辺はアート好きや家族連れ、観光客も入り混じりながら賑わっていた。

1.日常に投じる人と自然に纏わるメッセージ

武蔵野皮トンビ
アースベイビー

「武蔵野皮トンビ」も「アースベイビー」も鴻池朋子氏による作品。どちらもちょっとギョッとするシュールさを持ち合わせている。
「武蔵野トンビ」は大きなトンビの造形に動物の皮が使われている。これは、人間が先史時代より、動物を狩り、食べたり被服として纏ったり、人間が食用や道具など生きていくために動物を使ってきたことに振り返り、人間が自然に対する介入や暴力を思い出させることを意図してる。使われてる皮は商品化のプロセスで廃棄される部位を使っているが、商品化されるそれらも含め、日々雨風や光によって状態が変化していくことも改めて観る人々に伝えている。
自然界のものをなるべく使わない、という動きもあるが、自然界のものに介入するとはこういう覚悟が必要なんだと説得力を持って伝えてくれる作品だ。

2.自身に問う、記憶のグラデーション

100色の記憶

色彩のパレットが空間にぱあっと繰り広げられる、エマニュエル・ムホーの作品たち。私が大好きな建築家だ。
巣鴨信用金庫は余りに有名だが、あのカラフルなファサードが板橋区で観られるのが衝撃的だった。彼女はフランス人建築家で、「色で空間を仕切る」をコンセプトに色を3次元空間を仕切る道具として使い、アパレルとコラボした空間デザインなども話題を呼んでいる。
「100色の記憶」は、西暦が刻まれた100色の層で、奥に流れるにつれて年月が遡る「記憶」を視覚化している。
時の記憶は、その瞬間は真っ白な地に描かれた瑞々しいものかもしれない。時間が経つに連れて様々な色に変化していく。それは徐々に色濃くなっていくかもしれないし、その時の出来事や気持ちによって、人々が作り出す記憶のグラデーションはそれぞれだ。
自分の記憶だったらどんな色のグラデーションになるだろうか。

3.ふとした日常を意識する面白さ

DXもふもふ毛布ドリームハウス

作品を作るきっかけが面白い。作家の江頭誠氏は、一人暮らしの部屋に友人が来たとき、実家きら持ってきた毛布がダサいと言われ、意識せざるをを得ないものとなり、作品に利用するようになったという。
実家から持ってきたものが新生活の中で浮くが、どこか自分のアイデンティティや家族との繋がりを表す象徴となる、この件は多くの人が共感するのではないか。
実家の毛布は確かに薄ピンクの地にボルド色の縁取りや大振りな花柄が施されている。足の長い毛部分に描かれたそれらは、立体的に浮かび上がり、寒気から身体を守ってくれる。
ノスタルジックな記憶をドールハウス風のレイアウトにより表現されていて、その全てがもふもふした毛布の素材でできている。
ちょっとダサいんだよな、と思いながら母の気遣いを感じる実家からの品々。身体の奥から込み上げる感情、これがエモいなのか、実家が恋しくなる作品だ。



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