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詩(ここちのよい睡眠)
呼気
夏の夜に寝覚めしたときに
ふと窓の外に痕跡もうしなって
吹きだまっていた
明かりを消し
樹木のざわめきが耳の奥で軽くなり
あえかな感触をさがす
なにかが脈打っている気がする
幼いわたしは眠りの内を白ませ
見つからないように
溶け入りたいとおもう
「本質的なものはつねに失われる」
そう書き写していた人
命を言葉に変えてしまった人
おしだまっている人
言葉は
イメージ
あるいは
先触れ
詩(土地・写真・忘却)
水写真
三匹の干からびたイヌの死骸が鉄条網に吊り下げられている
私は
薄目を開いて、
光なのか、霧なのか、白い
「右部分はかすれているんだ」
そうして、背後から友人の声が聞こえた
「ポンペイの悲劇詩人の家に行ったとき、イヌを象った床絵を見た
そこにはかすれた文字で“CAVE CANEM”とあった」
中央には腕だけが欠けた人骨がある
三日前に要介護認定を受けた母親のものだ、と
思った
ここに生
詩を/と読む1(平出隆)
「(詩はつねに先触れである)」という断言めいたつぶやきを目にしてからというものの、こうして生きているうちにも見えないだけで、書いた詩や読んだ詩がなにかを暗示しているのではないかという気がしてきた。これはアガンベンというイタリア人の『哲学とはなにか』なる本にあった一節だが、そこで彼は哲学を後奏曲、詩を前奏曲になぞらえている。わたしは頭の固い人間なので、こうした区別を目にするとすぐ「代補」などとい
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