見出し画像

『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帖』は上質な貴種流離譚

本作品は昨年、アルファポリスのサイト(当時のタイトルは『調べ、かき鳴らせ』)で読みました。その時笹目さんのnoteに投稿したコメントは↓です。

『調べ、かき鳴らせ』をアルファポリスで拝読しました。とても面白かったです! お世辞抜きで、こんなに爽やかな読後感を味わうのも久々で、『その男』(池波正太郎)や『吉原御免状』(隆慶一郎)を読んだ時以来かも…。「満場一致の高評価」という選評にも「アルファポリス、見る目あるねえ!」と納得です。
著者推敲は大変な作業だと存じますが、私のような縦書き(書籍)で読みたい読者のためにも、お身体を労わりつつ頑張ってください。【2023.6.10】

今回改めて文庫本で読んだのですが、物語の展開がより複雑になり、剣戟シーンや三味線の演奏、細かな心理描写など、細部にわたって一層切れ味が増して読み応え十分でした! 加えて感想文を書かれた方々の文章がどれも素晴らしいことにも感嘆です。こうした真摯な読者がこぞって高評価を与えていることが、この作品の何よりの価値だと考えます。

そして今ごろ気づいたのですが、この作品は紛れもない貴種流離譚であるということ。貴種流離譚とは「高貴な血筋に生まれた人物が、本来の高い身分から遠ざけられた環境で、さまざまな試練を乗り越え成長していく物語」のことで、日本の物語文学の原型ともいわれます。
源氏物語やヤマトタケル物語などがその代表格ですが、西洋でも古くはギリシャ神話やアーサー王物語、ハムレットなどがその典型で、現代でもライオンキングや白雪姫などのディズニーアニメや、スターウォーズ、ハリー・ポッターなどが当てはまるでしょう。
『おやこ見習い帖』の底流に流れるこの〈ヒーローズ・ジャーニー〉が、作品をさらに魅力的にしている要因の一つであると考えます(ただ私は去年、隆慶一郎の『吉原御免状』を引き合いに出していたのに気づかなかった😅!)

最後に、少し前に「実写で見たい」とコメントしていた方がおられましたが、個人的には「アニメでも見たいな」と…。版元のアルファポリスさんはアニメで実績があり(春アニメでは『リ・モンスター』が良かったです)、ノウハウも十分お持ちなので、本作の実写化&アニメ化もぜひ!


この記事が参加している募集

#推薦図書

42,791件

#読書感想文

192,370件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?